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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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610:112-7-X4

「すぅ……はぁ……」

 俺はカプノスを吸い、ゆっくりと煙を吐く。


「ずずっ……はぁ……」

 何処かからか現れたGMも缶コーヒーのような物に口を付け、口から湯気を吐く。


「「……」」

 俺とGMは視線を合せ、『リアフ・ネロ』の雨が振る中、ゆっくりと時間が過ぎるのをただ待つ。


「「ヤンデレって怖い」」

 そうして一分ほど経ったところで異口同音に呟いた。


「GM、一応確認だ。今回の件について精神干渉の類は一切していない。そうだな」

「勿論していません。『AIOライト』プレイヤーに対する精神干渉などしてしまっては、私の目的が果たせませんので」

「まあ、そうだろうな」

 さて、ブーン・フォ・エフィルは滅びた。

 と言う訳で、事後処理の時間であり、まずはその為の現状と原因の把握である。


「ゾッタ、私からも確認です。今回の件について貴方は因果干渉はしていない。そうですね」

「未来の俺、あるいは無意識のレベルでやっていないかと言われれば保証は出来ないが、少なくとも現時刻でやった覚えはないな」

「まあ、そうでしょうね」

 とりあえずブーンを滅ぼした女性に対して俺とGMがやった事はそう多くない。

 俺は処刑と言う状況が確定するまでの間のヘイトを集めた事の他は何もしていない。

 GMもブーンに掛けていた守護を規約通りに解除した以外だと、女性がブーンの病室に着くまでの間にその姿を見咎められないようにしたぐらいのものである。


「イリバシーレマ、俺の知覚している通りならヘスペリデスにあるんだよなぁ……」

「それは私も確認しています。ですが、彼女が振るったのもイリバシーレマですね」

「また時間が歪んでいるな。まあ、世界の外側を経由した時点で未来も過去もあったものじゃないんだが」

「それにブーンの件もミアゾーイの件の派生ですからねぇ。時空の乱れが起きやすいのかもしれません」

 俺と会話をしつつGMがブーンを滅ぼした女性に対して何かをする。

 どうやら女性がブーンの後追いで自殺をしたり、間違っても神格を得たりしないように処理をしているらしい。

 尤も、この処理そのものが奇妙な因果を結び付けてしまう事もあるため、GMは普段見せないような真剣な表情で、慎重に事を進めているようだが。


「ん?一般プレイヤーに対する記憶処理もするのか?」

「ええ、ブーンについては垢BANされてプレイヤーで無くなったと言う風にしておきます。元々半分バグのような存在でしたからね。事前に規定していたプログラム通りに事を進めるだけです」

「なるほど」

 女性の処理が終わったところでGMは次の処理に移る。

 今回の件を最後に姿を見せなくなるブーンについては垢BANされた事にして、『緋色の狩人(バルバロイ)』についてはサブマスの一人にギルマスをやらせるようだ。

 で、此処まではただの事務作業だが……どうやらブーンの垢BANに信憑性を持たせるために、『緋色の狩人』のギルドメンバー数人に対して、自分たちの目の前でブーンが垢BANされた記憶を植え付けるようだ。

 そう言う記憶を植え付ける辺り……うんまあ、その数人は芽無しだな。


「さて、これでこちらの処理は終わりですね。そちらの方はどうです?」

「心配しなくてもいい。ブーンの件が終わった時点で、『AIOライト』内に残っているミアゾーイ関連の物事は『百罰下す正義の刃』とミアゾーイの本体のみ。それ以外のエフィルについては、俺の本体が順次処理している」

 俺は煙に俺の本体が見ている映像を投影する。

 そこに映っているのは、本体が生み出した赤黒い炎で出来た分体にエフィルが突っ込んでは焼き滅ぼされていく光景。

 この光景自体はこれからもずっと続くだろうが……まあ、今の俺と普通のエフィルたちとでは存在規模が違い過ぎて、勝負になっていないな。


「それにしても、人間であっても条件さえ揃えば神でも滅ぼせるような武器を作ったのはいいですけど、それが貴方が想像していた以上の災禍を生み出すあたり、貴方という神がどういう存在なのかを良く表していますよねぇ」

「……。それでも必要な物には変わりないだろう。世の中にはアレが無ければいけない存在も数多く居る」

「ま、それはそうなんですけどね」

 イリバシーレマについては……ヘスペリデスにあるのはまだ静かだ、少し特殊な力を持っているだけでただの斧でしかない。

 ブーンを滅ぼした女性の手元にあった物は……もうどこかに消えたな、次の使い手を求めて世界を移動したか。

 うーん、ミアゾーイが『普通の人生』と言う概念に連なるものとするなら、イリバシーレマはいずれ『処刑』と言う概念に連なるものになる……いや、既にもうなっているのか。

 まあ、放置しておくしかないな。

 アレは終わりを望んだものの前にしか現れないからな。


「さて、一段落は付いた。そう言うわけだから、ここからは今まで以上に気ままに『AIOライト』をプレイさせてもらうとしよう」

「そうですか。では、人間の範囲内で楽しんでくださいね」

 そうしてやるべき事を終えた俺は転移でヒタイに戻り、そのままヘスペリデスで休むことにした。



■■■■■



【AIOライト 112日目 23:37 (半月・晴れ) ???】


「あー、あー、チェクチェク。マイクチェック。よし、問題なし」


「『AIOライト』開始から丸112日になります。では、現在の状況について口頭にて記録を行います」


「えー、ゾッタが少々厄介なレア度:PMを作成しました。後は垢BANが一件です。が、それぐらいですね。他に特記事項はありません」


「最前線組のタイバン到着は予定通り明日になりそうです。彼らが『黒錠の迷宮-初級』をクリアすれば、『AIOライト』全体が一気に活性化する可能性があるでしょう」


「では、今回の記録を終わります」

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― 新着の感想 ―
[一言] かみさまもヤンデレはこわい。ちぃ、おぼえたw
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