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第2章ー7

 同じ頃、独陸軍もドイツ西部の防衛線を築こうとしていた。

 北部にレープ元帥率いる北方軍集団、中部に度重なる敗北から陸軍総司令官から事実上の更迭という形で任命されたブラウヒッチュ元帥率いる中央軍集団、南部にルントシュテット元帥率いる南方軍集団が再編制の末に置かれた。

 兵士の質量においては、まだまだこれから抗戦可能どころか攻勢防御も可能な状況に独陸軍はあると言えたのだが、問題は武器弾薬を始めとする物資が徐々に欠乏しつつあることだった。

 こういった状況に独陸軍は苦悩せざるを得なかった。


 1月半ばのある日、ヒトラー総統の疑念を招かないためもあり、レープ、ブラウヒッチュ、ルントシュテットの三元帥は指揮下の各軍集団司令部の幕僚達を引き連れて、ベルリンに集まって西部防衛作戦の大会議を開いていた。

 三元帥とも、麾下にある部隊の兵器の充足率に頭を抱えていた。


 そして、更に頭を抱えさせる問題まで起きつつあった。

「あの国民突撃隊は即時、解散させるべきだ。ドイツ陸軍の軍人として彼らと共闘するというのは、軍人としての良心から拒否させてもらいたい」

 ドイツ陸軍の長老といえるルントシュテット元帥は、半ば口を極めて他の2人に訴えていた。

 レープ、ブラウヒッチュ両元帥も無言で肯きはするが、口を開こうとはしない。


 先日、総統命令により後方警備と居住地区防衛のために、一般市民からなる国民突撃隊が編制されることになったのだ。

 当然、英仏米日等の連合軍によるドイツ本土侵攻作戦において、ドイツ西部防衛の一翼を国民突撃隊は担うことになる。

 そして、その実態はというと。


 兵役に徴募されていない14歳から60歳の国民から国民突撃隊は編制されることになっていたが、武器の統一ということすらままならない有様だった。

 何とか大隊単位で銃器の統一が最低でもなされることになっていたが、そもそも正規軍の武器弾薬すら充分に部隊が要求するだけの生産が困難な程、独の経済は外国からの輸入の減少と英米を主力とする戦略爆撃により疲弊、崩壊しつつあるのだ。

 こうした中で、幾ら国民突撃隊を動員しても、配給する武器が全く乏しいという有様だった。

 これでは集められた国民突撃隊の隊員の士気が高いはずがない。

 更に食糧すらドイツ国内の輸送網が徐々に崩壊しつつあることから、自給自足が奨励される有様だった。


 実際、国民突撃隊という名称にもかかわらず、実際には武器を扱う等の訓練よりも自分達が食べる食糧増産の方に時間を取られるという有様の部隊が圧倒的だった。

 こうしたことから、ルントシュテット元帥は、国民突撃隊の即時解散を訴えたのだが。


 だが、ポーランド戦に置けるワルシャワ市民の奮戦や中国内戦における共産中国の住民抵抗に(悪い意味で)感銘を受けたヒトラー総統の厳命により、国民突撃隊は編制されてしまった。

 それなのに、国民突撃隊の解散を訴えては、それこそヒトラー総統によって司令官から解任、軍から退役するという運命が待っている。

 それくらいなら、国民突撃隊を自分の指揮下に事実上はおいて、最前線に彼らが赴かずに済むようにすべきではないか、という考えからレープ、ブラウヒッチュ両元帥は、ルントシュテット元帥の主張に無言で肯くだけだったのである。


 とは言え、その一方で両元帥としても、ルントシュテット元帥の熱心な主張には、内心で大いに同意していた。

 国民突撃隊に回す武器弾薬があるなら、我々に武器弾薬を少しでも回して欲しい。

 その方が独の国防に遥かに役立つのでは、そうレープ元帥も、ブラウヒッチュ元帥も考えた。

 そして、この場に集まった軍集団司令部の幕僚の多くもルントシュテット元帥の主張に同意していた。

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