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本日は二話更新です。
こちらは二話目です。
【AIOライト 112日目 07:45 (半月・晴れ) 始まりの街・ヒタイ-ヘスペリデス】
「ふうむ……」
翌朝、今日は一日休みにすると宣言をした上で、俺は適当な小部屋で昨夜の内にラードーンから受け取ったテキオンの混合果汁についての資料を読み込む。
で、その資料によればだ……
「製作にあたっては、日光が存在しない場所での作業が必須」
まず日光が厳禁。
テキオンの実自体は日光に当たっても問題ないそうだが、テキオンの果肉に触れている状態でテキオンの種が日光によって消失してしまうと、その時点でそのテキオンの実の果肉も果汁も駄目になってしまうらしい。
なので作業は屋内の密閉空間でやる事になる。
まあ、俺の場合にはグリスィナ・スィンバシに付いている特性:ナイトビュがあるので、問題にはならないだろう。
「特性の一致も必須」
次に用いるテキオンの橙実、青実、黄実に備わっている特性を一致させる必要もあり。
しかも一つの特性が合っていればいいのではなく、二つの特性が合っていなければいけないらしい。
つまり、特性:ハイドと特性:インクリスが備わったテキオンの橙実を使うのであれば、青実と黄実も特性:ハイドと特性:インクリスが備わったもの出なければいけないと言う事だ。
「でだ」
で、此処までは作業の前段階。
言ってしまえば、実験における注意事項のような物である。
「手順としては……まるで料理だな」
では具体的な手順はどうなるかと言えば……ぶっちゃけ、料理に近いと言うか料理そのものだ。
果皮を出来る限り薄く剥いたり、三種類の実の果汁を適切な分量と手順で混ぜたりするように書かれている。
ここまで資料が揃っていれば流石の俺でも出来るが……それでも、口を酸っぱくするように文末にはこう書かれている。
『ご主人様へ、アレンジの類は絶対にしないように。忠実に、誠実に、レシピを守ってください。黒汁の処分についても、データのデリートによるきちんとした廃棄をするようにお願いします』
「……。信用されて無いなぁ……」
何と言うか、ラードーンから俺に対する信用の無さがうかがえる文面である。
まあ、ラードーンの立場ならしょうがないか。
「ま、試しにやってみますか」
いずれにしてもラードーンはしっかりとやってくれた。
ならば俺もラードーンの働きに報いるようにしっかりとやるべきだろう。
と言うわけで、俺は特性:カースと特性:オトガを持った三種類のテキオンの果実を倉庫ボックスから取り出してくると、暗室で作業開始。
果皮を取り除き、種を取り除き、異なるボウルの中でそれぞれを潰して果汁を絞り出していく。
で、レシピ通りに、黄実の果汁に橙実の果汁と青実の果汁を一滴ずつ、交互に加えていく。
そうして、十分な分量になったそれを適当なボトルに移し……完成。
「よし出来たな」
俺は完成したそれの詳細を早速見てみる。
△△△△△
呪詛招くテキオンの白汁
レア度:3
種別:道具-食料
耐久度:100/100
特性:カース(傷つけたものを傷つけ返す)
オトガ(自動的に攻撃を防ぐ)
テキオンの果汁を適切に絞り出し、混合した液体。
薄く白付いた、爽やかな香りを伴うこの液体は、飲用あるいは塗布することで環境に対する耐性を大きく上げる事が出来る。
また、飲料としても非常に優れており、万人にとって飲みやすい味となっている。
▽▽▽▽▽
「うん、いい感じだな」
どうやら無事に出来上がったらしい。
物としても、繋がりとしても。
「さて、ついでだな」
で、呪詛招くテキオンの白汁を作ったところで、一つ錬金もしよう。
『46jIlu sacuS3i sAkuseSU oMedet0u de, mA-ta ozOttana koTowo 5iyouTo sit3ilu2A/』
「ふんふふーん」
使うのは今までなんだかんだで使って来なかった『呑気な多頭蛇の王』の骨とシンパシィリビングメイルの破片。
携帯錬金炉もミデンではなく普通のものである。
そうして出来上がったのがこれである。
△△△△△
『呑気な多頭蛇の王』の甕
レア度:3
種別:道具-容器
容量:2(液体状の物限定)
耐久度:100/100
特性:レイシュア(行動がとても遅い)
シンパシィ(仲間をいたわり、傷つけない)
『呑気な多頭蛇の王』の骨とシンパシィリビングメイルの破片を組み合わせて作られた球形の甕かめ。
金属と骨を組み合わせることで、異様な軽さと耐久度を併せ持っているが、少しづつ『呑気な多頭蛇の王』の毒が中の液体を汚染してしまう可能性がある。
大量の液体を入れる事が出来るが、入れた液体は混ざり合ってしまうので注意が必要。
容器の中に入っている物は容器含めて一つの物として扱われる。
なお、種別:容器のアイテムは錬金レベル/10(小数点以下切り上げ)の個数しか持てない。
▽▽▽▽▽
「さて、これにだ」
で、そうして出来上がった『呑気な多頭蛇の王』の甕に……今作ったばかりの呪詛招くテキオンの白汁と以前作った呪詛招くテキオンの黒汁を同時に投入。
全て注ぎ込んだところで蓋をして、厳重に密閉、絶対に匂いが漏れないようにする。
「これで明日まで……そうだな。中庭のエヴァンゲーリオの花畑の一つの中にでも埋めておくか」
俺は念のために開封禁止、移動禁止、接触禁止などの注意事項を甕の表面に記した上で、『呑気な多頭蛇の王』の甕を中庭に埋める。
これで明日取り出すまでの間に、二つの液体は自然に混合される事だろう。
「これでよし」
そして、埋めた場所を明日の朝まで侵入禁止エリアに設定。
万が一を億が一にしておく。
「さーて、もう二つほど作業をしないとな」
そうして午前中の作業を終えた俺は、昼食を済ませた後に午後の作業に移る事にした。
11/18誤字訂正




