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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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619/621

619:114-3

本日は三話更新です。

こちらは一話目になります。

【AIOライト 114日目 20:12 (1/6・雨) 造船街・ビ-ヘスペリデス】


「菫青石の原石?」

「はい、それが船を作るために必要なアイテムだそうです」

 夕食後、俺はシアがビで調べて来てくれた情報について聞く。

 勿論、俺の本体の手元にはGMが渡してくれた資料があるし、一緒に夕食を食べた関係でGM本人もそこで食後のお茶とデザートを楽しんでいるのだが、それはそれ、これはこれ、正規のルートで手に入れた情報をまずは聞くべきである。


「えーとですね。具体的に言いますと……」

 さて、肝心のシアの話だが、どうやら錬金術で船を作る方法については簡単に聞けたらしい。

 それによればだ。


・菫青石の原石と言うアイテムと自動生成ダンジョンのボスの亡骸で船は作れる

・船の大きさや性能は二つの素材の影響を受ける

・菫青石の原石自体はドウの地ならば地域差はあっても、自動生成ダンジョン含めて何処でも拾える、はず

・なお、これらの情報を得なければ、船を作ると言う選択肢は提示されない


 との事だった。


「つまり、船が欲しければ、ひたすらに菫青石の原石を探して、ドウの地中を走り回れ。って事か?」

「そういう事みたいです」

 ボスの亡骸の入手方法については自動生成ダンジョンのボスをプレイヤー一人のPTで倒せばいいと分かっている。

 なので、今の自分が作れる限界の船を、などと思わなければどうとでもなる事だろう。

 問題は菫青石の原石の方だが……まあ、これまでの探索で菫青石の採掘場のようなものを見つけているプレイヤーにとっては簡単な課題、俺やグランギニョルたちのようにとにかく先へと進む事を優先してきたようなプレイヤーにとっては面倒な課題と言う所か。


「そう言えば、菫青石なら事前登録特典としてもらったピアスがあったはずだが……」

「別にアレを使っても構いませんが、その場合に出来るのは当然最低限の船です」

「まあ、そうだろうな」

 で、此処で俺は倉庫ボックスの奥底に沈んでいるアイオライトのピアスを思い出したので、倉庫ボックスから取り出してみる。

 が、繋がりの類は一切見えないし、GMの言うとおり、素材としても最低ランクのもののようだった。

 この感じだと……仮にレア度:10の亡骸と組み合わせても、強制的に最低ランクにされそうだな。

 このアイオライトのピアスにはそう言う加工が施されている。


「ついでに言えば、同じ菫青石、と言う繋がりも、貴方対策で利用できないようにしましたから」

「お、おう……」

 と言うか、もしかしなくても、このアイオライトのピアスはアイオライトのピアスと言う名前なだけで使われている菫青石自体はただのイミテーションな気がしてきたな。

 こういう所で楽をさせてくれるGMではないし。


「それでえーと……」

「ん?どうした?」

 さて、船についての情報はこんな所であるようだが、どうやらシアからはまだあるらしい。


「その、マスター。ビの人たちから言われたんです。『船とは人の身だけでは行けない所に行くためにあるものである。さて、君の主に今更船は必要なのかね?』と」

「……」

「それも一人だけじゃないです。何人もの住人の方からです」

「そうか……」

 『船とは人の身だけでは行けない所に行くためにあるものである』か。

 まあ、確かにそうではあるな。

 車や馬と言った陸を行く乗り物は、目的地に移動することだけを考えれば、無くても何とかはなる。

 だが、船には……それが無ければ行けない場所と言うのが存在する。

 そして今の俺にとって船が絶対に必要なのかと言われれば……微妙な所ではあるな。


「マスター。もしかして、今のマスターが本気を出せば、海を渡る事どころか、現実世界に行く事も可能なんじゃないですか?それも今すぐに、特別な道具も無しで、です」

「……」

 人の振りをするならば、人の枠に留まって活動をするならば、船は必要だ。

 だが、人でない事を隠すのを止めれば……船など必要ない。

 シアの言うとおり、今の俺はその気になれば意思一つで何処にでも飛ぶことが出来る存在なのだから。

 それも空間だけではなく次元も時間も飛び越えてだ。


「否定は……しない」

「マスター……やっぱり」

 そして、いい加減にシアに隠すのも難しい。

 何故なら今の言葉、シアは確信を持って口に出していたのだから。


「一体何時から、何時からマスターは……」

「あー、悪いがその辺については黙らせてもらう。色々と明かすと拙い事柄が多いからな。知りたいなら、自分で調べてくれ」

 だから俺はシアの言葉を肯定する。

 肯定した上でこれ以上は語らない。

 今のシアに語ってもその身を危険に晒すだけだと分かっているからだ。


「GMは……」

「私は勿論知っています。ですが、個人情報を含む問題なので、これ以上は喋りません」

 GMも話さない。

 GMはシアに一つの可能性を見出しているからだ。


「さてと、今日はもう寝させてもらうとしようか。そして明日は……タイバンから西に向かう。話すべき事はそこで話すとしよう」

「……。分かりました。マスター。また明日」

 そうして俺は話を切り上げると、その場から転移で去った。

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