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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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556/621

556:106-2

【AIOライト 106日目 17:37 (半月・晴れ) ドウの地・東の湿地】


「マスター、あれは……」

「街、だろうな」

 堤防だったものの上に立った俺たちは西の方向に奇妙な造形物を見つけた。

 それは鉱山街・ケイカと同じように山と山の谷間を埋めるような城壁で東の湿地と隔てられているのだが、問題は城壁の上に見えているもの。

 距離があるためによくは分からないが、何千と言う長方形状の物体が、壁を超える高さを持つ塔を中心として渦を巻いているようであり、渦の一番外側にまで移動した物体はものすごいスピードで何処かに向かって飛んで行っているようだった。


「いったい何を飛ばしているんでしょうか……」

「さて、何だろうな?いずれにしてもこの距離なら、今日中に街に入った方が良さそうだ。飛ばすぞ」

「はい、マスター」

 俺は街に向かって移動を始める。

 街の位置はドウの地全体で見た場合、囲いの山脈を挟んでちょうどケイカの真反対にある。

 だが、ビと言う地名には位置的に合わない気がする。

 となれば、アレは未知の都市と言う事になるが……まあ、いずれにしても転移ポータル登録のためにも向かうべきだな。


「……」

「あの、マスター……」

 そうして移動している途中に日が暮れる。


「ニフテリザでしか視界を確保できていない私には灯りの外側はよく見えないんですけど、凄い重圧感のような物が……」

「ああ、しているな」

 だが問題はない。

 エヴァンゲーリオには特性:ナイトビュが含まれており、その効果は俺にも表れているのだから。

 ニフテリザの灯りについても、プレングローバグがよく飛んでいる東の湿地ならば目立つものでもない。

 しかし別の問題はある。

 それは街の上空にある長方形だ。

 シアはアレから威圧感のような物を感じ取っているようだが……それも当然の事だろう。


「シア、迂闊に周囲の物に触れるなよ」

「は、はい」

 俺は街の中にゆっくりと、身を隠したまま入る。

 そして見ることになる。


「っつ!?」

「どうやら、白磁の門そのものの出所はこの街らしい」

 街中を埋め尽くすだけでなく、地面の中から時計が針を進めるかのように一定の感覚で湧きだし続けている大量の白磁の門を。

 その白磁の門が複雑な軌道を描きつつ、少しずつ宙に昇っていき、やがて街の外からも見えていた渦の一部になって、最終的には何処かに飛んでいく光景を。


「街の名前は創門街・タイバン、だそうだ」

「創門街・タイバン……」

 俺たちが辿り着いた街の名前は創門街・タイバン。

 自動生成ダンジョンの入り口である白磁の門が生まれる場所だった。



----------



【AIOライト 106日目 19:22 (半月・晴れ) 創門街・タイバン】


「す、凄い街ですね……」

「そうだな。だが、此処まで来ると街と言うよりは工場と言った方が正しく思えて来るな」

 タイバンの中では白い直方体の建物が整然と立ち並び、その間をまるで壁のように白磁の門が規則正しく、けれど時折ルートを変えて移動していく光景が広がっていた。

 それこそ、工場で人の手を一切介さずに作られるような大量生産品のように。


「おっと、隠れるぞ」

「あ、はい」

「「「……」」」

 勿論、モンスターは徘徊している。

 プレンバンディットやプレンナイト、プレンネクロマンサーにプレンパペットと、人型のモンスターが隊列を組んで、一糸乱れぬ動きで行進と巡回をしている。


「行ったか」

「あの、マスター、此処にある白磁の門って……」

「いや、どうにも此処にあるのはガワの部分だけのようだ。少々特殊な力は持っているようだが、基本的にはただの扉だ」

「なるほど」

 だが、他の街と違う点もある。

 それは自動生成ダンジョンが無い事。

 此処にあるのは、自動生成ダンジョンの入り口である白磁の門だけで、どの門も自動生成ダンジョンには繋がっていない。

 どうやら、自動生成ダンジョンになるのは、街の中心にある塔から何処かへと飛んで行った後、恐らくは『AIOライト』の各地に出現してからであるらしい。

 そしてこうなってくると東の湿地の自動生成ダンジョンの多さも……まあ、ここで白磁の門が作られているのに加えて、ゲーム的な都合から納得できなくはないな。

 各地域に存在している白磁の門の数と言う意味で。


「それでマスター。この街の錬金術師(アルケミスト)ギルドは何処に?」

「ああ、それなんだが、どうにも街の中心、あの塔の根元にあるみたいだな」

「あの塔ですか……今日中に着けますかね?」

「……。まあ、どうにかしよう」

 なお、白磁の門たちはダンジョンには繋がってはいないが、プレイヤーの壁にはなっている。

 少し想像してみて欲しい。

 推定数百キログラムはあるであろう石の塊が目にも止まらぬと称せるようなスピードで動いている光景を。

 そして考えてみて欲しい。

 その石の塊が生物にぶつかったらどうなるのかを。


「「「……」」」

「完璧に目が合っているのに襲って来ませんね」

「まあ、あいつ等だって命は惜しいだろうしな……」

 そんなわけで、時折高速移動する白磁の門で出来た壁の向こうからモンスターたちの恨めしそうな視線を貰いつつも、俺たちは中央の塔の根本に向かって進んでいく。


「さて、此処がそうだな」

「ようやくですねー」

「ーーー……」

 そうして俺たちは中央の塔に辿り着くと、塔の根元に付けられた、豪勢な扉を開けて塔の中に入った。

10/21誤字訂正

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