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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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578/621

578:109-7-S16

本日は二話更新です。こちらは一話目です。

【AIOライト 109日目 12:26 (満月・晴れ) BL1・『石化招く凍土の農場』】


「とりあえず、対策をゆっくり考える為にも移動だな」

 俺は周囲を一通り見渡し、一番近くにありそうな建物に向けて歩き始める。


「……。まあ、地吹雪でそうなるなら当然か」

 そして歩き始めると同時に、俺は雪を踏みしめ、掻き分ける脚に違和感を感じる。

 寒さを感じる部分が斑になっていると言う違和感を。


「状態異常:ペトロ……一般的な名称で言うならば石化……か」

 原因は明白だった。

 雪を掻き分ける脚の一部が防具も皮膚もまとめて石に変化して、その部分から与えられるはずの皮膚感覚が喪失している為だ。

 それと同時に俺は自分の視界の左上、HPバーなどが表示されている部分を見る。

 するとそこには状態異常:ペトロを表すためのマーカーと同時に、小さな数字のような物が数値を激しく乱高下する形で表示されていた。

 この表示からして、どうやら状態異常:ペトロには一発で完全に石化してしまうパターンと、今俺がなっているように少しずつ石化していくパターンが存在しているらしい。


「まあ、俺の回復力ならある程度は耐えられるか」

 まあ、数字が乱高下している事からして、徐々に石化する場合には自然回復で治せるようであるし、それならば俺の場合は回復力で無理矢理どうにか出来るだろう。

 問題は一気に全身が石化してしまった場合だが……流石に全身が石化したら自然回復は望めないだろうな。

 呼吸一つ出来なくなってしまうわけであるし、外からや自動回復装備のような物で状態異常:ペトロが治せるのでなければ死に戻りするしかないだろう。


「と、『エンボリオ・エテル』」

 と、ここで再び突風からの地吹雪が起きる。

 その為に俺は『エンボリオ・エテル』を発動。

 橙色の三角錐の障壁を出現させ、直後に障壁は地吹雪によって砕け散る。

 全身が包み込まれる地吹雪をそのまま受けた場合には……まあ、俺が懸念している通りになるだろうな。


「しかしモンスターを見かけないな……」

 地吹雪を凌いだ俺は建物に近づいていく。

 そして、近づいたことで気づく。

 灰色なだけで丸太小屋だろうと思っていた建物が、実は丸太小屋が石化したものであったと言う事実に。

 扉までもが石化しているために、建物の中に入るには扉を叩き割る必要があると言う事に。


「ふんっ」

 そうして、扉を斧で叩き割って建物の中に入った俺は見ることになる。


「……。まさかとは思うが回復力が足りないと単純な冷気だけでも石化が進行するのか?」

 室内で座った状態のまま石の彫像と化しているペトロバンディットとペトロウォーリアたちの姿を。


「とりあえず砕いて詰めておくか」

 俺は石化した像たちを砕き、それを扉の部分に集める事で、外で地吹雪が起きても室内に雪が流れ込まないようにする。


「さて……考えないとな」

 一応一息を吐ける状態になった。

 そう判断した俺は部屋の片隅で座り込むと、特性:バーサークによる強化は維持したまま、この階層について改めて考える。


「まず、この第四階層の自動生成ダンジョンの名称は『石化招く凍土の農場』。特性は特性:ペトロ」

 窓も石化しているため、室内から外の様子を探る方法はない。


「状態異常:ペトロは徐々に進行するものと完全に完成した物が有る」

 だが地吹雪が起きたならば、風の音でそれを察する事は出来るだろう。


「進行中の物は回復力を高めれば対抗できる。一発で完全に完成させてくる物は、『エンボリオ・エテル』で防げばいい。状態異常:ペトロを与えてくるのは、雪とその雪から放たれている冷気」

 モンスターの気配はない。

 農場マップなら確実に居るはずのワーム種すら見掛けない。


「つまり、力技に近いものになるが、探索そのものは可能である」

 恐らくだが、この階層に問題なく居れるモンスターは状態異常:ペトロに対して完全な耐性を有している、または極めて高い回復力を有している、あるいは石化する肉体を持たないモンスター……ゴーレム種、オーヴ種、ゴースト種と言った極一部のモンスターだけなのだろう。

 そして、それ以外のモンスターは全て石化して、石の彫像になってしまうのだろう。


「はぁ……なんてダンジョンだ。本当にレア度:3か?レア度:4と言われても納得するぞ」

 もはや難易度が高いと言うレベルではない。

 普通のプレイヤーでは階層移動直後に石化して死に戻りしてしまうだろう。

 そして現地調達で対策アイテムを作ろうにも、自然に石化してしまったモンスターからは剥ぎ取りは行えないし、採取ポイントも見当たらない。

 何と言うか、あのGMにしては珍しくクリアさせる気があるのか疑わしいレベルの自動生成ダンジョンである。


「ん?」

 と、此処で俺は自分に向けられる敵意に気づく。

 どうやら何かがこちらに近づいてきているらしい。


「何が来る?」

 武器を構え、壁から離れた俺の前に、壁を通り抜ける形で一体のモンスターが現れる。

 そいつは……


「ぬううぅぅええぇぇああぁぁ……」

「ペトロスィンク……Lv.37?」

 輪郭部分にだけ薄い靄がかかり、他には瞳が一つあるだけのモンスター、スィンク種。

 だがそのレベルはレア度:3の自動生成ダンジョンでは決してありえない数字だった。

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