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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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613/621

613:113-3

本日は二話更新です。

こちらは二話目です。

【AIOライト 113日目 16:47 (2/6・晴れ) 創門街・タイバン-ヘスペリデス】


「んあ?」

 目を覚ますと昼食の時間どころか夕方だった。

 どうやらネクタールとフィズィの相乗効果ですっかり寝入ってしまったらしい。

 いや、それだけでなく『黒錠の迷宮-初級』の攻略から今日まで、完全に気を抜いて寝られる状況がこの分体に無かったのも原因の一つか。

 いずれにしても、まずやるべきは状況の把握である。


「んー……グランギニョルたちはもう入って来ているな」

 と言うわけで本体及びゲームのシステムの利用による現状把握である。

 まず、グランギニョルたち南回りルートのプレイヤーたちが、昼過ぎからチラホラと3人から6人程度のPTで入って来たらしい。

 グランギニョルからはシアとネクタールの許可を貰って、誰それをヘスペリデスに入れて貰ったと言うメッセージが入っているな。


「ローエンたちは……丁度来たところか」

 で、ローエンたち北回りルートのプレイヤーたちも丁度到着したようだった。

 こっちはフルアライアンスを少し上回る人数での到着だな。

 この人数をまとめ上げて、タイバンに辿り着く辺りは、流石は『菫青石の踏破者』のギルマスと言う所か。


「んー、とりあえず玄関前に行くか」

 プレイヤー及びホムンクルスについてはこれで把握完了。

 当然ながら『緋色の狩人(バルバロイ)』のギルドメンバーは居ない。

 まあ、昨日の一件は『緋色の狩人』にとってギルド生命を賭けるに相応しい一手だったろうし、それならば全員参加が当たり前。

 タイバンの登録で自分たちの安全を確保した上で内外から同時に攻めると言う手だったのだろう。

 それが俺の手によって失敗した現状なのだから、この場に居ないのは当然だろう。


「おっ、ゾッタ。悪いな。勝手に上り込んじまって」

「別に構わない。シアとネクタールの許可が下りているなら問題なしだ」

 屋敷の玄関前に行くと、そこでは何時ぞやのようにプレイヤーとホムンクルスたちが協力して宴会の準備をしていた。

 どうやら今晩はそう言う流れになるらしい。


「モグモグ、こっちも悪いな。トロヘル。一時間昼寝するくらいのつもりだったんだが、完全に寝入ってた」

「みたいだな。まあ、そう言う日がお前にも必要ってのは、こっちとしてはむしろ安心する話ではあるな」

「モギュ?」

「そうだとも」

 俺はシアが軽食として作ってくれたと思しきテキオンの黄実を使ったパイを食べつつ、トロヘルと会話をする。

 昼寝をし過ぎたら、何故か安心されてしまったが。

 あ、うん、てか、このパイ美味いな、今までのとは比べ物にならない。

 もしかしなくてもシアが自分の携帯錬金炉で作ったか?


「道中はどうだった?」

「そうだな……」

「ゾッタ。その話、俺も混ぜてもらっていいか?北回りは北回りで話があるからな」

「ローエンか。お疲れ様。そうだな、折角だから聞かせてくれ」

 さて、夕食までの繋ぎを食べたのなら、情報収集くらいはしておくか。

 と言うわけで、俺、トロヘル、ローエンの三人でここ数日何があったのかの話をする。


「南回りについてだが……」

 まずはトロヘルの話。

 南回りのルートについてはソロ気質、あるいは1PT単位での行動をしたいプレイヤーが多い事に加えて、南東の森の性質上アライアンス規模での行動が難しかったと言う事もあり、それぞれのペースで移動することになったらしい。

 その結果として、一部のプレイヤーはワンダリングモンスターに各個撃破されてしまったが、グランギニョルを筆頭に、シュヴァリエ、ロラ助、トロヘル、ブルカノさんと言った主要メンバーは無事にタイバンに到着した。

 新規情報の類は……


「南東の森の遺跡?」

「ああ、樹木に覆われる形でだが、遺跡のような物が幾つかあった。何かがありそうな感じではあったが……流石に砂漠をもう一度超える羽目になるのは御免だったからな。調査はしていない」

「なるほど」

 ドウの地・南東の森、あの熱帯雨林に遺跡が隠されていたと言う情報がそうだろう。

 どうやら、あそこにはまだ何かがあるらしい。


「遺跡か。北東の高原では特にそう言うのは無かったが……そう言えば井戸だけは時折見かけたな」

「井戸だけ?」

「ああ、家屋の跡のような物は無かった。妙だと思ったから覚えてはいたんだが、もしかしたら何か有るのかもな」

「ほー……」

「へー……」

 そして北回りルートの一つ、北東の高原にも謎の類はあるらしい。

 うん、少し気になるな。

 ビを探した後に探ってみてもいいのかもしれない。

 なお、今朝まで連絡が取れた何人かのメンバーが音信不通になったとの事だが……ローエンの表情からして普通にモンスターにやられたか、PKとしての本性を表そうとして誰かにやられたかと考えているようだった。

 勿論、俺は素知らぬ顔をして流すが。


「ゾッタの方はどうなんだ?」

「生放送されていたみたいだから、だいたいの情報は把握しているだろうが……」

 最後に俺からの情報だが……まあ、大した情報はない。

 『黒錠の迷宮-初級』の攻略風景は動画館や錬金術師(アルケミスト)ギルドの各支部で放送されていたしな。


「で、ボスと言うか第五階層についてだが……あー、出来れば事前情報なしで挑んでほしいところだな」

「特殊なボスなのか?」

「まあ、特殊と言えば特殊だな。それ以上に事前に情報を与えて、認識に歪みを与えたくないと言うのもあるが」

「また、随分な物言いだな」

 そして第五階層については喋らない。

 あそこのボスを倒した事で得られるメッセージは多くのプレイヤーにとっては分水嶺になる場所だ。

 あのメッセージを聞いて、何か思う所があると言うのであれば……そのプレイヤーはこちら側に来る可能性が高いと言う事であり、それは同時に賢者の石を作り出す可能性が高いと言う事だからだ。


「ま、お前がそう言うなら、深くは問わねえよ。俺の情報じゃ宿代になっているかも怪しいしな」

「そうだな、プレイヤーなら自分の目で確かめればいいだけの話だ」

「ん、助かる」

 トロヘルもローエンもどうやら俺の言葉に納得してくれたらしい。

 これ以上、『黒錠の迷宮-初級』について聞く気はないようだった。


「さてと。それじゃあボチボチ、タイバン到達記念の宴会も始まるだろうし、音頭は頼むぞ。ゾッタ」

「そうだな、よろしく頼む」

「ん?俺なのか?」

「そりゃあそうだろ。ヘスペリデスの主なんだし」

「はぁ、むしろお前以外に誰がいるというんだ?」

「……」

 そうして何故か俺は宴会の始まりを告げる乾杯の音頭を取ることになり、日暮れと共に宴会は始まった。

11/25誤字訂正

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