表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/120

第4章ー21

 久しぶりに日本海兵隊等が登場します。

 そもそもの発端は、フルダ渓谷で苦戦を強いられた石原莞爾中将の暴走だった。

「フルダ渓谷の敗北の雪辱を果たさねばならん」

 それこそ、会稽の恥を雪がんとする句践のように、石原中将は独の首都ベルリン攻略作戦を練りに練った。

 更にそれを後押しする者が現れた。


「親友を助けられなかった屈辱もある。何としてもベルリン一番乗りを果たして、クラウツをぶちのめしてやらないと腹の虫がおさまらねえ」

 同じようにフルダ渓谷で苦戦を強いられた米第三軍司令官のパットン将軍が、石原中将に肩入れした。


「何かいい作戦は無いか」

 二人は部下を督励してベルリン攻略作戦を練った。

 更に二人はある意味では悪いことを考えた。

 できる限りポーランド軍をベルリン攻略から外して、日米の2か国でベルリン攻略の栄誉を分かち合おうというのである。


 だが、普通に考えたら、ポーランド軍を外すのは無理だった。

 何しろ、第二次世界大戦の発端が、独ソ両軍のポーランド侵攻であり、その際にポーランドの首都ワルシャワは独軍によって瓦礫と化している。

 それを覚えているポーランド軍が、ベルリン攻略から外れる訳が無かった。

 そして、ベルリン攻略に加わりたいという英仏両軍を、ポーランド軍がベルリン攻略を希望しているという理由から排除したのに、ポーランド軍まで排除して日米両軍で独占しては英仏両軍が激怒する。

 それでも。


「ベルリン攻略の際に、ポーランド軍を少しでも減らすことで、ワルシャワの報復としてベルリンが破壊されて、市民が大量に犠牲になるのを防ぐ」

 口先ではそう言って、二人はベルリン攻略の栄誉をできる限り日米で確保しようと策した。


 アイゼンハワー将軍と北白川宮成久王大将は、部下二人の暴走、策略を把握したことから、二人で話し合うことにした。

「どうしましょうか」

 北白川宮大将は溜息をつきながら、アイゼンハワー将軍に問いかけた。

「口先とはいえ、ポーランド軍をベルリン攻略に大量に投入するのは確かによくないですな。ワルシャワの報復としてポーランド軍がベルリン市民に対する犯罪行為を行うリスクは否定できない」

 アイゼンハワー将軍は、ある意味で政治的軍人である。

 だからこそ、各国軍の利害を調整し、欧州戦線における連合国軍最高司令官が務まるともいえる。

 しばらく二人は考え込んだ。


「ちょっと不可能に近いような作戦を二人に立てさせ、実行可能であると判断出来たら、二人の作戦で行きませんか」

「ちょっと不可能に近いような作戦とは」

 北白川宮大将の提案に、アイゼンハワー将軍は興味を覚えた。

「この際、ワルシャワも解放するのです」

「えっ」

 さしものアイゼンハワー将軍も絶句した。


 この時、1941年5月末の戦線は大雑把に言って、エルベ河等を境界線として、連合国軍と独軍が対峙しているといって良い状況だった。

 だからこそ、連合国軍の次の目標は、ベルリン、プラハ、ウィーンであり、その東にあるワルシャワはベルリン占領後に目指す目標と考えられていた。

 実際問題として、現時点で最もワルシャワに近い連合軍の拠点と言えるのがライプツィヒになるが、そこからでも600キロ以上もワルシャワは離れた目標になる。


「幾ら何でも遠大過ぎる目標ではありませんか」

 気を取り直したアイゼンハワー将軍は、北白川宮大将をたしなめた。

「ですが、ワルシャワを奪還すると言えば、ポーランド軍は主力をそちらに向けるのでは」

「確かに」

 ワルシャワはポーランドの首都である。

 ポーランド軍の将兵の多くが祖国奪還に燃えており、ワルシャワとベルリンとを天秤に掛ければ、ワルシャワ奪還をポーランド軍の将兵は喜んで選択するだろう。

 アイゼンハワー将軍は唸らざるを得なかった。

 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ