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第4章ー26

 実際、土方勇中尉の考えはそう間違ってはいなかった。

 この攻勢に参加した日本海軍航空隊の江草隆繁少佐は、この日だけで3回も出撃したと回想している。

 また、この時に連合国軍の操縦士の中には5回も出撃した猛者までいた、とその回想録の中に書いている。

 公式記録を確認する限り、この回想はそう間違ってはいない。

 それくらい密度の濃い猛攻が独陸軍に対して繰り返されたのだ。

 独陸軍は大打撃を被った。


 その一方で、独空軍は地獄のような目を見た。

「高高度からは重爆撃機が、低高度からは攻撃機が爆弾を降らせてくる。更に連合国軍の戦闘機が、鵜の目鷹の目で自分達を追い回してくる。こちらの航続時間は短いから、1回迎撃行動を行ったら、すぐに帰還しないといけないが、送り狼のように連合国軍の戦闘機は付きまとってくる。本来なら、ある程度は戦力温存に努めるべきだったのだろうが、ヒトラー総統の直命で、できる限りの迎撃命令が出ているし、味方の地上部隊を支援しない訳には行かない。精確な資料が残っていないので、私の憶測でという大前提で書くが、この時にベルリン近郊に展開していた、おそらく1000機近い独空軍機の内少なくとも7割は初日で撃墜等されてしまったのではないだろうか。二日目以降は、圧倒的劣勢の中で戦うことが必至になったので、ゲーリング国家元帥の半秘密命令で、我々は東方への脱出を断行することになった。味方を見捨てていく、とてもつらい脱出行で本当に泣きたくなる想いがした」

 そう、この戦いに参加したガーランド中佐は、戦後の回想録に書いている。


 この大規模な支援の下、日米波連合軍は突進を開始した。

 最初の突破口は50キロ余りだったが、一部の部隊を側面攻撃に差し向けることで、その突破口は100キロ以上に広がり、ベルリンへの路は日米波連合軍の前に開けた。

 ベルリンに向かう途上にある幾つかの都市に陣地を構えて、独軍はベルリンへの日米波連合軍の進撃を阻止する予定だったが、津波と化した日米波連合軍の猛攻の前に、退却さえできずに各都市の独軍は崩壊していき、日米波連合軍は攻勢開始から1週間と経たない内にベルリン攻囲に取り掛かった。


この時、ベルリン防衛に当たっていた独軍は、実は1個軍に満たなかった。

 ベルリン防衛軍団は3個師団で編制されていたが、実際にはかなり損耗した部隊があたっており、実質的な戦力は2個師団以下と独軍自身が判断する惨状だった。

 それは二つの原因からだった。


 まず第一の原因が、ヒトラー総統の強い主張である。

 ベルリンに日米波連合軍が攻撃を掛けること自体が、ヒトラー総統にとってはあり得ない話だった。

「劣等民族からなる軍隊が、ベルリンを攻撃すること等、あってはならない。それ以前に我が独軍は必ずその攻撃を跳ね返さねばならないのだ」

 そう発言して、ベルリンを要塞化とまでは言わなくとも、防衛陣地を構えようとする動きさえ、敗北主義的行動だとして断固として拒否した。

 そのためにベルリン防衛軍団はベルリン防衛というよりも、ベルリンで反ヒトラー行動に出たクーデター部隊が出た場合に備えた治安維持部隊という側面が強い代物にならざるを得なかった。


 第二の原因が、独軍自身も自身の電撃戦による考えから、日米波連合軍がこのような攻勢を展開するとは予想しておらず、最前線とそのすぐ後方に精鋭部隊を置いてしまったということである。

 そのために最前線から離れたベルリンは、再編制中の損耗した部隊が防衛に当たることになった。

 そして、独軍としては日米波連合軍が攻勢を開始しても、ベルリン防衛部隊を集める余裕がある筈だったのだが、実際には無いという事態が引き起こされたのだ。

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