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第2章ー6

「フルダ渓谷を突破して、チューリンゲン方面に前進せよか。当然、俺に先鋒は任せてもらえるだろうな」

「勿論だ。但し、米軍の先鋒で第3軍司令官としてだ。全体の先鋒ではないがな」

「何だと。ひょっとして米軍が攻撃の先鋒を務められないのか」

「日本海兵隊が日米ポーランド連合軍の先鋒を務める。文句があるのか」

「それなら仕方ないか」

 同じ頃にパットン将軍とアイゼンハワー将軍は、そうやり取りをしていた。


「ブラッドレー将軍」

「はっ」

「第1軍司令官として、パットン将軍の支援を命じる」

「分かりました」

 同席していたブラッドレー将軍に、アイゼンハワー将軍はそう命じた。


 1941年1月当時、欧州の米軍は増強された結果、16個師団を数えるようになっていた。

 その中には虎の子ともいえる4個機甲師団さえいる。

 それによって、第1軍と第3軍、二つの軍を米軍は編制するに至っていたのだが、欧州にいる米軍総司令官たるアイゼンハワー将軍には不安があった。

 それは、米軍の実戦経験の乏しさだった。

 ブラッドレー将軍さえも、(結果的にだが)第一次世界大戦での実戦経験が無い有様なのだ。

 正直に言って、実戦経験の乏しい米軍の各部隊は勇敢に戦うだろうが、先陣を切って攻撃を行うのはどうだろうか、とアイゼンハワー将軍は懸念したのだ。


 そして、本国解放までポーランド軍は人員の補充について懸念があった。

 武器弾薬等に至ってはほぼ完全に米国を中心とする援助に頼る有様である。

 こうしたことから、ポーランド軍は戦場の火消し役として後方に控えることを希望した。

 それにアイゼンハワー将軍の見る限り、ポーランド軍を率いるレヴィンスキー将軍は、いかなる状況にも対応可能な名将の素質を持つ武人のようだった。

 レヴィンスキー将軍に後方を任せれば米軍は後ろを見る必要はあるまい、とさえアイゼンハワー将軍は考えるほどだった(なお、日本海兵隊も同様の高評価をレヴィンスキー将軍に与えていた)。


 こうしたことから、日本海兵隊が、日米ポーランド連合軍の攻撃の先鋒を承ることになった。

 確かに日本海兵師団は表向きは単なる海兵師団だったが、独軍のフランス侵攻作戦以来、独装甲師団と互角以上に渡りあう力を持つ精鋭部隊なのは間違いなかった。

 装備する戦車は少ないとはいえ、ルノー41戦車にやや劣る零式重戦車を全ての師団が装備している。

(もっとも、1941年春以降は主砲をソ連軍のM1936野砲を参考に生産した新型砲に換装することで、ルノー41戦車を上回る性能を確保した零式重戦車の後期型が、日本から大量に送られてきてこれを日本海兵隊はそれ以降の標準装備にするようになる)

 更に実戦経験豊富な将兵が揃っていることや(米国の援助が寄与しているとはいえ)完全自動車化を果たしていることからしても、日本海兵隊が先鋒を務めるのは当然と言っても良かった。


 米軍の基本方針が定まったところで、アイゼンハワー将軍は他の二人の将軍にもう少し立ち入った話をすることにした。

「正直に言うと、フルダ渓谷を進撃路に選ぶことに些かの懸念があるのだ」

「どんな問題があるというのだ。戦場の航空優勢は我々がほぼ確保しつつある。それに陸軍にしても質量共に我々が独陸軍よりは優位に立ちつつある。解決不可能の問題が生じるとは思わないが」

 アイゼンハワー将軍の言葉にパットン将軍は鷹揚に答えた。


「そこなのだ。どうしても将兵は慢心する。そして渓谷地帯は側面等からの攻撃に最適ではないかね」

 アイゼンハワー将軍の言葉に二人の将軍は考え込んだ。

「だから日本海兵隊に先陣を任せるのだ。彼らなら万が一があっても対処できるだろう」

「確かにな」

 パットン将軍は同意した。

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