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第2章ー24

 ルノー41戦車の威力は絶大だった。

 アラン・ダヴー大尉自身が、この戦車なら零式重戦車と互角以上に戦えると事前に評価してはいたが、実戦での威力は予想以上だった。

「これで、空を舞うのが生粋のフランス製軍用機なら言うことなしですな」

 フリアン曹長の言葉が、ダヴー大尉の耳に届く。

「祖先がこれを見たら、何というかな」

 ルイ・モニエール少尉も感慨深げだった。


 2月5日、仏第1機甲軍はハイルブロン近郊にて初めて空地一体の電撃戦を実地に行っていた。

 独第6軍も懸命に抗戦しているが、仏第1機甲軍の猛攻の前に、徐々に限界を超えた堤防が水圧の前に崩れ去るように崩れようとしているようだ。

 中央軍集団のように、それなりの対戦車兵器の更新を果たしていたのならいざ知らず、1年近く前の独仏戦本格化当時のままといってもよい装備で、仏第1機甲軍の攻撃に独第6軍は応戦しているのだ。


 独の37ミリ対戦車砲は今や仏軍のルノー41戦車の前に、完全に「ドアノッカー」と化していると言っても過言ではなかった。

 さすがに88ミリ高射砲は脅威だが、そんな装備がそうそう独軍の前線に大量にある訳が無い。

 そして、1年近く独軍の電撃戦にさらされ、その対策を行ってきた以上、この攻勢に参加する仏軍の将兵は戦車と歩兵、砲兵の連携を実地に学んでいる。 

 ド=ゴール将軍の指揮の下、仏第1機甲軍は見事な初陣を飾ろうとしていた。 


 とは言え、それでも色々と不満のある初陣ではあった。

 やはり初めての実戦である。

 戦車と歩兵、砲兵の連携が完全に上手く行ったとは言えなかったし、空を舞うのは。


「P-40にA-20、米国製の軍用機ばかりですな」

「安心しろ。日本製の軍用機を買うことにもなっている」

「どこに安心できる要素があるのです。仏製の軍用機は無いのですか」

「無い訳ではないのだが」

 フリアン曹長の半ば追及に、ダヴー大尉は苦笑いするしかなかった。


(既述したが、戦車等の製造に傾注する必要があったことや、その製造に協力する見返りとして日米両国政府からの軍用機の大量購入要請があったことから、第二次世界大戦時の仏航空産業は、軍用機に関しては試作で基本的に止めるしかなかったのである。

 製造基盤を最低限維持するために、練習機の量産や一部についての日米の軍用機(部品)のライセンス生産は行ったが、その程度に第二次世界大戦時の仏航空産業は終わった。)


「これだけの高性能戦車を量産した代償と思うしかありませんな。どちらにしても我々が愚痴っても仕方ない。それよりも前進していきましょう」

 モニエール少尉が、2人の会話に口を挟んだ。

 その言葉に大きく肯きながら、ダヴー大尉は指揮下の中隊に号令を下した。

「全員突撃せよ。独軍を蹂躙するぞ」

「応」

 指揮下の中隊員達は、多くが声を挙げて前進を開始した。


 2月8日、ハイルブロン方面の独軍の戦線は、仏軍によって完全に突破されたといってよい戦況となっていた。

 ド=ゴール将軍は、このような状況に鑑み、補給切れのリスクを大胆に侵すことにした。

 アンスバッハからニュルンベルクへと放胆極まりない前進を仏第1機甲軍は図ろうというのだ。

 その方針を知らされた仏第1機甲軍の将兵は奮い立った。


「最も大きな危険は勝利の中にあるだったかな」

 仏軍の将兵の興奮の渦の中で、モニエール少尉は、暗に危険であることを、かつての自家の家長が言った言葉を引いて危惧した。

「確かにその通りだが、今はダントンの名言通り、「大胆、また大胆、そして常に大胆」で行くべきだ」

 ダヴー大尉は言った。

「しかし、余りにも」

「だからこそ、独軍南方軍集団の虚を衝けるのは間違いない」

 ダヴー大尉とモニエール少尉はやり取りをした。

 ちなみに最後の方でモニエール少尉のいう家長というのは、言うまでもなくフランス皇帝ナポレオン1世陛下のことです。


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