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AIOライト  作者: 栗木下
2章:漁村ハナサキ

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73/621

73:14-3

【AIOライト 14日目 15:13 (5/6・雨) 西の草原】


「ふうん、それじゃあシアちゃんの容姿については全てがお前の決めた通りじゃないのか」

 時折襲ってくるモンスターを一蹴しつつ俺たちは西へと進み続けていた。

 そして、ただ歩くのもつまらないという事で、俺たちはそれなりに会話をしていた。


「ああ、金色の髪や目の色についてはたぶん俺の影響なんだろうけど、耳の形については俺じゃなくて素材の素材に使ったプレンエルフの血の影響じゃないかと思ってる」

「となると、やっぱりシアちゃんは分類上は人間型じゃなくて魔物型に入るのか?『癒しをもたらせ』みたいな杖無しでも使える魔法をレチノールは使えないし」

「ウチのウンシュウも魔法は杖とか本頼みだしなぁ。でも、そう言う部分でもやっぱりシアちゃんは特別なのか」

 現在話題に上がっているのは、シアについて……と言うよりはレア度:(プレイヤー)(メイド)についてだった。

 と言うのも、マンダリンもクリームブランも、レア度:PMのアイテムを作ろうとはしてみたらしい。

 が、まるで上手くいかなかったために、シア含めてレア度:PMを五回も造り出している俺に相談をしたいようだった。


「『それはCommonではなくSoleである。』レア度:PMの中にもまた差があるというのは、初めて聞いた情報だったな」

「そうだな。俺も今日まで、その文が付かないパターンがあるとは知らなかった」

「差はやっぱり、完全にオリジナルの物を造ったかどうかってところか?」

「じゃないか?名前を自分で決められるあたりなんか正にそうだろ」

 で、この情報交換で知ったのだが、レア度:PMのアイテム自体は他にも造り出しているプレイヤーが出て来ていて、その一部は掲示板にも情報を上げているとの事だった。

 だが、彼らが作ったアイテムはいずれも既存のアイテムをシステムに頼らずに作っただけで、俺の作ったレア度:PMの装備品についているような『それはCommonではなくSoleである。』の一文は説明欄に存在しなかった。

 何故差が付いたのか、正確な所は分からないが、レア度:PMの中にも差があるというジャックさんの言葉が正しい事だけは確かだろう。


「まあ、実際の所数をこなすしかないんじゃないか?俺は一つに出来そうだから錬金して、それで成功しているけれど、その辺の感覚は説明しろと言われても無理だしな」

「俺ら的には熱湯に腕を突っ込み続ける方が無理だけどな」

「激しく同意」

「そこは頑張れよ。お前らが自分のホムンクルスを作った時に特にこだわった部分みたいにさ」

 俺はクリームブランとマンダリンの言葉にツッコミを入れつつも、二人のホムンクルスを見る。

 より具体的に言えば、レチノールのむっちりした太ももと、ウンシュウの幼い容姿を。


「何故バレたし」

「ぐっ、確かにこだわったが……」

「ふふふふふ、バレないとでも思っていたか?」

 むしろ何故バレないと思ったという感じである。

 時折安否を確かめるように二人が振り返った時に、その視線が何処に向かうかを見ていれば一発で分かる事なのだから。


「だ、だが、そう言うゾッタはどうなんだ?」

「そうだぞ。シアちゃんの事を見る時のお前の目は……」

「……」

 俺たち三人は俺たちの後ろを歩くシアたちへと視線を向ける。


「どうしました?マスター?」

「い、いや、何でもない」

 ああ、うん、シアは相変わらず可愛いな。

 雨で少し濡れた金色の髪とか、遠くを行くモンスターを見つめる目とか、他のホムンクルスの様子を窺う感じとか、全てが全て良い。


「やっぱウンシュウが一番だな」

「うーん、レチノールが一番だ」

「やっぱりシアが一番だな」

 で、感想を言ったら、全員が同じタイミングでこれである。

 勿論、俺たちはそれぞれ自分のホムンクルスが一番なだけであって、他のホムンクルスが悪いだとか、良くないだとか、そう言う事は一切思っていない。


「ウンシュウだ」

「レチノールだ」

「アンブロシアだ」

 思ってはいないが……うん、これは負けられないな。

 ここで退いては男が廃る。

 引いてはシアの評価も下がってしまう。

 それだけは許容できない。

 許容できないが故に……。


「やるのか?」

「そっちこそ」

「いい度胸だ」

 戦争である。


「「「……」」」

 俺もマンダリンもクリームブランも足を止め、距離を取り、無言のまま構えを取る。

 勿論、決闘でもなければ、PK行為を働く気もないので、武器を抜いたりはしない。

 だが代わりに闘志……否、自分のホムンクルスに対する愛を語る意気込みだけは、全力で高める。


「なら……」

 そして俺が口火を切ろうと思った時だった。


「軽めに『ペイン』『ペイン』『ペイン』っと」

「「「あばあああああああぁぁぁあ!?」」」

 シアの杖から光の球が放たれ、それに触れた俺たち三人はタンスの角に小指をぶつけたような痛みに悶絶。

 大声を上げ、若干涙目になりつつ、その場で倒れる。


「シ、シア……何を……っつ!?」

 俺は涙をこらえつつ、シアの事を問い詰めようとした。

 だが、シアとシアの後ろに居る二人のホムンクルスの目を見て直ぐに悟った。


「マスター、私の事を一番と思ってくれるのは嬉しいですけど、足を止めないでください。先は長いんですから。それと、猥談の類を目の前でされるのは許容できませんからね」

 シアたちの目は……俺、クリームブラン、マンダリンの三人の事を蔑む目だった。

 シアの名前の横についているタグの威圧感もあって、本当に恐ろしい姿だった。

 こんな姿を見せられてしまっては、惚れている側の男としてはこう言うしかなかった。


「「「すいませんでした……」」」

「よろしい。では先を急ぎましょうか」

「「「はいっ!」」」

 何と言うか、この場における力関係が決まった瞬間だった。


「ふうむ……」

 なお、俺たちの会話に加わっていなかったジャックさんだが。


「主人への折檻ならば、PKタグは付かないのか。興味深いな。少し試してみてくれ、スカルペル」

 この人はこの人で、微妙に変わった人であるようだった。

シア関係では割とアホになります。


08/09誤字訂正

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