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第2章ー11

 1941年2月初め、英仏米日等の連合軍による独本土侵攻作戦は発動された。

 事前計画通り、英軍を中心とし、ベルギー、オランダ軍も参加する部隊が北ドイツへの進撃を試みた。

 そして、仏軍は南ドイツ、バイエルン地方への進撃を試みた。

 日米ポーランド軍を主力とする部隊は、中ドイツを進撃して、ベルリン等への路を切り開こうとした。

 そして、土方勇中尉は、第1海兵師団の一員として、日米ポーランド軍の最先鋒を務めており、自らが予想した通り、フルダ渓谷の突破を図ろうとしていた。


「何とも嫌な予感がするな」

 土方中尉は思わず呟いた。

 事前に義弟の岸総司大尉から半ば警告されてはいたが、実際に自分達の部隊が最先鋒となってフルダ渓谷の突破を図ろうとしてみると、直前に名誉の戦傷を負ったために内心では異常に警戒心が高まっているためもあるのか、背筋に冷たいモノが流れるのを土方中尉は感じてしまった。


 自分達の部隊が逆にこの地で防衛を固めるとしたら、どのような対処方法を講じるだろうか。

 自分達の保有する装備で対処するなら。

 旧式化した37ミリや47ミリと言った対戦車砲を囮として正面から射撃する。

 それを制圧しようと砲撃を浴びせながら戦車が前進してきたら、側面から57ミリ対戦車砲を浴びせて戦車を屠る。

 もし、57ミリ対戦車砲が無ければ、窪地等に歩兵を伏せさせて、その歩兵に70ミリ口径の携帯式対戦車噴進弾を使わせて戦車の側面攻撃を図るというのはどうだろうか。


 何だかんだ言っても、戦車を歩兵は頼りにしている。

 頼りの戦車を破壊されては、どうしても歩兵は動揺してしまう。

 そこに追い打ちを掛ければ、更なる戦果を挙げることが出来るだろう。


 これまでにそのような対戦車兵器を独軍が使ったという報告は自分の手元には届いていない。

 だが、日本軍が保有できる装備を独軍が保有できないと考える方がおかしい。

 独軍が持っているのではないか、ということを念頭に置くべきだ。

 岸大尉の警告もあり、土方中尉は用心しつつ、フルダ渓谷の突破を策すことにした。


 実際、土方中尉の予感は、多くの日本海兵隊士官が共有する予感でもあった。

 これまでの数々の実戦経験から、臆病と言われようとも(もっともこれまでの歴史の経緯からして、サムライ、日本海兵隊員を臆病者呼ばわりするだけの資格がある者は数少ない存在だった)、何と無しに嫌な予感を覚えながら、日本海兵隊はフルダ渓谷へと進んだ。


 その予感は口に出せないものではあったから、基本的に他の者が知ることはなかったが、アイゼンハワー将軍等がそのことを知ったら、やはりサムライに最先鋒を任せて正解だったと言っただろう。

 実際に独軍のブラウヒッチュ元帥は、できる限りの防御態勢をフルダ渓谷において講じていたのだ。

 もし、うかうかとフルダ渓谷に侵攻を策していたら、独軍によって史実以上の損害が生じていたのは間違いない話だった。


「予想通りにフルダ渓谷の突破を図ってきたか」

 ブラウヒッチュ元帥は、その第一報を聞いた時に来るべきものが来たという態度を示した。

 とは言え、それは当然の反応だった。


 独帝国の起源ともいえる普王国にとって屈辱の記憶がある。

 イエナ=アウエルシュタットにおいて仏陸軍に普陸軍は大敗を喫した。

 あの時にナポレオン1世率いる仏陸軍が執ったのとほぼ同じ行軍路を仏陸軍の一番弟子を自他共に認める日本海兵隊は執っているのだ。

 それは軍事上の必然性から執らねばならない経路ではあったが、ユンカー出身であるブラウヒッチュ元帥にしてみれば、あの屈辱を再び味わう訳には行かない、との決意を高めるものだった。

「ホトとグデーリアンに電文を打て。135年前の雪辱を果たせと」

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