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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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605/621

605:112-2

本日は二話更新です。

こちらは一話目です。

【AIOライト 112日目 13:12 (半月・晴れ) 始まりの街・ヒタイ-ヘスペリデス】


「さて、次はこれだな」

 昼食後、ネクタールを身に着けた俺はミデンが置かれている神殿に来ていた。

 勿論錬金の為である。


「ネクタール」

「ーーー」

 と言うわけで、まずは宇宙のような光景を投影したネクタールを展開。

 神殿の内部と外を完全に分離すると共に空間を拡大する。

 その上で……


「では、此処からは俺の仕事だな」

 本体である俺が神殿の中へ転移してミデンに手をかざす。


「まずは精製だな」

『hoW 5oleo mAkesulk-2 naTtaca deHa koCOl0sitE tukuliaGeru YO=n1』

 俺は初めに昨日手に入れた『非存在性・』普通の魔銀鉱石をインゴット化。

 特性:リジェネと特性:インクリスを持つ『非存在性・』回復力溢れる魔銀の鋳塊にする。

 そして、この錬金から既にMPだけでなくHPと俺の存在がミデンに吸われていた。

 やはり、今回出来上がる品は普通の品にはならない……いや、もしかしたら通常の『AIOライト』プレイにおいては使ってはいけない武器になるかもしれないな。


「だが、それでもこれは作るべき品だ。そう言うわけだから、邪魔はするなよ。GM」

『心配しなくても邪魔はしませんのでご安心を。出来上がった後には取り扱いについての協議をさせてもらいますけどね』

「それは分かっている」

 準備する素材は三つ。

 『非存在性・』回復力溢れる魔銀の鋳塊、『狂戦士の多頭蛇の王』の亡骸、そしてセンスアラクネの糸玉だ。


「我は錬金術師ゾッタ。終わりの眷属が一柱」

 俺は言葉を紡ぎつつミデンに左腕を突き入れ、魔力を注ぎ込む。

 するとミデンの中の液体が外に溢れ出し、ミデンの上で沸騰した状態で直径数メートルはあるであろう巨大な球体を形成。

 そして、その中に俺は右手で三つの素材を掴んで投げ入れる。


「我は求める。細き細き蜘蛛の糸を。この世に非ざる終焉の炎にて鍛えられた銀と、終わりへも始まりへも向かう矛盾と言う名の狂気を秘めた多頭蛇の王の亡骸を以って」

 魔力の吸いこみが激しくなる。

 だが吸われるのは『AIOライト』の魔力ではなく、俺自身の魔力であり、その勢いは分体に持たせている程度の量では一瞬で枯渇するような量である。


「それは永劫と言う名の終わりに至ってしまったものへの蜘蛛の糸。終わらぬ地獄に垂らされるほんの僅かな希望」

 そして、吸いこむ魔力の量に比例するように液体は激しく沸騰……否、発光を始める。

 あまりにも膨大な熱量によって、極自然にその力の一部が光に変換してしまっている。


「だが我は救済者に非ず、故に救済だけを与えるつもりはない。覚悟無く永劫に至った愚行に対する報いが無ければならぬ」

 だから俺は今やグリスィナ・スィンバシの一部と化したレウ・フォ・エフィルの黒輪の力を発動。

 強烈な重力によって光と言う形でのエネルギーロスすらも許さずに、全てを球体の中へと収めていく。

 それに伴って、ほんの少しではあるが、レウ・フォ・エフィルの黒輪の表面が溶けだして、球体の中へと混ざっていく。


「報いとは痛み。魂を焼き焦がし、灰燼と化す痛みである。肉を蝕み、混沌へと還す痛みである。心を引き裂き、虚空へと至らせる痛みである」

 球体が少しずつその形を変えていく。


「だが、その痛みを以って我が刃は汝が全てを断つ。肉も、心も、魂も、因果も、概念も、法則も、皆々等しく断って安寧あるいは虚無と言う名の終わりへと導く」

 それは斧。

 だが、ただの斧ではない。


「認めよ。抗え。改めよ。貫け。従えよ。止まるな。静まれ。暴れろ。鎮まれ。荒ぶれ。調べ乱れ調和し混迷し形を成せ成すな」

 ギロチンの刃のような形の赤黒い刃に、突き刺し掲げるのによさそうな蛇の牙のような形の鉤爪、蛇の鱗のような模様が刻み込まれた両手で持てるだけの長い持ち手を持った、先端部に重心が大きく偏っている特別な行為にだけ用いられる斧である。


「顕現せよ。森羅万象の首を落とし、我が主が下へ誘うものよ。汝が名は……イリバシーレマ」

 そして俺がその名を告げた瞬間。

 周囲一帯は星が終わる時のような激しい光に一度包まれ、光が止んだ後には、赤黒い魔力を纏った一本の斧が俺の手の内にはあった。


「うん、無事に完成だな」

 完成した。

 俺はその事を認識すると、分体にイリバシーレマを持たせた上で本体は自室に戻り、ネクタールの展開も解除する。

 で、分体でまずはイリバシーレマの詳細を見てみる。



△△△△△

イリバシーレマ

レア度:PM

種別:武器-大斧

攻撃力:10

耐久度:100/100

特性:バーサーク(猛り狂う者に祝福を)

   リジェネ(回復力を強化する)

   センス(感知力を強化する)

   インクリス(他の特性を強化する)

   アンチ(特性の効果を反転させる)

   『ヌル(存在しないはずの物質)』


それはCommonではなくSoleである。

ギリシャ語で日没の意味を持った『一応』ミスリル製の斧。

武器であるが、その攻撃力は低く、装飾品的な意味合いが強い。

それでもなお使おうとするならば、迷いと慈悲を以って、それを望むものに対して振るわなければならない。

そして、振るった者はその迷いと慈悲故に一生悩む事になるだろう。

「これで良かったのか」と。

それでも良ければ、振り下ろすといい。

『終焉の眷属が一柱、ゾッタが作り出した神器。

その真の力は不老も不死も不滅も不朽も不変も等しく終わらせる。

とある概念存在の力を処刑斧と言う形で密封し、限定的に降臨させる鍵と捉えた方が正しいかもしれない。

なお、その性質上、扱える者は極限られる。』

※デスペナルティの対象にならない

▽▽▽▽▽



「……。うんまあ、俺には扱えないな」

『だろうニャー。あ、私も無理なのニャ』

「だろうな」

 詳細を見終える頃にはイリバシーレマはすっかりその見た目を変えて、薄汚れた極々普通の両手斧と言った風貌になっていた。

 まあ、俺に迷いはない以上、扱う資格も無いのは当然の事だろう。

 で、GMもその辺は俺と同じなので、当然である。

 ぶっちゃけ、人間専用に近いな。


「レベルアップは……無しか」

『ゲーム上の素材とシステムしか使ってなくて、殆ど外側の代物なので、経験値が入らないのは当然かと』

「そう言う物か」

『そう言うものです』

 で、レベルアップも無し、と。

 まあ、こちらについては仕方がないか。

 出来上がった品があまりにも特殊過ぎるからな。


『で、それは何処に置いておくので?』

「とりあえずはヘスペリデスの屋敷の玄関ホールにでも、俺に出来る最上位の封印を付けた上で飾っておく。出番が来るのは当分先になるからな」

『そうですか、では、私は先に失礼します。貴方が掛けた封印の上にする封印の準備がありますから』

 そうしてGMは去り、俺は玄関ホールの隅の方にイリバシーレマを飾った。

 俺の封印はただの膨大な魔力による殻だが、これで普通の人間が勝手に持ち出す事は出来ないだろう。

 そしてGMの封印は……うん、俺の認識だと凄いとしか分からないものだった。

 これならば、イリバシーレマが振られるべきその時まで、何処かへ勝手に行く事は無いだろう。

 逆に言えば、その時が来たら勝手に無くなっているわけだが……こればかりは、まあ、仕方がない。

 イリバシーレマはそう言うものだからな。


「さあて、夕食後には本日最後の作業だな」

 で、俺は夕食の為に食堂へと向かった。

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