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第4章ー22

 アイゼンハワー将軍と北白川宮成久王大将の会談が終わった後、北白川宮大将は石原莞爾中将を自分の下に呼び出した。


「この際、ベルリン占領に併せて、ワルシャワを奪還できないかね」

「やってみせましょう」

 北白川宮成久王大将の問いかけに、石原莞爾中将は即答した。

 北白川宮大将の問いかけの裏に、石原中将はそれができるのなら君の暴走を不問にするという含意があることに気づいたからである。


 しかし、実際問題として。

「ワルシャワまでは、最も近い連合国軍の拠点からでも600キロ以上は直線距離で離れている。本当に可能なのだろうか」

 石原中将を介して北白川宮大将からの指示を受け取った土方歳一大佐は、その指示を聞いた直後は気が遠くなる思いがした。

 何しろ神戸近辺で両軍が対峙している状況なのに、東京を急襲して占領せよというようなものなのだ。

 しかも、京都周辺に敵の大軍が集結しているのに、それを打ち破ってである。

 土方大佐の脳裏には不可能という文字しか浮かんでこなかった。


 だが、石原中将には腹案があった。

「我に秘策あり。立っている者は親でも使え。使えるのなら敵のモノでも活用する」

 石原中将の脳裏には、かつてのスペイン内戦の際に、土方勇志伯爵率いる日本軍義勇兵の一員として対峙したソ連軍の作戦、戦術を活用しようという考えが浮かんでいた。


 さて、スペイン内戦の際の話を少し語るが。

 この時、ソ連軍はトハチェフスキー将軍をトップとする軍事顧問団を、スペイン共和派支援のために送り込んでいた。

 そして、ソ連の軍事顧問団は、スペイン共和派軍を強化する一環として、その士官教育の為に、当時のソ連軍の研究資料等を提供したのである。

 スペイン内戦によって、そういった資料を手に入れた日本海兵隊は、当時のソ連軍の作戦術、縦深戦略理論等を知り、その内容に驚愕して、日本陸軍とも協力して研究し、自家薬籠中の物にしようとした。


 それから数年が経ち、まだまだ作戦術や縦深戦略理論等が、日本海兵隊内で自家薬籠中の物になったとはいえなかったが、石原中将はそれなりに作戦術や縦深戦略理論等を咀嚼、理解できるようになっていた。

 石原中将はこれを活用すれば、ベルリン占領に加え、ワルシャワ奪還も何とかなると考えたのである。

 そして、土方大佐等の幕僚を駆使して、石原中将は原案をまとめ上げ、それをパットン将軍に示した。


(ちなみに石原中将と同様にアイゼンハワー将軍に釘を刺された)パットン将軍は、石原中将が作り上げた原案を一読した後に一驚しながら言った。

「凄い。日本軍が立てた作戦とは思えない。それにしても」

 腹に一物ある人間の目をしながら、パットン将軍は石原中将に問いただした。

「どうも我が国やソ連のような大国の立てる作戦の臭いがしますな」

「気のせいですよ。気のせい」

 同様の目をしながら、石原中将は惚けた。


「ところで」

 石原中将は真顔になって言った。

「米軍はこの作戦に協力は可能でしょうか」

「我が米国の国力をもってすれば十分に可能です」

 パットン将軍も真顔になって言った。


「それでは、それぞれの上官に進言しませんか。更にポーランド軍の了解も取り付けましょう。その代償として、これが今年の内に我が日米両軍の行う事実上は最後の大作戦になるでしょうが」

「確かに、この作戦が終わった後の補充と再編制、更に補給体制の確立を考えれば、我が米国の国力をもってしても、それが完了するのは10月以降の話になるでしょう。それから後にソ連への大攻勢等、季節等から考えても無理があります」

 石原中将とパットン将軍は、更なるやり取りをしつつ、お互いに笑みを交わしながら想いを巡らせた。

 これは史上空前の大攻勢になるな。

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