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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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557/621

557:106-3

【AIOライト 106日目 19:57 (半月・晴れ) 創門街・タイバン】


「これはこれは、よく来れましたね。ここは錬金術師(アルケミスト)ギルド・タイバン支部です」

 塔の中に入った俺たちを出迎えたのは、向こう側が透けて見える豪勢なローブを着た男性。

 だが幽霊ではない。

 その証拠に足元には自動で掃除をしてくれそうな円形の機械が置かれており、そこから上に向かって光が出る事で男性の姿は作られていた。

 つまりは男性の部分はホログラムであり、本体は円形の機械の方である。


「しかし、このタイバン支部に人型の生物が入ってくるのは何十年ぶりでしょうかねぇ。ああ、施設については結界と転移ポータル以外は使えませんよ。クソッタレな事に私には出迎えを行うための姿を出す事と喋る機能は与えられていても、整備をするための手など与えられていませんから」

 俺はタイバン支部の中を見渡す。

 確かに置かれているのは傾きの無い天秤だけで、他には何も無いな。

 広さは……パイライトドームの入口ぐらいはあるか。

 まあ、これだけあれば、この場所で最も重要な物の利用含めて問題はないだろう。

 と言うわけで、とりあえず転移ポータルの登録を済ませておく。


「ふむ、ここのは来るだけではなく、行く事も出来るのか?」

「ヒタイやハナサキに戻る事が出来る、と言う事ですか?」

「そういう事だな」

「そりゃあそうでしょうとも!ここは転移ポータルと言う神秘が生まれた地ですよ!他のどの機能が使えなくなったとしても、転移ポータルだけは絶対に稼働させ続ける事が出来ますとも!ああ、嘆かわしい!そんな事も知らずにあなた方はこの地に来たと言うのですか!!」

 ホログラムがウザったいのは無視するとしてだ。

 どうやら、ここの転移ポータルはドウの地にある他の転移ポータルと違って完全版……ヒタイやハナサキに置かれているのと同等の物であるらしい。

 これで一部のプレイヤーが行っているように、ワザと死に戻りをしてヒタイに帰るなどと言う真似はしなくてもいいわけだ。


「さて、これで一安心だが……」

「マスター?」

 転移ポータルの登録を済ませた俺は、タイバン支部の奥、塔の中心に接する壁の方へと目をやる。


「おや、随分と目ざといですねぇ。流石はここに一番に乗り込んできた命知らずなだけはある」

「えーと、そこに何か有るんですか?マスター」

「ああ、ある。とびっきり厄介だが重要な物がな。少し目を凝らして……いや、魔力を見るつもりで見てみるといい」

 そこには部屋の装飾だと思えるように、複雑な文様が様々な色の絵の具で描かれている。


「魔力を……あっ!?」

 その紋様の中の幾つか……黒い絵の具で描かれた、ドアのような紋様から奇妙な魔力が漏れ出ていた。

 そして、俺の目にはそのドアのような文様はただの紋様ではなく、現実に何処かに繋がっている扉であるように見えた。


「行きたければ、どうぞお行きになってください。ま、行った錬金術師で無事に帰って来れた者など片手の指で数えられる程しか居りませんがな。いやー、今からどんな無様な姿を晒すのか楽しみで仕方がありませんなぁ」

 しかし……ホログラムがウザいな。

 どう考えてもこのホムンクルスの性格設定はミスってるだろ。

 いや、あるいはワザとか?ワザとプレイヤーをイラつかせるようにしているのか?

 うん、こうなったらコイツの言葉はシャットアウトしてしまおう。

 このダンジョンをクリアすれば転移ポータルに関する何かが手に入るのは想像がつくしな。


「とりあえず調べておくか」

「は、はい」

 俺は壁の紋様に近づくと、手を掲げてみる。

 するとウィンドウが表示される。


【『黒錠の迷宮-初級』 レア度:3 階層:5 残り時間:∞】

【注意:このダンジョンの各階層への移動は一方通行となっています】

【注意:このダンジョンにはプレイヤー一人でしか入れません】

【注意:このダンジョンの中ではホムンクルスを召喚する事は出来ません】

【注意:このダンジョンの中では携帯工房への移動は一日に一度しか行えません】

「「「……」」」

 これは……ヤバいな、うん。

 何がヤバいってホムンクルス禁止がヤバい。

 他の項目は別にどうでもいいが、ホムンクルス禁止が本格的にヤバい。

 こうして思わず何度も心の中でヤバいと言ってしまうと同時に、自分でそれにツッコミを入れてしまう程度には。


「えーと、マスターこれって……」

「とりあえず対策が必須だ。今の状態じゃどうしようもない」

 ネクタールが使えない時点で携帯工房への移動は出来なくなるので、他の注意事項はどうでもいい。

 だが、シアとネクタールの支援が無い状況と言うのは……少々真面目にどうするかを考える必要があるだろう。


「あのマスター、こっちのは……」

「そっちは無視しておけ。チャレンジダンジョンだ」

「あ、はい」

 なお、『黒錠の迷宮-初級』のすぐ近くには『黒錠の迷宮-中級』が置かれており、こちらは同じ注意で階層に準じたレア度とあり、その上で30階層まであるようだった。

 当然、チャレンジダンジョンである。

 そしてシアは気付いていなかったし、他のプレイヤーも当分気付かないだろうが……チャレンジダンジョンはもう一つある。

 『黒錠の迷宮-上級』と言う名前の、初期レア度:8かつ99階層まで有る、エンドコンテンツ以外の何ものでもないダンジョンが。


「とりあえず今日はもう飯を食って寝よう。いい時間だしな」

「そうですね。そうしましょうか」

「ーーー」

 そうして俺たちはヘスペリデスに移動して、休み始めた。



■■■■■



【AIOライト 106日目 23:42 (半月・晴れ) ???】


「あー、あー、チェクチェク。マイクチェック。よし、問題なし」


「『AIOライト』開始から丸106日になります。では、現在の状況について口頭にて記録を行います」


「創門街・タイバンに到達したプレイヤーが現れました。プレイヤー名は……まあ、ゾッタです。ま、はっきり言って彼は既に半ば以上こちら側の存在なので、彼が一番乗りである点については特に気にしなくていいでしょう」


「他のプレイヤーの創門街・タイバンへの到着は……今の進行スピードとこれからの進路から予測するに、早くても七日後、113日目と言う所でしょうか。その間にゾッタが『黒錠の迷宮』を攻略してしまう可能性はかなり高いですが、これについてもまあ、仕方がないで済ませてしまっていいでしょう。大切なのは私の精神衛生です」


「さて、他のメンバーの進行具合については……別段特に語るような事象は起きていませんね。『緋色の狩人(バルバロイ)』が少々活発的なぐらいでしょうか」


「では、今回の記録を終わります」

10/14誤字訂正

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