マ王、目覚める
俺が眠っている10年という短い間で何が起きた。
アラジンは、どこだ。
「んぅ、、ふわぁ」
横で誰かが寝ていたようだ。アラジンでも寝ているのかと思った。
「、、、」
「、、、、、、、」
見たことのない種族、角も生えていない、模様もない。アラジンではない。。。
なんだこいつは。
「誰だ貴様は」
「、、、、えっと、こっちのセリフだけど、どちら様?」
言葉は通じる。
それよりも、こいつ、この俺を知らないだと。魔王のことを知らないやつなどおらぬはずだが。仕方がない、まだ生まれたばかりなのだろう。
「俺のことを知らないとは命知らずだな。娘。俺は魔界!(の)魔王である!」
どうだ、分かったか。気づいたか。
「まかい(の)まおう」
思い出したか!思い出したか!さぁ恐れおののけ、ひざまずけ。
「あぁ、馬飼馬王っていうのね」
「・・・」
あ、あれぇ?俺のこと知らない?え?嘘だろ?俺魔王だよ?
この10年の間に魔王の存在消されたの?え?「まかいまおうっていうのね」って知らないやつのセリフじゃんそれぇぇぇ。
「まぁいいや。馬王くん。今から朝ごはん作るけど、食べる?」
くんづけで呼ばれたの、初めて。。。(チーン)
「、、、一応作っておくから食べたくなったら1階におりてきたらいいよ」
とぼとぼ。。
一体、何が起きたんだ。アラジンはどこに行った。ここは一体どこだ。
何もしないわけにもいかない。まずは情報を集めねば。
そのためにもごはんを。。
「やっと、降りてきた。じゃあ食べよう」
なんだ、この娘は。まったく素性もしれない俺に飯をふるまうなど、どのような企みが。
「それじゃあ、馬王くん、いくつか聞きたいことがあるのだけどいいかな?」
好都合だ。
「あぁかまわん」
「まず一つ、なんで私の家にいるの?」
「ふ、俺にも、分からん。。」
そんな顔をするな。わからないものはわからないんだ。
「ふ、二つ目、どこに住んでいるの?」
「俺が築き上げた城だ。」
そんな呆れた顔をするな。本当に俺が建てた城だったんだ。
「迷子?」
この娘のことなど全くわからないがこれだけはわかる、今この娘は俺のことを馬鹿にしている。
「迷子なんかではない!」
ただ、なんて言おう。ここが未知の世界であるということは明らかだ。アラジンも居ない。誰の手助も借りることのできない今、仲間を作っておくことは必要だ。
「だが、記憶が、混濁している。俺は城で眠りについた。傍らには友が居た。だが起きた時にはここに居た。」
嘘はついていない。
「そっか。記憶喪失ってやつかな。とりあえず、なんだけど、記憶が戻るまで、ここで暮らしてみる?そんな贅沢な暮らしとかはできないけど。」
この娘は最初からこうだ。素性もわからない俺にたいして、何をしたいんだ。
それに、俺のような角が生え、顔には紋様がある、この俺を怖がらないなんておかしい。実はいうと魔の手のものか?
まぁよい。俺は最強の魔王だ。こいつが何者で何を企んでいたとしても、問題はない。
「おい、娘。この世界について、もっと知りたい。俺に教えろ。」
「娘?最初から思ってたんだけど、その娘っていう呼び方やめてくれないかな。私にも名前があるんだから。かりは、天野苅羽。それが私の名前」
それが、こいつの名前か。なるほど。
俺にここまで強気で意見するとは、やはりこいつ、できるやつなのか。
「いいだろう。では苅羽。俺にこの世界のことを教えろ。ハザン。」
ハザン、これは洗脳系魔法。俺の目にうつったものを洗脳することのできる、最高最大級の洗脳魔法。
これで、こいつはもう俺の人形だ。
「、、、あ、あと、敬語を使えとは言わないけど、その言葉遣いやめて。」
・・・あれ?ハザンをかけたはずなのに、効いていない、だと、こいつ何者なんだ。
ハザンが聞かないならお前の脳を調べさせてもらおう。
「ドグル」
・・・何も、起きないだと。これ以上は危険だ。いまはおとなしく従うほかないようだ。
「顔、洗ってきたら?」
俺がこんな娘に指図される日がくるとはな。何千年ぶりだ。
とにかく今は従うしかない。
「な、な、な、なんじゃこりゃあああああああ」
鏡に映る顔は誰だ。これはなんだ。
角もない。模様もない。あの厳格たる俺の顔が、こんなにも幼くちんちくりんな顔だと。
なんの悪夢だ。これはきっと悪い夢だ。
「ど、どうしたの?」
「いや、なんでも。。。」
「そう、あんまりびっくりさせないでね」
びっくりしているのはこっちのほうだ。
夢ならば、夢を壊す魔法だ。
「ボルグ」
何も、起きない。そうか、夢の中で魔法という力を使えないように設定されているのか。
こうなれば実力行使だ。
「苅羽!俺のことを殴ってみてくれ」
やむをえまい。こうするほかなかったのである。
「は?」
いや、そうなる気持ちはわかる。急に殴ってくれといわれて困惑する気持ちはわかる。だがこらえてくれ。ここは俺のためと思って。
「本当に、本気で殴っていいの?」
「あぁ、頼む」
娘の本気パンチなどくらったところでダメージにはならんが衝撃がくる。さすれば夢は覚めよう。
ドゴッ。
「カ、ッハッ」
いい、パンチだ。意識が飛ぶ。夢から覚めるようだ。さらばだ苅羽。
一食の飯、うまかったぞ。