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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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577/621

577:109-6-S15

本日は二話更新です。

こちらは二話目です。

「……」

 さて、『リアフ・ネロ』を撃ったのは正解だった。

 あの巨体と回復力では確実にダメージの方が上回るし、霧によって魔眼を遮る事も出来る可能性が高いからだ。

 だが……


「ガンジャアアアァァァ!!」

「この暴れっぷりは想定外だったな」

 今、銀色プリンは痛みに耐えかねるように激しく暴れまわっていた。

 銀色プリンの下に隠されていた三本の鉤爪付きの脚を激しく伸び縮みさせながら周囲を薙ぎ払い、牙が生え揃った口を鞭のように振り回し、銀色プリンの体表を激しく動き回る六つの眼からは魔力がビームのように放たれて照射された場所を爆破している。


「ガアアアァァァンジャアアアアァァァ!!」

「とっ、おっ、あぶなっ……」

 その勢いは凄まじく、迷宮の壁を何枚も壊し、銀色プリンを中心として半径3メートルほどの空間では、踏み入ったもの全てが破壊されるような状況になっている。

 そのために俺も防戦一方であり、脚を躱し、牙をいなし、視線を防ぎで、とてもではないが攻撃に移れるような状況ではなかった。


「……。何時までも暴れさせているわけにはいかないな」

 自動生成ダンジョンの耐久度は問題ない。

 自動生成ダンジョンの崩落など、水晶マップでもなければ狙って起こせるような物ではないからだ。

 だが、戦闘が長引けばそれだけ消耗が進むし、敵も寄ってくる。

 HPとMPは『リアフ・ネロ』の影響もあって問題ないが、装備品の耐久度の回復には制限がある。

 そもそもとして『黒錠の迷宮-初級』はまだまだ続くのだ。

 こんなところで時間を無駄にしていい道理など無い。


「少し積極的に出るか」

「ガンジャアアアァァァ!」

 俺は一瞬の隙を縫って一歩だけ前に出る。

 そして横から俺に向かって飛んでくる銀色プリンの脚を……


「『レウ・ギィ』……ふんっ!」

「ガギャッ!?」

 アンチデュラハンハンマーで下から掬い上げるように撃ち抜いて、大きく撥ね上げ、多大な隙を生み出す。

 だが、その代償としてアンチデュラハンハンマーは砕け散り、使えなくなってしまう。

 しかし、これで十分な隙が出来た。

 だから俺は銀色プリンに更に近づき……


「追加だ!」

「ガンジャアァァ!?」

 素早く武器を斧と短剣に持ち替えて連撃。

 銀色プリンの内側に入り込み、三本の脚が一本になっている部分……キノコで言うなら軸とでもいうべき場所を狙って切りつける。

 すると、『リアフ・ネロ』の中でも減りが鈍かった銀色プリンのHPバーが目に見えて減っていく。


「ガンジャアアァァ!」

「『エンボリオ・エテル』」

 銀色プリンが自身の内側に目を移動させて魔力を飛ばしてくる。

 だが、それよりも早く俺の『エンボリオ・エテル』が発動し、受けるのはダメージだけとなる。

 これならば、攻めきる事が出来るだろう。

 そう判断した俺は攻撃のペースを速める。


「トドメ!」

「ガン……ジャ……」

 そして内側に入り込んで何度目かの攻撃で銀色プリンのHPバーは底を突き、まるでキノコがしおれるように横に倒れた。


「ふぅ、何とかなったな」

 俺は素早く剥ぎ取りを行うと、周囲の状況を確認。

 敵が居ない事を確認すると、階段の前にまで移動する。

 そしてそこでも安全を確かめると、剥ぎ取ったアイテムの内容を確かめる。



△△△△△

『アンチ?』の眼球

レア度:3

種別:素材

耐久度:100/100

特性:アンチ(特性の効果を反転させる)


未識別状態のため、詳細は不明。

▽▽▽▽▽



「目玉……か」

 手に入ったのは『アンチ?』の眼球。

 インベントリから取り出してみると、銀色プリンの体表に付いていた六つの眼の内の一つのようで、銀色プリンの巨体に合せるように俺の手と頭の中間ぐらいの大きさがあった。

 繋がりは……なんだろうな、普段とは少々違う感じで見えている。

 まあいいか。


「で、持ち帰れれば持ち帰るぐらいの気持ちで居るべきだな」

 銀色プリンの正式名称を知るためにも、出来れば持ち帰ってみたいアイテムではあるが……どうやら、持ち帰れるとは限らないようだ。

 それだけの気配が階段の先……次の階層からはしてしまっている。


「……」

 気合を入れてかからなければいけない。

 俺は内心でそう思いつつ、階段を上がった。



----------



【AIOライト 109日目 12:25 (満月・晴れ) BL1・『???』】


「……」

 階段を上がってまず感じたのは強烈な風だった。

 だがそれはただの風ではない。

 猛烈な寒波を伴う風だった。

 そのため、俺の吐く息は白くなり、皮膚は確かな寒さを感じた。


「さて、厄介なのが来たな」

 ではなぜ、そんな風が吹くのか。

 それはこの場が見渡す限りの雪原であり、風を遮るような物が極僅かな量だけ存在している家屋と針葉樹ぐらいしかないからである。

 そう、ここは凍土の農場だった。

 だが、凍土の農場であるだけならば、ただ面倒なだけで厄介では無かった。

 厄介と俺が言った理由は……


「ああ、本当に厄介だ。この上なく厄介だ」

 今俺の目の前で地吹雪が起こり、それに俺が飲まれると同時に俺の周囲に現れた橙色の障壁が砕け散り、続けて俺が居る場所より少し後ろにあった一本の針葉樹の表面が石に変化、そのまま砕けて倒れてしまったからだった。


「『石化招く凍土の農場』……か。間違ってもソロで挑むようなダンジョンではないだろうな」

 そう、『黒錠の迷宮-初級』第四階層の構造は『石化招く凍土の農場』。

 地吹雪一つで浴びた者全てに状態異常:ペトロ……石化を与えてくる階層だった。

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