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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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611/621

611:113-1

【AIOライト 113日目 07:12 (2/6・晴れ) 始まりの街・ヒタイ-ヘスペリデス】


「マスター、今日はどうするんですか?」

 ブーンが消滅した翌朝。

 いつも通りに俺はヘスペリデスでシアが作ってくれた朝食のヘスペリデス産果実パイを楽しんでいた。


「今日か……」

 で、今日の予定だが……


「とりあえず朝食が終わったらタイバンに移動。あそこの錬金術師(アルケミスト)ギルドに誰の目にも見える形でネクタールを置いておくつもりではあるな」

「ギニョールたちが着くんですか?」

「ああ、何事もなければ、グランギニョルたちもローエンたちも昼ごろか夕方にはタイバンに着くらしい。別に待つ義理も歓待する義務もないんだが……まあ、風呂と部屋ぐらいは貸してもいいと思ってな」

「なるほど」

 とりあえず朝やる事は確定している。

 必要以上の事をする気はないが、グランギニョルたちの長旅の疲れを労うのは今後の為にも必要な手助けだろう。

 そしてシアとネクタール、それにラードーンも俺のこの行動には賛成であるらしく、明らかに喜んでいる。


「それで、それ以外だと……一つ作るアイテムがあるからな。今日はそっちの作成にかかりきりになるつもりだ。あ、ラードーン、折角だからシアにも例のテキオンの白汁のレシピを渡しておいてくれ。アレは料理にも使えるだろうからな」

「分かりましたー」

「それじゃあ、今日も半分くらいは休みな感じですね」

「そうなるな。ま、二日くらい休んだって罰は当たらないさ」

 そうして朝のお茶を飲み干した俺はヒタイからタイバンへと移動。

 予定通りにネクタールの一部をテントの形にして錬金術師ギルド・タイバン支部に設置した。



----------



【AIOライト 113日目 08:35 (2/6・晴れ) 創門街・タイバン-ヘスペリデス】


「さて、出来の方は……っと」

 ネクタール設置後。

 俺は中庭のエヴァンゲーリオの花畑に埋めた『呑気な多頭蛇の王』の甕を掘り出し、その様子を確かめる。


「ふむ……」

 『呑気な多頭蛇の王』の甕に変化はない。

 だが中身である呪詛招くテキオンの白汁と呪詛招くテキオンの黒汁には明確な変化が生じていた。



△△△△△

呪詛招くテキオンの沌汁

レア度:3

種別:道具-食料

耐久度:100/100

特性:カース(傷つけたものを傷つけ返す)

   オトガ(自動的に攻撃を防ぐ)


テキオンの白汁と黒汁を混合した液体。

黒と白だけでなくありとあらゆる種類の色が混ざり合うと共に見て取れるこの液体は、悪い臭いとも良い匂いとも言い切れない奇妙な香りを放っている。

飲用あるいは塗布することで環境に対する耐性に著しい変化をもたらす事が出来る。

だが、これを飲みたいと思える人間は居ないだろう。

エヴァンゲーリオと『呑気な多頭蛇の王』の毒が微量ではあるが染み込んでいる。

▽▽▽▽▽



「うーむ……」

 甕の蓋を開けてみると、確かに微妙な匂いがする。

 上手く臭いの成分を分離できれば、色々と使えそうな気もするが……まあ、それは俺の仕事ではないな。

 なお、色については正しく混沌であるとしか言いようがない。


「味は……」

 で、二つの液体が混ざり合ったおかげで量は十分にあると言う事で、折角なので俺は少しだけ呪詛招くテキオンの沌汁を少しだけ舐めてみる。


「……」

 エヴァンゲーリオと『呑気な多頭蛇の王』の毒によるものだろうか、舌に乗せた瞬間に全身に痺れのような物が走る。

 続けて感じた味は美味くもあり不味くもある。

 甘味、塩味、酸味、辛味、苦味、渋味、旨味、表現のしようもない味、ありとあらゆる味が混沌とした状態で強弱をつけてランダムに襲い掛かってくる。

 そう、正に襲い掛かってくるのだ。

 一瞬確かに調和が取れて美味と感じる瞬間があるが、それ以外の瞬間は混沌以外の何ものでもなく、甘味ですらも途方もない規模で襲い掛かってくるのである。

 それこそ、俺でなければ意識を手放したくなるような強さで、エヴァンゲーリオと『呑気な多頭蛇の王』の毒を伴って。


「これは……普通に使うなら攻撃用アイテムだな」

 やがて俺は自分の意識を正常な状態に戻す事に成功する。

 HPバーとMPバーに異常は見られない。

 だが、状態異常は複数発生している。

 その内、テキオンの沌汁そのものの効果と思しき物は熱さ耐性下降と寒さ耐性下降、熱さ耐性上昇と寒さ耐性上昇だ。

 そしてこの四つのステータス異常は効果量が時間経過と共に激しく変動しているようで、今の俺は環境に対する耐性が著しく不安定になっているようだった。


「……。暫く待つしかないな」

 これから錬金しようとしている物の効果、そして錬金中に起きるであろう現象の事を考えたら、この環境耐性が不安定な状態で錬金するのは流石に危険すぎる。

 そう判断した俺は『呑気な多頭蛇の王』の甕を中身ごとインベントリに回収すると、ミデンが置かれている神殿に移動。

 神殿内で効果時間が切れるまで待つことにした。


「そう言えば、テキオンの白汁と黒汁についての情報を掲示板に流してなかったな。一応流しておくか」

 で、折角の待ち時間なので、俺はテキオンの白汁と黒汁についての情報を掲示板に書き込んだ。

 悪意を持って使う事も出来るアイテムだが……まあ、有効活用される事を祈るしかないな。

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