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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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614/621

614:113-4

本日は二話更新です。

こちらは一話目です。

【AIOライト 113日目 18:52 (2/6・晴れ) 創門街・タイバン-ヘスペリデス】


「そこで俺はプレンジャイアントに一発……」

「砂漠でプレンワームのワンダリングを……」

「「タイバン到達バンザーイ!ヘスペリデスバンザーイ!」」

「ぷはっぁー!風呂上りの一杯は堪らんぜよ!」

 宴は順調に進んでいる。

 様々な出自の酒にジュース、各自が道中で獲得した肉に、ヘスペリデスで採れた新鮮な野菜、と言った食べ物は次々に消えていく。

 そして、それに伴う形でプレイヤー同士での情報交換が行われたり、すっかり酒が入ったプレイヤーが肩を組んで騒ぎ立てていたりもする。

 中には酒を抜いてくると言って風呂に行って来て、帰ってくると同時に再び大量の酒を飲み始めているプレイヤーも居たりで、中々に混沌とした状況である。


「久しぶりね。ゾッタ兄、シア」

「久しぶりー!師匠!シア!」

「久しぶりです。ゾッタさん、シアさん」

「おう、久しぶりだな。グランギニョル、シュヴァリエ、ロラ助」

「お久しぶりです。皆さん」

 さて、そんな宴会の中、俺たちも俺たちで話をする。

 会話の内容は……まあ、この数日間何をしていたかと言う話ばかりだ。

 『黒錠の迷宮-初級』を攻略するにあたってのコツなんかも聞かれたが……正直、俺の攻略は参考にはならないと思う。

 誰でも使えそうな情報を強いて挙げるならば……相性が悪い、危険であると判断したマップに遭遇した時には階段を見つけ次第次の階層に移動する事と、迷宮マップ対策に壁を壊す手段の一つくらいは持ち合わせておいた方が便利なのではないかと言うくらいである。


「あ、そう言えば師匠。師匠も錬金術師(アルケミスト)ギルドを作ったんだよね。出来れば僕の事を入れて欲しいんだけど……ダメかな?」

 そうして、会話を続けていると、遂に俺の錬金術師ギルドについての話が出てくる。

 グランギニョルとロラ助は表情からして別にどうでもいいようだが、シュヴァリエは……うん、かなり真剣で、不誠実な対応はするべきでない感じだな。


「確かに作ったな。『藤の契約(グリスィナ)』と言うギルドだ」

「ふむふむ」

「だが、誰か入れると言う気はないな。ギルドサポートや倉庫ボックスの機能が欲しくて作ったギルドだし」

「んー、そこを何とかならない?」

 俺は左手に付けたグリスィナ・スィンバシをシュヴァリエたちに示しつつ、自分のギルドの名前を告げる。


「何とかか……」

 で、参加させるかどうかについてだが……GMとの話し合いの結果として、他のプレイヤーを参加させる場合には相応の試練を課すように言われている。

 まあ、『藤の契約』に入ったプレイヤーとグリスィナ・スィンバシの組み合わせで出来る事を考えたならば、当然の措置ではあるな。


「幾つかの条件を満たせば、まあ、考えなくもない」

「おおっ!」

「あら、ゾッタ兄にしては優しいのね」

「へー……」

「マスターにしては珍しいですね」

 俺の言葉にシュヴァリエは喜び、グランギニョルは不穏な笑みを浮かべ、ロラ助は感心し、シアは驚く。

 見事に四者四様の反応である。

 ま、それは置いておいてだ。


「そう言う台詞は条件を聞いてからにしておけ」

「ま、そうよね」

 俺はグランギニョルの言葉に返しを入れつつ、『藤の契約』に入るための条件を明示する。


「条件1、レア度:PMを所有している事」

「問題ないね」

「此処まで来たプレイヤーならだいたい一つくらいは持ってそうよね」

 条件1は完全にシステムに頼っているだけのプレイヤーを弾くための条件である。

 なのでこの場に居るような最前線組には無縁だろう。


「条件2、『黒錠の迷宮』攻略済み。まあ、これについては初級で問題ない。俺もだしな」

「あ、うん」

「攻略を疎かにするなと言う事ですね」

 条件2はこの場でシュヴァリエを加える気はないと言う意思表示。

 尤も、一定水準以下のプレイヤーを弾く意味もあるが。


「条件3、俺とフレンドになっている」

「地味に面倒な条件だね。師匠」

「ゾッタ兄のフレンドって両手の指で足りた気がするんだけど」

「あ、そう言えば自分、ゾッタさんとフレンドになってなかったですね。折角なんでいいですか?」

「いいぞ」

 条件3は誰を入れるかは俺が見極めると言う事である。

 と言うわけで、とりあえずロラ助からのフレンド申請は受理しておく。


「条件4は……そうだな。ラードーン」

「なんですかー?」

 で、条件4だが……


「条件4、ラードーンと決闘して勝て」

「へ?」

「マスター!?」

「ーーーーー!?」

『んニャ!?』

 ラードーンとの決闘である。

 なお、何処かからか聞こえてきたGMの声は無視する。


「え?師匠?ラードーンってヘスペリデスの管理用ホムンクルスなんじゃ……」

「そーですよー。私ー戦闘能力なんてー」

「安心しろ。それなりの戦闘能力は持ち合わせているからな。まあ、ラードーン以下の強さじゃ俺の横にはならべないって事だな」

「「「……」」」

 実際の所ラードーンの戦闘能力はそこまでではない。

 だが、リアフ・ラードーンとして戦わせるのであれば?

 その戦闘能力は並どころか最前線組と比べても遜色はないだろう。

 それだけの力は持たせてあるのだから。


「ふうん……」

「ふえぇ……」

「「「……」」」

 シュヴァリエの目に宴の場には相応しくない程に鋭い眼光が宿る。

 対するラードーンは突然の決闘相手としての指名に困惑しているようだった。


「師匠、今この場での決闘は?」

「周りに被害を与えないような形でなら許可する。宴会の肴にもなるだろうしな」

「ご、ご主人様ー!?」

 まあ、シュヴァリエ本人がやりたいと言うのであれば止める気はない。

 そしてラードーンについてもだ。


「ボソッ(本体から少しばかり魔力は貸してやる。だから、やれる範囲でやれ、リアフ・ラードーン)」

「ふええぇ……」

「ボソッ(あ、負けたら三日間おやつ抜きな)」

「全力で当たらせていただきます」

「それでいい」

 やる気を出させるのはそこまで難しくはない。

 そんなわけで、宴会の余興も兼ねてシュヴァリエとラードーンの決闘が始まる事となったのだった。

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