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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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572:109-1-S10

【AIOライト 109日目 03:27 (満月・晴れ) BL1・『?湿地の迷宮』】


 前日。

 俺は眠る時にハイドカメレオンマントの効果を使うだけでなく、通路の端でうずくまるようにしていた。

 また、寝床として選んだ通路にしても、行き止まりを選んで警戒する方向を一方向に絞ればいいようにするだけでなく、泥が溜まって通路1マスを覆い尽くしている場所を通らなければ、俺の居る場所に来れないようになっていた。

 だが、その日の朝、まだ日も登らない頃に俺は目覚めた。


「ーーー!」

 そして意識が状況を理解するよりも早く、本能で回避行動を取っており、その直後には俺の回避が正しい事を示すように、俺が眠っていた場所に轟音と共に稲妻が突き刺さった。


「……。朝は白焼きか」

「イイィィルウウゥゥ」

「ウナアアァァ」

「ヤッツメェェ」

 俺は襲ってきた相手の姿を確認する。

 そこに居たのは『?イール』Lv.31、Lv.32、Lv.35が三体。

 その姿は空を飛ぶ電気を纏った巨大な鰻と言う所で、長さは3メートルを超えているか。

 うんまあ、これなら泥の床があっても音を立てずに来られるか。

 何故バレたかは……後で考えるとしよう。


「イルゥ!」

「ヤッツメェ!」

「ふんっ!」

 二体の『?イール』が牙の生えた口を大きく開き、蛇か何かのように突っ込んでくる。

 なので俺も斧と短剣を持って、迎撃をしようとする。

 だがしかし。


「イルァッ!」

「ヤッツァ!」

「ぐっ……!?」

 確かに『?イール』の胴体を捉えたはずの俺の斧と短剣は『?イール』の表面を覆う粘液によって滑り、二体の『?イール』はほぼ無傷で俺の迎撃をすり抜け、俺の身体に噛みついてくる。


「ウナアアギイイィィ!」

「!?」

 そこへ待機していた三体目の電撃が直撃。

 俺のHPバーを一気に15%近く削ってくる。

 おまけにそう言う能力を持っているのか、FFは発生せず、俺に噛みついている『?イール』のHPバーに変化は見られない。


「舐めるな!『エクナック・アネモス』!」

 俺は噛み付いて来た『?イール』を振り払うと、電撃を放ってきた『?イール』に向けて『エクナック・アネモス』を放つ。


「ウナー」

「これも逸らすのか!?」

 だが、俺の左手から放たれた赤黒い風の弾丸は『?イール』の身体に当たると、『?イール』を激しく回転させることは出来ても、傷つける事は出来なかった。

 どうやら外からの衝撃には徹底的に強い粘液を持っているらしい。


「……。これが効かないなら逃げだな」

 正直な所ここまで物理攻撃に強いモンスターがパンプキン種やゴースト種以外に居るとは思わなかったと言うのが本音である。

 いやまあ、掲示板で見かけた限りでは、イール種は倒すのが面倒くさい相手と確かに評価されていたが、まさかここまでとはな……もしかしなくてもレベルアップで粘液の性能が上がっているのかもな。

 いずれにしても、物理攻撃も『エクナック・アネモス』も通らないなら、俺に残された手段はそう多くはない。

 だから俺は有効な可能性のある手段を採る。


「『リアフ・ネロ』」

「「「!?」」」

 俺の左手から赤黒い霧が辺り一帯に立ち込め、更に屋内である事も無視して同色の雨が降り出す。


「……」

「イ、イル……」

「ウ、ウナ……」

「ヤ、ヤツ……」

 『?イール』は水棲系のモンスターであるため、雨によるダメージは受けない。

 だが、『リアフ・ネロ』の雨と霧には状態異常:ポイズンと状態異常:リーカジが含まれており、霧の中に居るだけでHPとMPが減っていくようになっている。

 『リアフ・ネロ』には回復力を高める効果もあるが、そちらは俺のように元の回復力に優れた存在でなければ大した意味はない程度の効果である。

 つまり、後は『?イール』の回復力次第だが……


「どうやら、ダメージを抑えきれる程ではないらしいな」

 『?イール』たちは少しずつダメージを受けている。

 どうやら状態異常:ポイズンの方が強力であるらしい。


「そしてこちらの姿も追いきれないと」

「イルァ!?」

「「!?」」

 そして『リアフ・ネロ』の霧によって『?イール』はこちらの姿を見失っていた。

 なので俺は『ドーステの魔眼』で一瞬動きを止めた上で、粘膜が存在しない『?イール』の口内に向けて攻撃、大ダメージにはならないが、ある程度以上のダメージは与える。

 うん、これならいけそうだな。


「さて、白焼きだな……『エファス・フォティア』」

「「「!?」」」

 『リアフ・ネロ』で消費したHPとMPは既に回復している。

 なので俺は『エファス・フォティア』を発動し、斧に炎を纏う。

 そうして……


「朝食が楽しみだ」

「イ、イルアアァァ!?」

 俺は一匹ずつ霧の中で『?イール』を捌いていき、戦闘終了後の剥ぎ取りで『?イール』の肉2つを入手し、『?イール』の血を1つ入手したが破棄された。



----------



【AIOライト 109日目 06:02 (満月・晴れ) BL1・『?湿地の迷宮』】


「……微妙だな」

 戦闘終了後。

 俺は朝までもう一度眠り、朝になったら『?イール』から剥ぎ取れた『?イール』の肉で『?イール』の白焼きを作った。

 だが、俺の腕が悪かったせいなのか、それとも素材が良くないせいなのかは分からないが、焼き上がった『?イール』の白焼きの味は……正直微妙だった。


「さて、視聴者も付き始めたようだし、今日の探索を始めるか」

 なお、『?イール』に俺が見つかった理由だが……何故か俺が寝ていたあたりの苔などが枯れ落ちていて、俺の姿が非常に目立つようになっていたためだった。

 うん、微妙に納得がいかない自然経過による変化である。

 GMに文句を言っても修正をする気などないだろうが。

 そして俺は内心で愚痴を言いつつも、『?湿地の迷宮』の探索を始めた。

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