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第2章ー1 エルベを渡れ

 第2章の始まりになります。

「これは欧州、いや世界最強の戦車では」

「さすがフランス、欧州最強の陸軍国を長年にわたり呼号し続けたことはある」

 フランス外人部隊の面々の間では半ば驚嘆じみた声が、フランス軍の最新戦車を見る者毎に上がっていた。

 彼らが驚嘆するのも無理はなかった。

 フランスがようやく制式採用したルノー41戦車は、それだけの性能を誇っていた。


 主砲は75ミリ砲を採用している。

 日本の零式重戦車と同口径と侮るなかれ、その威力は零式重戦車の主砲として採用されているM1897野砲を凌ぐシュナイダー製の新型戦車砲だ。

 そして、ルノー41戦車にはイスパノスイザ製の500馬力以上の出力の戦車エンジンが採用されている。

 言うまでもなく装甲も零式重戦車に引けを取らない重装甲を確保した戦車だ。

(この時点でソ連のKV戦車と戦ったことがない、という事実から来る誤解から生じたものとはいえ)様々な国の出身者から成るフランス外人部隊の面々が驚嘆するのも無理はない高性能の戦車だった。

 だからと言って、全ての面々が素直に感嘆する訳でもなかった。


「ところで、この戦車は親が子どもに泣きついて作った戦車でしょうか。子どもが親に泣きついて作った戦車でしょうか。どうも、親が子どもに泣きついて作った戦車の気がするのですが」

 フリアン曹長が皮肉を込めて、(これまでの戦歴からくる気安さから)アラン・ダヴー大尉に言った。

「言いたいことは裏の意味も含めてわかるが。親が子どもに泣きついて作った戦車が正しいだろうな」

 ダヴー大尉も微笑みながらフリアン曹長に言わざるを得なかった。

 そう、ルノー41戦車は、零式重戦車を半ば模倣して作った戦車と言われても仕方なかった。

 とは言え、それには様々な事情から止むを得ずフランスが行わざるを得なかったものだった。


 欧州最強の陸軍国とフランスが謳われたのは、いわゆるナポレオン戦争の頃までだった。

 その後の産業革命時代以降、フランスは徐々に地位を下落させる一方だった。

 それなりに現実が見えていたナポレオン3世は、本音としては普仏戦争を回避したかったらしい。

 だが、プロイセンの数々の挑発行為により激昂したフランスの世論は、ナポレオン3世を強引に後押しした末に普仏戦争を引き起こし、更に大敗したナポレオン3世をフランスから追放して第三共和政を樹立するという事態を引き起こしたのだった。

(その一方で、フランスの世論にとって悪夢だったドイツ(第二)帝国も樹立された。)


 その後、更に歴史は流れた末に、第一次世界大戦でボロボロになった末のフランスの勝利がもたらされたのだが、フランスは世界の五大国の一角を占めるとはいえ、落日の国家と化していた。

 とは言え、フランスは素直に没落できないと(政府も国民も)想っていた。

 そこに第二次世界大戦の危機が起こったのである。

 フランス政府は全力を尽くして、祖国を護ろうとし、国民もそれに答えた。

 そして、友好国である日米両国もフランス政府の希望に応え、官民を問わずに様々な協力を行った。


 こうしたことから量産化に成功したのが、ルノー41戦車だった。

 米国のGM,日本の鈴木が積極的に様々な協力を行った。

 鈴木に至っては、日本海軍(海兵隊)の了解を得た上で、零式重戦車の開発、更に戦闘によって得られた戦訓の提供までルノーに行った。

(日米両国政府としても、フランスを護り、第二次世界大戦を勝利に導くためにもルノー41戦車の開発、量産化に協力を惜しまなかった。)


 それによって開発、量産化されたルノー41戦車は、様々な下地があったことから成功したとはいえ、零式重戦車を凌ぐ高性能な戦車になっていたのである。

 だが、代償は勿論生じてしまった。

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