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第4章ー20

 だが、実際にはウィーン入城をダヴー大尉はこの時すぐには果たせなかった。

 ダヴー大尉率いる歩兵大隊は、ウィーンを死守しようと行動するだろう独軍の包囲網完成のためにウィーン東方へと向かう部隊の一部にされたのだ。

 しかし、これは戦略的には正しい行動だったが、ダヴー大尉に最後の苦戦を味わせることになった。

 何故なら、独南方軍集団の主力は、仏伊連合軍の予想に反して国境を越えてのハンガリー方面への後退を行いつつあったからである。


 その数日前、ベルリンを日米波連合軍が攻囲しているという現状、更にスロヴァキアの連合国側への無条件降伏により、ベルリン方面への後退が不可能になったと判断した独南方軍集団司令部は、参謀本部の了解を得た上で、連合国軍の捕虜となることを免れ、ソ連と協力しての祖国解放を将来に果たすためにハンガリー方面への後退を決断したのである。


 ハンガリーに武器等を提供することで通行を許可してもらい、それによってソ連も通って、改めて独軍の兵力を増強して、祖国解放の戦いを目指す。

 ダヴー大尉等の仏軍の軍人にしてみれば、かつてのナポレオン戦争時の墺や普が、露と手を組んでやったことの再演にほかならず、何としても独軍の脱出を阻止しようと奮闘することになった。


(なお、英仏米日等の連合国側の政府は、ハンガリー政府に対して、独軍の軍人が投降することは認めるが、更にその軍人がハンガリーを経由してソ連へ、更に占領されていない独へと向かうことをハンガリー政府は阻止するように要請している。

 だが、ハンガリー政府にしてみれば、これまで独ソと友好関係にあり、更に敵の敵は味方の論理から、ソ連と敵対するルーマニア政府と連合国軍が友好関係にあり、ルーマニア政府とハンガリー政府は領土問題から宿敵関係にあることもあり、独軍の軍人の通行を認める方向に動いた。

 なお、ハンガリー政府は自国政府に投降後の独軍人がどこに向かうかは、各人の自由意志であるとの主張を行い、それを連合国側の政府も無理に否定はできなかったという事情が加わる。)


 ダヴー大尉は何とか独軍のハンガリーへ、東方への脱出阻止任務に奮闘したが、上手く行かなかった。

 何とかして将来の祖国解放のために戦おうとハンガリーへの脱出を図る独軍の将兵の奮闘は凄まじいもので、仏軍の何とかしてウイーン東方で独軍の包囲網を完成させ、それによって独軍を包囲殲滅しようとする行動を阻止し抜いた。


「後一歩とは言わない。だが、後、数キロ前進すれば、ウィーン東方で仏軍の包囲行動は成功する」

 ダヴー大尉は最後には口ではそう叫んでおり、感情的には切歯扼腕して更に前進行動を成功させたかったが、その一方で内心は冷めていた。

 これは無理だ。


 仏軍の主力戦車、ルノー41戦車は攻防性能で独軍の戦車に優越するが、機動力で微妙に劣る。

 伊軍の各種戦車は、機動力では決して独軍に引けを取らないが、如何せん豆戦車と軽戦車が主力である。

 機動力の劣る戦車部隊では、圧倒的な火力優位がないと、敵軍の包囲殲滅等は無理だ。

 勿論、戦車部隊だけで包囲戦は行うものではないが、現実問題としては。


「どうやら会心の勝利とは行きそうにないですな。我々の勝ちだ、ということはできそうですが」

 傍に来たルイ・モニエール少尉が、ダヴー大尉に半ば進言してきた。

「まあな」

 ダヴー大尉(とモニエール少尉)の眼前を、独軍の将兵が脱出していく。

 勿論、懸命に銃砲撃等を我々は行っているし、空軍も阻止行動を行っている。

 しかし、多くが脱出に成功するだろう。


「ウィーンが傷つかなかったことで満足するか」

 ダヴー大尉はそう言って自分を納得させ、モニエール少尉はその言葉に肯いた。

 これで第4章でダヴー大尉、仏軍がメインの部分は終わり、次から日米波連合軍がメインを務めることになります。


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