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第2章ー22

 アラン・ダヴー大尉と似たような想いを馳せる者が、仏軍上層部にもいた。

「あの気に食わないチャーチル英宰相の先祖マールバラ公が執った作戦と似たような作戦を執るのは癇に障るが、この戦争に勝つためにはやむを得ない話だ。それにしても、オイゲンが我が仏軍の将帥として欧州制覇のために粉骨砕身していたら、歴史はどう動いていただろうか」

 この作戦の為に編制された仏第1機甲軍(この中にダヴー大尉が所属する仏第1外人部隊師団も所属している)の総司令官であるド=ゴール将軍は、自ら仏第1機甲軍の先頭に立って進軍しながら想いを巡らせた。


 もし、そうなっていたら、歴史は大幅に変わり、仏が18世紀に欧州の覇者になっていただろう。

 それこそナポレオン6世(ルイ=モニエール少尉のこと)やアンリ6世(現在のオルレアン派、連合派からすればフランス=ブルボン王家の家長に当たる人物)が、自らの指揮下の仏第1外人部隊師団の一員として本来からすれば祖国仏への入国自体を拒まれる身でありながらも、祖国仏のためにと外人部隊に志願してまで現在は戦っているのと比較すると、オイゲンの態度は何と嘆かわしいことか。

 父のために祖国のためにと戦うのが、オイゲンの生まれからすれば本来は当然ではないだろうか。

 ド=ゴール将軍は、そのように思わざるを得なかった。


 ちなみに何故にアーヘン等、どちらかと言えば北ドイツといえる地域にいた仏軍が南下しているのか。

 それは独軍が守勢に転じたことと仏軍が攻勢を決断したこととコインの裏表といえる関係から生じていた。


 第一次世界大戦の結果、仏軍の大勢がまず守勢、その上で攻勢という大方針を執るようになったとはいえ、軍人の半ば基本的本能として攻勢主義者は仏軍内部に少数とはいえ存在し続けた。

 更に第一次世界大戦で登場した戦車の威力に着目した軍人も少数ながらいた。

 ド=ゴールはそういった少数派の軍人の一人で、現在、仏首相を務めているペタン将軍のお気に入りとして出世した身でもあった。

 こういった背景から、ド=ゴールは若輩ながら将軍となっていた。

 そして、ルノー41戦車の装備等によって機甲化が進んだ仏軍の改革の象徴と言える仏第1機甲軍の司令官にまでド=ゴール将軍はなったのである。

 当然のことながら、それに相応しい初陣を仏第1機甲軍に飾らせようと仏陸軍上層部は考えた。


 1940年5月から始まった独軍の仏侵攻作戦は1940年末までにほぼ失敗に終わり、独軍は守勢に転じるようになっていた。

 更に英仏米日等の連合軍の航空優勢確保は、独軍の機動防御を困難にしつつあった。

 こうしたことから独軍は兵力をある程度は分散させての防御態勢を講じざるを得なかった。

 そして、地形の問題等もあり、独軍は中部、北部に精鋭を集めざるを得なかった。

 このために南部、独南方軍集団は(相対的にだが)質の面で劣った存在となっていた。

 このために、仏軍上層部は考えた。


 仏第1機甲軍が北ドイツに投入されるかのような欺瞞を行った後で、南ドイツへと転進させる。

 これによって我が仏は偉大なる勝利を収めることが出来るのではないか。

 幸いなことに仏の鉄道網はほぼ独空軍等の妨害無しに稼働している。

 当初は心配されていた共産主義者等の独ソ支持者の仏国内の破壊工作等も無いとは言わないが、具体的な脅威としては無視できる程度にまで低下している。

 この状況ならば、仏第1機甲軍の転進作戦は成功の可能性が高い。


 このような考えが為されたことから、北ドイツに仏軍の機甲部隊主力が投入されるかのような偽装が為された後に、南ドイツに急きょ転進するという作戦が採用されたのである。

 独南方軍集団はこの情報を知らなかった。

 荒唐無稽な火葬にも程がある、と感想欄で袋叩きにされそうなアンリ6世ですが、史実でも似たような行動を執っているという史実があります。

 事実は小説よりも奇なり、とは本当なのだな、と作者の私自身が痛感させられてしまいました。


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