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第2章ー14

 このように独軍の奇襲、猛攻を受けながらも、多くの日本海兵隊の部隊は果敢に応戦して容易に崩れることは無かったが、全てが対処しきれたわけではなかった。

 何しろ、物資不足に苦しみつつあったとはいえ、数は数である。

 この時、独軍は日本海兵隊6個師団に対して、装甲師団8個を主力として自動車化歩兵師団や歩兵師団等を併せるならば20個師団以上をぶつけて包囲しようと試みていた。

 しかも、その部隊を率いるのが、ホトとグデーリアンという多くの独装甲部隊の将兵から父や兄のように慕われている軍人である。

 このような攻撃を受けては、日本海兵隊の全ての部隊が耐え抜くのは困難だった。


「第6海兵師団が崩れつつあります。このままでは我々は包囲されるリスクがあります」

 独軍の猛攻が始まってから半日余りが経った頃、第6海兵師団からの電文を受け取った通信士官が、欧州総軍司令部に駆け込んできた。

「何。名前が悪かったか。やはり、仙台藩ゆかりの名前を付けるべきではなかった」

 どこまで本気でそう思って言ったのか。

 欧州総軍参謀長の石原莞爾中将が口に出していった。


 日本の鎮守府海兵隊、海兵師団には伝統的な愛称、異名があった。

 横須賀海兵隊、第1海兵師団は「伝習隊」。

 呉鎮守府海兵隊、第2海兵師団は「衝鋒隊」。

 佐世保鎮守府海兵隊、第3海兵師団は「新選組」。

 舞鶴鎮守府海兵隊、第4海兵師団は「遊撃隊」。

 上記のような愛称、異名があった。

 これは、幕末以来の様々な経緯から名付けられたものであり、それぞれが誇りを持って名乗っていた。


 だが、満州事変以降に関係が悪化する共産中国との戦争に備えて上海を警備するために、新たに編制された第5、第6海兵師団にはそのような愛称、異名が無かったことから、部内で検討した結果、第5海兵師団に「青龍隊」、第6海兵師団に「額兵隊」という愛称、異名が付けられたのだ。

 ちなみに両方の名前は共に「伝習隊」等と同様に戊辰戦争に由来するもので、「青龍隊」は会津藩の部隊から、「額兵隊」は仙台藩の部隊から名付けられたものだった。


 しかし、会津藩兵はともかくとして、仙台藩兵は戊辰戦争時に弱兵だと味方からもささやかれる有様だったことから、仙台藩の部隊名は縁起が悪いという声が海兵隊内外にあった。

 結果的にその話を裏打ちするような状況に第6海兵師団はなっている。

 言っても詮無き話であり、そもそも独軍の方が圧倒的な兵数で圧し潰そうとしている以上、第6海兵師団が崩れても仕方ない話なのだが、これまでの経緯から石原提督はそう言ってしまった。


「それ以上、味方を誹謗するようなことを言うな」

 石原提督の声が聞こえた欧州総軍総司令官である北白川宮成久王提督は、ぴしゃりと石原提督を叱った。

「現状からすれば、第6海兵師団が崩れたのは仕方がない」

 更にたしなめるかのように北白川宮提督は言った後で考えを巡らせた。

 取りあえずは海兵隊で円陣を組むかのような防衛陣地を応急にでも作るか。

 それで、独軍の猛攻を凌いだ後、米軍やポーランド軍が発動する救援作戦と呼応して、この危地から脱出を図るのが最善だろう。


「第6海兵師団の近くにいる第5海兵師団と第4海兵師団に命令。第6海兵師団を支援せよ。それから我々は円陣を組んで、独軍の猛攻を凌ぐ」

「危険です。それでは独軍が我々を包囲殲滅しようとしているのを手助けすることになりかねません」

 北白川宮提督の命令に、石原提督は反論した。

「大丈夫だ。アイゼンハワー将軍やレヴィンスキー将軍は必ず我々を助けてくれる」

 北白川宮提督はわざと笑みを浮かべながら言った。

「味方を信用するのだ。無理をしては損害を増すばかりだ」

 北白川宮提督は言葉をつないだ。

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