表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

569/621

569:108-8-S8

本日は二話更新になります。

こちらは一話目です。

【AIOライト 108日目 18:12 (5/6・晴れ) BL1・『沈黙招く水晶の庭園』】


「ようやくか」

 日も落ちた頃。

 俺はようやく水晶の庭園の中に在って白磁で出来ている階段を見つけた。

 グリスィナ・スィンバシに特性:ナイトビュが付いているので、日が落ちてからも行動に支障をきたす事は無かったが、何時ダンジョンの耐久度が底を突いて崩壊するかと心の底ではハラハラさせられていたので、そのハラハラからようやく解放されると思うとかなり嬉しくはある。


「さて行くか」

 そう言うわけで、この先にどのようなマップが待っているにしても、此処よりはマシで、幾らかは安心して眠る事が出来ると考えた俺は階段を上った。



----------



【AIOライト 108日目 18:14 (5/6・晴れ) BL1・『???』】


「……」

 『黒錠の迷宮-初級』第三階層。

 階層を移動した俺がまず出された場所は幅が2メートルほど、高さが5メートルほどの通路だった。


「少し妙だな」

 通路自体は綺麗に均されている。

 壁も平らで、天井も同様であり、非常に人工的な構造になっている。

 扉は見当たらないが、通路は複雑に枝分かれしているようだった。


「ふむ……」

 俺は軽く壁を叩いてみる。

 すると、音の反響からしてこの階層の壁はかなり薄く、それ専用の道具を持ってくれば、壊せそうだと感じた。

 勿論、ダンジョンの耐久値は減らさずにだ。


「薄目の壁、複雑に枝分かれした構造、そして部屋と呼べるような構造が恐らく存在しない事」

 一応、この構造には心当たりはある。

 先日のメンテナンスで庭園と一緒に追加された自動生成ダンジョンの構造だ。

 そして、整然とした構造に追加されるよう見られるのは、綺麗に2メートル四方の範囲だけ沼地になっている床、一部の壁に沿って流れる濁流の滝、苔むした壁、天井から垂れるガマの穂、肌にまとわりつくような湿度の高さ。

 となれば、このダンジョンの名前についての想像は付く。


「湿地の迷宮……と言う所か」

 そう、ここは通路しか存在しない自動生成ダンジョン、湿地の迷宮である。


「さて困ったな」

 で、ダンジョンの名称が分かったところで、問題が幾つかある。

 一つは今晩の寝床。

 何時突然のダンジョン崩壊に巻き込まれてもおかしくない第二階層『沈黙招く水晶の庭園』で眠るのに比べたら天国のような環境ではあるが、それでも湿地の迷宮はあまり眠るのに適した構造ではないだろう。

 湿度や沼地の問題ではなく、安全圏の確保が難しいと言う理由でもって。

 なお、寝ないと言う選択肢はない。

 本体はともかく、分体であるこの身体は寝ないと不具合を起こすようになっているからだ。


「イイイィィィ……」

 一つは階段の探索。

 迷宮マップはサイズそのものは比較的控えめではあるが、通路がその名前通りに迷路状に、そして複雑に入り組んでいる為に、階段を見つけ出すのが非常に難しい。

 俺ならば次の階層への繋がりを見る事である程度の範囲は絞り込めるが……範囲を絞り込んでもそこへ真っ直ぐに行きつけるとは限らないのが迷宮マップの恐ろしい点である。

 右手法と呼ばれる迷路の解法もあるが……あれは必ず上手くいくとは限らなかったりするからな。

 やはり厳しくはある。


「カアアアァァァ……」

 一つは敵。

 此処は自動生成ダンジョンなので、当然モンスターが存在する。

 迷宮マップは道の幅が狭いので、挟み撃ちを除けば複数の敵に囲まれる危険性は低いが、逆に敵に見つからずに切り抜けると言うのが非常に難しい。

 そして俺は既に一体の敵に見つかってしまっていた。


「完全未識別が来たか……」

 敵の名前は『??』Lv.34。

 その姿は一言で言ってしまえば巨大なイカ。

 頭部と思われがちな胴体は天井スレスレまで伸びていて、通路の横幅もほぼ全て使っている。

 10本ある足は特に長い2本が振り上げられ、残りの8本は狭い通路の床や壁で狭そうにしている。

 俺の頭ほどありそうな漏斗の穴と瞳の片方はこちらに向けられ、しっかりと狙いを付けられている。

 イカか、イカのモンスターかぁ……。


「さて何が……っと」

「イカアアァァ!」

 巨大イカがこちらに向けて吸盤の付いた腕を勢いよく突き出してくる。

 なので俺はそれを短剣で防御し、弾き飛ばす。


「状態異常はなし……と」

 特性:ワクチンは反応しなかったので、どうやらこの階層の特性は状態異常系統ではないらしい。

 威力の方もきちんと防御すれば俺の最大HPの5%を削るかどうかで大したことは無いようであるし、攻撃力を上昇させる様な特性ではないようだ。

 また、イカと言うイメージから想像できる手触りと実際の手触りに大した差がない事からして、そちら方面の特性も除外できるだろう。

 夜目が利いているのは……イカだし、初見だし、特性の影響かどうかは分からないな。


「名前は……やっぱりクラーケンか」

「イッカアアァァ!」

 なお、種族はクラーケンでいいらしい。

 俺が他にイカの怪物を思いつかなかったと言うのもあるだろうが、クラーケンだろうなぁ、と心の中で思っただけで、名称が『?クラーケン』に変わった。


「イカアアァァ!」

「とりあえず、イカ焼きにするか。『エファス・フォティア』」

 とりあえずこれで最低限の情報は集まった。

 後は戦いながら情報を集めるしかないだろう。

 と言うわけで、俺は斧に炎を纏わせると、『?クラーケン』を迎え撃った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ