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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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601:111-7-A5

【AIOライト 111日目 15:37 (4/6・晴れ) 始まりの街・ヒタイ-ヘスペリデス】


「すぅ……はぁ……」

 ヘスペリデスの一角、森の中に出来た花畑でシアは深呼吸をしていた。

 そんなシアの前に置かれているのは六つのアイテム。

 今朝作った特性:マジックの携帯錬金炉。

 普通のガンカ湖の水と『精神力溢れる蝶の王』の翅を錬金して作った、精神力溢れるガンカ湖の水。

 普通の白い潮の花と『抗魔力溢れる苔の王』の雫を錬金して作った、抗魔力溢れる白い潮の花。

 普通の赤い沼の泥と『魔法力溢れる花の王』の花弁を錬金して作った、魔法力溢れる赤い沼の泥。

 今日手に入れたばかりの『撃魔力溢れる孔雀の王』の尾羽。

 そして、シアの武器であるアナスタシア。


「よしっ」

 シアは携帯錬金炉を使って、まずは普通に錬金を進めていく。

 抗魔力溢れる白い潮の花と魔法力溢れる赤い沼の泥を錬金して、特性:レジストと特性:マジックを持った抗魔力溢れる空の器を作る。

 続けて精神力溢れるガンカ湖の水と『撃魔力溢れる孔雀の王』の尾羽を錬金して、特性:ハートと特性:ジェネレを持った撃魔力溢れる刻の雫を作る。


「始めよう」

 そうして必要な素材が揃ったところでシアは携帯錬金炉の中に抗魔力溢れる空の器、撃魔力溢れる刻の雫、アナスタシアの三つを入れ、掌から携帯錬金炉の中に向けて魔力を流し込み始める。


「私は迷っている」

 携帯錬金炉の中の液体がゆっくりと泡立ち始めると共に、渦を巻き始める。


「私は今まで強い人たちしか知らなかった。マスター、グランギニョル、シュヴァリエ、ロラ助、ローエン、番茶さん、ジャックさん、トロヘルさん、ボンピュクスさん、ソフィアさん、リュドミラ……向いている先は違えども、皆とても強い人で、輝いている人だった」

 泡は少しずつ白くなっていき、渦の流れに沿う形で泡を携帯錬金炉の外へと少しずつ吹き出ていく。


「けれど、世界に居る人は強い人だけではなかった」

 そうして吹き出た泡は少しずつ色を変えていく。


「力は無くても、強き人たちと比べて弱くても、仲間と力を合わせて、勇気を以って、強き心を持つ蝶の王に立ち向かって見せた人たちが居た」

 青い泡、紫色の泡、水色の泡……


「日々を生きるために自分にやれることをやり、人々を支える礎として生き、私でも人として扱って、魔の力に抗う苔の王の住処でも、私の働きに対する報いを誠実に与えてくれる人たちが居た」

 黄色の泡、黄緑の泡、緑の泡……


「己に力が無いと知っていて、失礼と分かっていても私の力を頼る事を選び、それでもなお、自分たちの弱さを隠して、虚勢であっても、恥をかいてでも、剣を構えて魔の力に溢れた花の王の前へと進もうとした人たちが居た」

 赤い泡、橙色の泡、赤紫の泡……


「戦う力が無くても、創る力を以って私たちを支え、己の業を磨き上げる事で強き魔の力を放てる孔雀の王の亡骸を十全に生かしてみせた人たちが居た」

 白い泡、金色の泡、銀色の泡……


「そして……私に手を出してくる事は無かったけれど、関わり合いになる事もなかったけれど、誰かを害する事で己を磨き上げようとする人たちもきっと居た」

 そして黒い泡。

 13の色に分かれた泡が吹き出て、渦を巻き、弾けていく。

 弾けた泡は更に細かい粒となり、携帯錬金炉の上で像を作り上げ始めていく。


「きっと私が知らないだけで、もっと沢山の人が居るのだろう。色んな人が居るだろう。だからこそ私は迷ってしまう。私は人になるための歩を進めるためなのか、それともこのまま、人造人間(ホムンクルス)であるべきなのかと」

 泡が集まって出来上がった像は杖の形をしていた。

 その見た目はアナスタシアと言う名前の杖とさほど変わらず、白と金を主体とした色合いの装飾らしい装飾のない杖だった。


「けれど、この悩みこそがもう私が歩を進めている証なのだろう。そして人である証明なのだろう。だって人造人間は迷わない。主人の言葉に忠実に従うだけだから」

 だが、内包している力は明らかにそれまでのアナスタシアとは一線を画すものであり、それはそのまま主であるアンブロシアの成長を表しているかのようだった。


「繋がりが出来て、歩みを始めたのであれば、きっと立ち止まっているように見えても進み続けている。だから私はせめて自分の意思で足を進めようと思う。そして、その旅路を貴方に助けて欲しい」

 シアは新しい杖に向けて手を伸ばす。


「行きましょう。デフテリ・フォラ・アナスタシア」

 そしてシアがデフテリ・フォラ・アナスタシアと名付けた杖を手に取った瞬間。

 周囲があらゆる種類の光に満ち溢れ、その光の中でシアはデフテリ・フォラ・アナスタシアの先を天に向けた。



△△△△△

デフテリ・フォラ・アナスタシア

レア度:Ex

種別:武器-杖

攻撃力:?

耐久度:100/100

特性:リジェネ(回復力を強化する)

   レジスト(抗魔力を強化する)

   マジック(魔法力を強化する)

   ハート(精神力を強化する)

   ジェネレ(撃魔力を強化する)


それはCommonではなくSoleであり、Extraでもある。

ホムンクルス、アンブロシアが作成した金と白の二色で彩られた簡素な見た目の杖。

所有者の成長に応じてその力を増す性質を有する。

携帯錬金炉・還元炉としての能力を有している。

以下の起動文を発声することで、MP消費と引き換えに魔法を発動する。

『ブート』『リジェネ』『レジスト』『マジック』『ハート』『ジェネレ』『ジ・イゲーティス・プロスクリスィ』『アルケミッククリエイト』

※デスペナルティの対象にならない

※入手者以外の所持不可能

▽▽▽▽▽



「さて、と。まずはマスターに訊かないと。どうして私たちを置いて行ったのですかって」

 そしてシアはデフテリ・フォラ・アナスタシアを持って、ヘスペリデスの入り口に向かった。

 周囲に様々な色合いの花弁と光を舞わせながら。

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