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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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589/621

589:110-6-S26

【AIOライト 110日目 09:52 (5/6・晴れ) BL1・『狂戦士の火山の城』】


「ヒュドラ!」

「ビュドラ!」

「ふんっ!」

 『狂戦士の多頭蛇の王』が攻撃を仕掛けてくる。

 それも正面からだけではない。

 右からも左からも、上からも後ろからもだ。

 そして攻撃の方法も単純に噛みついて来るだけではなく、首を叩きつけてこようとしたり、紫色の炎を浴びせかけようとしたり、先程などは近くの壁を砕いて弾き飛ばすと言う真似までしてきた。


「ギドラッ!」

「ガドラッ!」

「ぬんっ!せいっ!」

 だが、問題なのは攻撃の種類の多さではなく、その頻度。

 当たり前と言えば当たり前なのだが、二本の腕と『ドーステの魔眼』、それに幾つかの遠距離攻撃手段しか持たない俺と七つの頭を持つ『狂戦士の多頭蛇の王』では手数に圧倒的な差があった。


「「「スゥ……ビュドラアアアァァァ!!」」」

「それは喰らうか!」

 だから俺は防御を主体に立ち回らざるを得なかった。

 首が直接攻撃して来ればそれを弾いて防ぎ、炎を放つなどの遠距離攻撃を放とうとすれば、『ドーステの魔眼』で暴発させるか、今のように『狂戦士の多頭蛇の王』の他の首の陰に隠れる事でやり過ごす。

 そして、立ち位置の調整として行う移動のついでに武器を振るい、僅かばかりのダメージを与えると言う手段を採っていた。


「ヒュドラアァァ!」

「ビュドラアァァ!」

「ジャドラアアァァ!!」

「ぐっ……」

 当然、そんな戦い方をしていれば時間はかかる。

 『狂戦士の多頭蛇の王』に特性:アンチを付与してから既に30分近いはずだが、まだ『狂戦士の多頭蛇の王』のHPはどの首も90%近い量を残している。

 『リアフ・ネロ』の効果もあって『狂戦士の多頭蛇の王』の自然回復が止まっているからそれでも問題はないが……この分だと倒すまでには最低でも数時間はかかる事だろう。


「上等だ……『エクナック・アネモス』」

「バドラッ!?」

「ズンドラアアァァ!」

 だが他に『狂戦士の多頭蛇の王』を倒す手段はない。

 だから俺は牽制を織り交ぜ、ダメージを受けるペースを少しでも遅くしつつ、反撃を行って少しずつ少しずつ『狂戦士の多頭蛇の王』のHPバーを削り取っていく。

 噛み付いて来ようとすれば短剣で逸らし、首で薙ぎ払おうとすれば斧で叩き上げ、毒炎を隠れてやり過ごし、その他の攻撃の類もその都度とっさの判断で対処をしていく。


「残りHP42%……撤退!」

「ヒュゴッ!?」

「ビュドッ!?」

 そして、こちらのHPが危うくなったと判断したならば、どれほどの好機が目の前にあるように見えても退く。

 『エクナック・アネモス』、『ドーステの魔眼』、リジェネミスリルクリス、ハイドカメレオンマントを使って『狂戦士の多頭蛇の王』たちの追撃を阻止しつつ安全圏まで退いていく。

 それからリジェネメディパウダーと『リアフ・ネロ』による回復力向上を合せる事でHPバーを回復し、『リアフ・ネロ』を張り直し、もう一度消費したHPバーを回復した上で再度突撃する。


「「「ビュウウゥゥゥドラアアァァァ!」」」

 そんな俺の戦い方は『狂戦士の多頭蛇の王』にとってはウザったい事この上ないのだろう。

 一度撤退して再び攻撃を仕掛ける度に大きな咆哮を上げ、特性:バーサークのオーラを漲らせ、毒炎をこれでもかと吐きかけてくる。

 だが、問題はない。

 むしろ都合が良いくらいだった。


「『エンボリオ・エテル』……ふんっ!」

「ジャガッ!?」

 俺は『エンボリオ・エテル』を発動した上で毒炎に突っ込んでいく。

 『エンボリオ・エテル』によって現れた橙色の障壁は、『リアフ・ネロ』と毒炎によって当然出現と同時に弾け飛ぶ。

 だが、この弾け飛ぶエフェクトが出ている間は状態異常防御の効果が続く。

 だから俺はその間に『狂戦士の多頭蛇の王』の懐に潜り込み、頭の一つを斧で殴りつける。


「せいっ!『エクナック・アネモス』!」

「「「!?」」」

 そして『ドーステの魔眼』に『エクナック・アネモス』と言った遠距離攻撃手段で他の頭も攻撃して毒炎を止め、そのまま先程までと同じように懐での防戦を開始する。


「ヒュドラ!」

「ビュドラ!」

「バドラアアァァ!」

 すぐさま『狂戦士の多頭蛇の王』の首たちも懐に入った俺に反応して攻撃を仕掛け始める。


「ギドラアアァ!」

「ガドラ!」

「ジャバラッ!」

「ズンドコッ!」

 決して気を抜いていい相手ではない。

 特性:アンチによってステータスが弱体化してもなお『狂戦士の多頭蛇の王』の攻撃は速く、重く、隙が無い。

 防御も堅く、『リアフ・ネロ』によるものを除けば状態異常も碌に入らず、地道に削り続けるしかない。


「文字通りの耐久戦。どちらが先に折れるか……いや、リソースが底を突くかだな」

 そして、そうやって長く戦い続ければ、どれほど効率よく的確に用いようとも、いやでも物資は消耗していく。

 現に俺の斧と短剣の耐久度は、普段よりも遥かに速いペースで消耗が進み、既に93/100に到達している。

 後半に攻撃が激化する事と今のダメージペースを考えると、何処かで一度無理やりにでも装備の修復を行わなければいけないだろう。


「だが、これ以外に手段はない!」

「「「ヒュドラアアアァァァァ!!」」」

 『狂戦士の多頭蛇の王』のHPバーは一番減っている首でもまだ最大値の80%ほど残っている。

 戦いは……まだまだ続くようだった。

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