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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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555/621

555:106-1

【AIOライト 106日目 10:12 (半月・霧) ドウの地・南東の森】


「綺麗な滝ですねー」

「だな」

 翌日。

 ドウの地・南東の森の北上を続けた俺たちは、岩の崖に作られた階段を上っていた。

 眼下には霧に包まれた南東の森があり、横に目をやれば数本の滝が南東の森に向けて轟音とともに流れ落ちている。

 それらの光景は中々に絶景と言ってもいいだろう。

 と言うわけで、俺はこの光景をスクショをして、周辺の地図と一緒に掲示板に上げておく。

 うん、実に素晴らしい光景であるし、こういうのが有れば俺たちの後を追い始めたらしいグランギニョルたちのモチベーションもきっと上がる事だろう。


「今更な話だが、南東の森の地形は盆地に近いのかもな」

「盆地ですか?」

「ああ、もしかしたら違うかもしれないが、だからこそ常に霧が発生するんじゃないかなと思ってな」

「なるほど」

 なお、眼下に広がる南東の森だが、今俺たちが見える範囲では何処までも白混じりの緑の絨毯が広がるだけであり、果ては見えないし、地形の変化も読み取れない。

 が、たぶんだが何処かでちょっとした丘ぐらいはあって、それを越えると海に出るのではないかなとは思う。

 どれぐらい行けばいいかは見当もつかないが。


「さて、直に崖の上だな」

「たぶん、別のマップですよね」

「ああ、そうなるはずだ」

 そうして話をしている間に俺たちは岩の階段を上り切り、新たなマップへとたどり着く。


「まあ、あの滝の数からそんな感じになるんじゃないかなとは思っていたがな……」

「こ、これは面倒そうですね……」

「ーーー……」

 新たなマップの名前はドウの地・東の湿地。

 そして俺たちの視界には滝へと続く川と、その川に繋がる池と沼地、それらの間を埋める森と草原が広がっていた。



----------



【AIOライト 106日目 11:17 (半月・晴れ) ドウの地・東の湿地】


「さて、行動開始だな」

「そうですね」

 さて、当然のことながらこんな水だらけのマップを無対策で歩くような真似はしない。

 そんなのはただの自殺行為である。

 と言うわけで、俺たちは一度ヘスペリデスに移動、少し早目のお昼を食べると共に、ギルドサポートを利用して倉庫ボックスから残っていた適水粉を持ってきたのだった。


「シア、ネクタール」

「はい、マスター」

「ーーーーー」

 俺はシアを背負い、ネクタールがシアの身体を固定。

 その状態で適水粉を使用し……


「エヴァンゲーリオ・ハルモニアー」

 エヴァンゲーリオ・ハルモニアーによって脚だけ変身する。


「じゃ、行くぞっ」

 そうして準備を整えた俺は東の湿地に向けて滑り出した。



----------



【AIOライト 106日目 14:52 (半月・晴れ) ドウの地・東の湿地】


「それにしても、気持ちのいい風が吹き抜けるマップですね」

「そうだな。南東の森とは大違いだ」

 移動開始から約4時間。

 俺たちは一切の戦闘をする事なく、爽やかな風を受けつつ東の湿地を駆け続けていた。

 だが、南の砂漠と違って無警戒にと言うわけにはいかなかった。


「プレングローバグも普段より元気そうに見えますね」

「実際、元気なのかもしれないぞ?蛍は綺麗な水を好むと聞いているしな」

 まず第一に、此処にもきちんとモンスターは出現する。

 プレングローバグは基本的にノンアクティブのモンスターなので気にする必要は薄いが、プレンサーペント、プレンクラブ、プレンスキュラ、プレンフィッシュなどにはきちんと気を付ける必要があるだろう。

 ちなみにワンダリングモンスターも一体は確認していて、プレンヒュドラLv.60の姿を見ている。

 当然ながら戦う気など全くない。

 どう考えてもワンダリングモンスターの中でもさらに一段上のモンスターだからだ。


「と、また、自動生成ダンジョンの門があるな」

「何だか妙に多いですよね。ダンジョンの入り口」

「そうだな、妙に多い」

 他にも注意することはある。

 この東の湿地だが、妙に自動生成ダンジョンの入り口である白磁の門が多いのだ。

 具体的な数字までは取っていないが、体感で2倍から3倍はあるのではないかと思う。


【ゾッタは『忘却招く黄金の城』を発見した】

「まあ、挑む気どころか触れる気もないがな」

「間違って入ったら死に戻り確定みたいなものですもんね」

 当然スルーだが。

 ちなみに忘却招くは特性:アムネジア……あのアイテムが使えなくなる状態異常:アムネジアを引き起こす特性であり、黄金の……と言うのはマップに存在するものの大半が金で出来ているそうだ。

 うん、嫌な予感しかしないな。

 そもそも大量の黄金が手に入っても使い道がない。


「おっと、今度は沼地か」

「見た目はどう見ても苔むした地面なのに……」

 地形も当然、注意するべき対象である。

 目に見えて分かる川や池、沼ぐらいならば特に問題はないのだが、中には草原にしか見えなかったり、きちんと木が生えていたりするのに、地面部分が異常に柔らかかったり、表面に苔のようなものが繁茂してそうだと分からなくなった沼地などがあるのだ。

 これらは当然、天然のトラップとして機能する。


「まあ、俺たちならそこまで気にするものでもないけどな」

 尤も、エヴァンゲーリオ・ハルモニアーで地面の上を滑っていく俺たちだと、沼地だと気付いた時点でネクタールと協力して跳躍すれば、だいたいの沼地は飛び越えてしまえるし、柔らかい程度ならばそのまま滑っていくだけなのだが。


「しかし、こうなるとやはり滑るべきは所々にある人工物らしき場所の上かもな」

「人工物と言われても私にはよく分からないですけどね」

「ーーー」

 注意と言うよりは気になる点もある。

 それは、このマップには途切れ途切れではあるが、木や石を使って作られた道路や堤防の類がみられるところか。

 それから南東の森との境目である崖に在った階段、アレも人工物だろう。

 普通に考えれば、過去にこのマップに住んでいた人間が作ったものなのだろうが……他のマップにはこの手の物はまるで見られなかったのに、このマップにだけそう言う物が有ると言うのは……少々不気味である。


「ま、こればかりは俺の目頼りだしな」

 そんな事を考えつつも、俺たちは先に進み続けた。

 そして、直に日が暮れると言う頃、俺の目はそれを捉えた。

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