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第4章ー25

 1941年7月初め、日米波連合軍による大攻勢は始まった。

 それこそ第一次世界大戦において戦場に航空機が登場して以来の猛烈な爆撃、また、中世に大砲が戦場に搭乗して以来初めてともいえる大砲撃が独軍に浴びせられた。

 そして、これまでとは大いに違う点が一つあった。

 それは、その砲爆撃が広大な面にわたるものになっていたということだった。


 実際問題として、単純な砲爆撃の密度だけを比較すれば、この1941年7月に行われたベルリンとワルシャワを目指す日米波連合軍による大攻勢の砲爆撃は、過去と大差がない、いや小さい側面もあると言われても仕方のないところがあった。

 確かに密度だけを単純に比較すればそうだったかもしれない。

 だが、この時の大攻勢の真の怖ろしさは広大な面に渡る大攻勢であったという点である。

 そのために前線から後方の予備部隊までが一度に叩かれ、更に独軍の防衛線が広範囲に崩壊するという事態が生じてしまったのである。

 これに対する防衛態勢を独軍は講じていなかった。

(というより、この当時の軍隊でこのような事態に際して防衛態勢を講じられる軍隊は存在しなかった。)


 この時の日米波連合軍の大攻勢は、敵の戦線を一度に崩壊させて、味方の軍隊を突進させるという点だけ見れば、独軍の電撃戦理論と大同小異ではないか、という指摘は一部では当たっている。

 だが、日米波連合軍のというより、日米波連合軍が攻勢発動に際して参考にしたソ連軍の縦深戦略理論は、細かく見れば電撃戦理論と似て非なるものだった。


 例えば、猛烈な第一撃で生き延びた敵部隊についてだが、電撃戦理論では迂回して突進が基本であるのに対して、縦深戦略理論では叩き潰すのが原則である。

 また、攻勢正面についても電撃戦理論ではそんなに広くないが、縦深戦略理論では幅100キロという事態さえ想定されている。

 というか、攻勢正面を広げることによっても敵の戦線を崩壊させるのが、縦深戦略理論の一環なのだから、これは当然の話だった。

 さて、日米波連合軍の砲爆撃が終わった直後の話である。


 土方勇中尉は呆然とする想いがしてならなかった。

 土方中尉の予想では、もっと狭い範囲に砲爆撃は浴びせられるものだった。

 だが、土方中尉の眼前では地平線の遥か彼方まで砲爆撃が浴びせられている。

 砲爆撃が終わり次第、米軍の第一陣の攻勢が始まった。

 普通ならば、独軍の予備部隊が前線に駆けつけて、攻勢の阻止を図るのだろうが、これだけ広範囲な砲爆撃の後だ、独軍の予備部隊も相応の打撃を被っているようだ。


 独軍の最初の防衛線は、土方中尉の感覚からすれば、すぐに崩壊してしまった。

 更に後方から予備部隊が駆けつける気配もないらしい。

 第一陣の攻撃は更に後方へ、予備部隊がいる方面へと続けられている。


 師団司令部からは、第一陣が損耗次第、第二陣の攻撃部隊として攻撃に自分達は参加することになるので、第一陣の後方について進撃せよ、という命令が自分達に下っている。

 その命令通りに自分達は進撃するつもりだが、これだけの広範囲に渡る砲爆撃だ。


 近接支援に当たる味方の航空機は爆弾を投下等次第、最も近い味方の前進基地に戻ってすぐに補給しての再出撃を繰り返しているのでは、と土方中尉が想う密度で、攻撃を繰り返しているようだ。

 何しろ、空が三分に航空機が七分という空の状況が、攻撃開始から半日以上が経ったというのに続いている有様なのだ。

 独空軍機は、午前中それも早い内は反撃を試みていたようだが、気が付けば、さっぱり独空軍機は空を飛ばなくなっているのではないか、恐らく損耗してしまった、と土方中尉には思えてくる。

 凄い、それ以上の言葉が土方中尉からは出なかった。

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