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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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586:110-3-S23

本日は二話更新です。

こちらは二話目になります。

【AIOライト 110日目 08:15 (5/6・霧) BL1・『狂戦士の火山の城』】


「「「ブジュルルル……」」」

 『リアフ・ネロ』によって生じた赤黒い霧はとにかく濃かった、それこそメニュー画面の天候表記が晴れから霧に変更されるほどに。

 だがそれも当然の事だろう。

 『狂戦士の火山の城』は閉鎖空間で霧が流れていくスペースが限られているのだから。

 降った雨が溶岩に触れて即座に蒸発して、霧に変化しているのだから。


「さて……」

 そして、そんな普通では有り得ないような濃さの霧によって俺と『狂戦士の多頭蛇の王』の視界は完全に塞がれていて、お互いに気配から相手が近くに居る事は分かっていても目視する事は出来ない状態になっていた。

 加えて、溶岩の熱を帯びた事によって、現在『リアフ・ネロ』の霧の温度は俺の体温と同じか少々高いぐらいになっている。

 これならば、『狂戦士の多頭蛇の王』が現実の蛇と同じように温度を感知する器官を持っていたとしても俺の位置を探る事は出来ないだろう。

 対する俺はと言えば……


「一応は見えるな」

 様々な繋がりを見ることによって、やや無理矢理ではあるが『狂戦士の多頭蛇の王』の位置と挙動は把握できている。

 空間の繋がり、電子の繋がり、敵意の繋がりに、物質間の繋がり……もう本当に色々だ。

 正直なところ、普段は周囲への注意が疎かになるからやらないレベルで繋がりを見ているので、立ち回りを考えないと溶岩の海に飛び込みかねないくらいである。


「「「ビュドラアアアアァァァァ……」」」

 で、『リアフ・ネロ』には回復力を高めると共に状態異常:ポイズンと状態異常:リーカジを付与する効果があるのだが……。

 うん、状態異常:ポイズンも状態異常:リーカジもまったく意味を成していないな。

 『狂戦士の多頭蛇の王』のHPバーは微動だにしていない。

 まあ、ヒュドラ種と言うのは元々回復力に優れたモンスターであり、『狂戦士の多頭蛇の王』はそのボス個体、おまけに特性:バーサークによる強化も入っているのだ。

 ならば、この結果は当然だろうし、今はまだ情報収集の段階だからそれで問題はない。


「では……ふんっ!」

「ビュガッ!?」

 俺は霧に紛れて周囲を窺う『狂戦士の多頭蛇の王』に近づくと、右手の斧で首の一本を切りつける。

 特性:バーサークによる強化しか乗っていない一撃ではあるが、それでも七本ある内の一本のHPバーを2%程減らし、状態異常:ポイズンを与える事に成功する。


「げっ」

 直後、俺は思わず苦い声を上げることになる。

 七つの首全てが俺に対して強い敵意を向けているからではない。

 『狂戦士の多頭蛇の王』の首の一本に与えた僅かばかりのダメージと状態異常:ポイズンが文字通りの一瞬で回復したからである。


「「「ビュドラアアァァァ」」」

「逃げだな」

 『狂戦士の多頭蛇の王』が動き出す。

 七つある首の内、俺から遠いものは紫色の炎を吐き出し、俺に近いものは直接噛みついて来ようとする。

 対する俺は霧に紛れる形で逃走。

 『狂戦士の多頭蛇の王』の攻撃から逃れる。


「「「ビュウウゥゥドオオオラアアアァァァァァ!?」」」

「マジか……」

 そして逃げつつも、周囲にあるもの全てを焼き払う形で暴れ狂い、他の首に対するF(フレンドリー)F(ファイヤ)を発生させている『狂戦士の多頭蛇の王』のHPバーを見て、思わず半ば呆れたような声を出してしまった。


「アレで実質的なダメージが無いのか……」

 確かにFFは発生していた。

 『狂戦士の多頭蛇の王』のHPバーは首ごとのものも本体のものもそれなりに減りはしていたし、状態異常も発生していた。

 だが、HPバーは減った直後に全回復し、状態異常は即座に治っていた。

 周囲が紫色の炎に包みこまれ、仮に『狂戦士の多頭蛇の王』以外がその場に居れば即座に致命的な量のダメージを受けて死ぬような状況でだ。


「アレはもうヒュドラ種のボス個体である事と特性:バーサークによる強化だけじゃ説明が付かないな」

 俺は『狂戦士の多頭蛇の王』から少しでも離れるようにダンジョンの中を駆けつつ、今見た物を頭の中で思い出し、どうすればああなるのかを考える。

 勿論、その計算の中には『リアフ・ネロ』による回復力の強化も入れた。

 だが、結論は有り得ないとしかならなかった。

 それだけでは、あそこまでの異常な回復力の説明が付かなかった。


「残るはレベルアップに伴う能力追加で何か有ったか……いや、たぶんだけど違うな」

 レベルアップに伴う能力追加は……何かが違う気がする。

 能力とは己の意思で行使するものだ。

 本能でもってそう言う力を使っている可能性は否定できないが、あの狂乱っぷりを見る限りでは自動で発動している力だろう。

 となれば……非常に嫌な想像になるが、一つ思いつかなくはない。


「特性:バーサークだけじゃなくて、特性:リジェネも入っている。そう考えるのが妥当なのかもな……」

 そう、『黒錠の門衛』が俺の装備を元に『狂戦士の多頭蛇の王』を生み出したと言うのであれば、あの異常な回復力になる原因に一つだけ心当たりがある。

 俺のほぼ全ての装備には特性:バーサークに加えて、特性:リジェネが入っている。

 もしも『黒錠の門衛』が召喚するモンスターが二つの特性を有すると言う特殊な性質を有するのであれば……その二特性を持ったヒュドラのボス個体と言う規格外以外の何ものでもないモンスターが召喚されてもおかしくはないのかもしれない。

 そして、これが事実であるとするならば倒す方法は……


「一つ……いや、二つあるか。いずれにしてもマトモに戦って倒す相手ではないな」

 ごく限られた方法しかなかった。

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