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第2章ー5

 そんな動きがある中で、英仏米日を主力とする連合軍は、ドイツ本土への本格的な侵攻を計画していた。

 ライン河という巨大な防壁の何か所かに穴が開いた今、次の戦場がドイツ西部になるのはほぼ必然だった。


「英軍がオランダ、ベルギー軍と共同して北ドイツ、ハノーヴァー方面で攻勢を取る。仏軍は南ドイツ、バイエルン方面で攻勢を取る。我が日本軍は米軍、ポーランド軍と共同して中ドイツ、ヘッセン方面で攻勢を取るか」

 北白川宮成久王大将は欧州総軍司令官として、連合軍の基本方針を確認していた。

「ええ、余り各国の軍を混成するのもどうか、ということでライン河を渡河してのドイツ本土への本格的な侵攻作戦を行う前に、各国の担当地域が会議の末に決まりました。基本的に妥当なものと考えますが」

 参謀長の石原莞爾中将は、北白川宮大将にそう説明した。


「悪くはない。だが、本来から言えば、機動戦が得意な我々が北ドイツを進みたかったな、と思えてな」

 北白川宮大将がそう言うと、土方歳一大佐が口を挟んだ。

「確かに機動戦を展開するという点では、我が軍が最も長けているでしょう。それに米軍も自動車化がかなり進んでおり、機動戦が得意そうです。ポーランド軍のレヴィンスキー将軍も、自分がこれまでに話し合った限り、機動戦に理解がある。日米ポーランドの連合軍が、北ドイツ平原を突進すれば、1月もあればエルベ河渡河作戦を展開できそうな気さえします」

「それはさすがに独軍を脆く考え過ぎだろうが、確かに間違ってはいないだろうな。英軍は余り機動戦が得意とは言い難い。だが、これまでの担当地域の関係等から、各国軍首脳が本国とも連絡を取って協議した結果、このような配置になった。既に決まった以上、この作戦計画に従って動くことになる」

 石原参謀長が言い、土方大佐は肯くしかなかった。


「となると、我々は基本的にフランクフルトからフルダ渓谷を抜けてチューリンゲンからザクセン、更にベルリンへと進撃を行うことになるのかな」

 北白川宮大将が欧州総軍司令部の基本方針を確認するために発言すると、他の参謀達も口々に同意の声を挙げた。

「それが基本的な方針になると思います。そして、戦線の中央部を進む関係から、適宜に英軍や仏軍の支援も行うことになるかと考えます」

 石原中将が言った。

「おいおい、仏軍どころか、英軍よりも劣勢な兵力しかない我々は、むしろ英仏軍に支援を求める立場ではないかね」

 北白川宮大将が言うが、石原中将はその言葉を聞いて、胸を張って言葉を返した。

「我が軍は確かに少数ではありますが、質的には一人をもって十人に当たれる精鋭揃い、英仏軍に支援を求めるどころか、支援まで行うことができます」


 土方大佐はその言葉を聞いて思った。

 父の土方勇志大将の言葉は正しいな。

 石原中将は、トップには向いていない、余りにも傲岸不遜なところがある。

 宮様がトップでも、この態度が執れるのだ。

 石原中将がトップでは、周囲と軋轢を生じてしまうだろう。

 宮様は懐が深いから、石原中将を御せられるのだ。


 そう言えば、土方大佐は更に考えた。

 米軍のパットン将軍も傲岸不遜なところがある。

 かつての第一次世界大戦時に、パットン将軍は当時は大尉の身に過ぎないのに階級差を無視して、既に元帥になっていた林忠崇侯爵を「イエロー」呼ばわりして、日本軍どころか英仏軍の軍人まで激怒させた逸話の持ち主だ。

 だが、北白川宮大将と戦場で共闘したことで認識を改め、尊敬する北白川宮大将と共闘したいと米陸軍省に直訴までして、この欧州の地に赴いてきたとか。

 今度の大攻勢に際しては、パットン将軍は米軍の矛先を務めると聞いている。

 どのような結果になるだろうか。

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