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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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561/621

561:107-3

本日は二話更新です。

こちらは二話目です。

【AIOライト 107日目 13:15 (4/6・雨) 創門街・タイバン-ヘスペリデス】


「テキオンが?」

「はいー、出来ましたー」

 昼食後。

 テキオンの実が採れるようになったと言う事で、俺はラードーンの案内でサイロに向かった。


「これがそうなのか?」

「はい、そうでーす」

 そうしてサイロに置かれたボックスの中に収められたそれを見たのだが……少々興味深い事になっていた。



△△△△△

狂戦士のテキオンの橙実

レア度:3

種別:素材

耐久度:100/100

特性:バーサーク(猛り狂う者に祝福を)

   ハイド(認識しづらく、人目に付かない)


テキオンと呼ばれる特殊な樹に実る橙色の果実。

食べると一時的に寒さに対する耐性を得る事が出来る。

ただし味はよくない。

▽▽▽▽▽


△△△△△

呪詛招くテキオンの青実

レア度:3

種別:素材

耐久度:100/100

特性:カース(傷つけたものを傷つけ返す)

   アブソーブ(力を奪い己の血肉とする)


テキオンと呼ばれる特殊な樹に実る青色の果実。

食べると一時的に暑さに対する耐性を得る事が出来る。

ただし味はよくない。

▽▽▽▽▽



「ふむ」

 橙実と青実については問題ない。

 ヘスペリデス産と言う事で、特性が付いているが、それ以外は囲いの山脈で見たものとまるで変わらないからだ。

 これならば、寒さ対策、暑さ対策として使えるだろう。

 なお、ある意味予想通りと言えば予想通りなのだが、温水を与えて育てたテキオンの樹は成長が早いだけでなく、見事に橙実だけを付けていた。

 そして、それと対を為すように、冷水を与えて育てたテキオンの樹は成長が遅いだけでなく、青実だけを付けるようになっていた。

 此処から考えて、テキオンの樹は与える水の温度によって、付ける実を変える性質を有していると考えていいだろう。


「そうして常温の水で育てていた樹からは、これが採れたわけか」

「そーなりますねー」

 では、常温の水で育てたら?

 俺が興味深いと思ったのは、このパターンで出来た実だった。



△△△△△

誘引するテキオンの黄実

レア度:3

種別:素材

耐久度:100/100

特性:デコイ(人目を惹き、目立ちやすい)

   アブソーブ(力を奪い己の血肉とする)


テキオンと呼ばれる特殊な樹に実る黄色の果実。

とても美味であると同時に、様々な食材と合わせる事が出来るが、それ以外には特別な作用の類は一切持っていない。

▽▽▽▽▽



「ふむ……美味いな」

 俺は青実と橙実の中間のような形状……雫型とでも言うべき形をした黄色い果実を齧ってみる。

 すると口の中にとても心地の良い味が広がり、俺の腹が大きく満たされるのを感じる。


「……」

「……。ラードーンも食べてみるか?」

「はいー!」

 ラードーンにも食べさせてみるが……うん、表情だけで美味しいと感じているのは分かるな。


「しかしなるほどな。水温によって出来上がる果実の形状と色、味と効果が変わる樹。それがテキオンの正体だったわけか。こうなると、囲いの山脈に在ったあの果樹園も本来は黄実を作るためのものだったのかもな……」

 そしてテキオンのこの性質から察するに、あの場には河から引き込まれていた冷水とは別に温水も存在していた事になるが……まあたぶん、そう言う事なんだろうな。

 繋がりが見えない程に温度差が存在する水流、それが深層の水の正体の一端なんだろう。


「さて、こうなると少し試したくなるな。ラードーン、液体を入れられる容器はあるか?出来ればボウル系のがいい」

「調理場に行けば勿論ありますよー」

 まあ、それはそれとしてだ。

 俺は倉庫ボックスの中から三種類の果実を一つずつ取り出すと、調理場に移動。

 そこでラードーンにボウルを用意してもらう。


「ご主人様ー、一体何を……」

 で、ボウルの中によく洗った三つの果実を放り込むと右手を乗せ……


「『レウ・ギィ』」

「!?」

 『レウ・ギィ』によって体重を増加させた上で三つの果実をまとめて圧搾していき、果汁を絞り出していく。

 するとボウルの中に三つの果実からそれぞれに液体が流れ出し、光に触れて果実内の種が消え、最終的には絞りカスになった果実と何故か黒色になった液体がボウルの中に溜まる。


「あー、うん、やっちゃったな」

 で、その液体の詳細を見た俺は直ぐに目的の物が出来なかった事を悟った。



△△△△△

呪詛招くテキオンの黒汁

レア度:3

種別:素材

耐久度:100/100

特性:カース(傷つけたものを傷つけ返す)

   オトガ(自動的に攻撃を防ぐ)


テキオンの果汁を適当に絞り出し、混合した液体。

黒く濁り、異臭を放ち、100人中99人が失敗作と断じるであろうこの液体は、飲用あるいは塗布することで、環境に対する耐性を大きく下げる事が出来る力を持つ。

▽▽▽▽▽



「ご、ご主人様ー!そ、それを早く捨ててください!」

「いや、これはこれで使い道がありそうだから、適当な密閉容器の準備を頼む」

「た、頼むってそんなー!?」

 ラードーンが自身の特性を無視して必死の訴えを俺にしているが、俺はそれを無視して適当な容器を持ってこさせ、それの中に呪詛招くテキオンの黒汁を投入し、密閉保存する。

 なお、テキオンの黒汁の臭いを俺が無視している方法だが、ここがヘスペリデス内であり、この身体が本体でない事を利用して、臭いの感覚を断っているからである。

 ラードーンの反応からして相当臭いようだしな、うん。


「それでー、ご主人様はー、何をー、しようとー、してたんですかー」

「いやー、この手のアイテムの定番として、三つ組み合わせたらどの環境にも適応できるようになるアイテムが出来るんじゃないかと思ってな。試してみたんだが、駄目だった」

「……」

 ラードーンは俺の事を恨めしそうに見ている。

 どうやら俺が臭いを無視している事に気付いたらしい。

 それから、試しであんなことをしないでほしいと言う感じの目もしているな。


「よし、ラードーン、折角だから、俺が『黒錠の迷宮』に挑んでいる間に、三つのアイテムを組み合わせて、全環境に適応できるようになるアイテムが作れないか試してみてくれ」

「!?」

「なに、大丈夫だ。それを作るのに錬金術は要らない。必要なのは地道な検証だけだ。俺の目はそう俺に教えてくれている」

「!!?」

 ラードーンが唖然とした様子を見せているが、まあ、問題はないな。

 ラードーンなら上手くやってくれると言う繋がりが、黒汁を作った今ならば見えているのだから。


「さて、後は調理場の脱臭をしておかないとな。シアに怒られる」

「……」

 勿論、俺が居らず、来る事も出来ない間、ラードーンに仕事をさぼらせないための命令でもあるのだが。


「大丈夫だラードーン、お前ならこうはならない」

「そーですねー。これだけは避けますねー……」

 そうしてGMの許可の下、俺の身体ごと作り直すと言う荒業で調理場の脱臭を行った俺は、夕食後には明日に備えて早目に眠るのだった。

10/21誤字訂正

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