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AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

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553/621

553:105-1

【AIOライト 105日目 08:00 (2/6・霧) ドウの地・南東の森】


 翌朝。

 準備を整えた俺たちはヘスペリデスの外に出る。


「今日も霧?」

「マスター?」

 そしてすぐに違和感を感じ取った。


「ああ悪い。とりあえず話は移動しながらにしよう」

「あ、はい。分かりました」

 まあ、それでもやるべき事は変わらないので、俺たちは今日の移動を始める。


「それでマスター。何があったんですか?」

「ちょっと天気について思う所があってな」

「天気……ですか?」

「ああ、今日は105日目。7の倍数の日であり、雨が降るはずの日だ」

 俺が違和感を覚えた事、それは今日の天候についてである。

 『AIOライト』では、開始からの日数が7の倍数あるいは7の付く日に雨が降ると言うルールになっており、両者が重なる日には通常よりも強い雨が降る。

 これはこれまでに覆された事がないルールである。


「雨は……確かに降っていないですけど、代わりに霧は出ていますよ?これも雨の一種ではないんですか?」

「いや、それなら、昨日の間に霧が出てはいけないし、霧が出るのが普通なら、今日は霧が普段以上に濃くなるか、逆になくなるかのどちらかだと思う」

 勿論、マップによっては雨が降らない事もある。

 だが、その場合でも、例えば砂漠のマップならば曇りに、雪原のマップなら雪に、と、それ相応の変化がみられる。

 だから、俺たちが今居る南東の森の基本天候を霧と捉えるならば、濃くなるか、薄くなるかの変化ぐらいは起きていないとおかしなことになるのである。


「となると……南東の森だけが特別なんでしょうか?」

「いや、掲示板でも情報は調べてみたが、どうやら、ドウの地の何処でも今日は雨が降っていないらしいな。この分だとトウの地でも同様だと思う」

「なるほど。南東の森に限った話ではないんですね」

 そして、この異常事態はどうやら他のマップでも起こっているようだった。

 雨が降らない事に大半のユーザーは喜んでいるようだったが……理由が分からないと不気味でしょうがないな。


「そうなると……もしかして下二桁でしか判断していないとかでしょうか」

「下二桁……あー、それは有り得そうだな……」

 シアが意見を出してくれる。

 その内容は……正解なら安心できる内容ではあるな。

 それが事実であるならば、105日目である今日は雨が降らず、代わりに107日目である明後日には7の倍数かつ7の付く日で大雨が降ると言う予測を立てる事も出来るのだから。


「うーん、この場合だとどっちの方が良いんでしょうね?」

「そうだなぁ。計算については下二桁だけの方が楽だとは思うし……ああそうか、全部合わせると700日目以降が問題になるから、念のためにそうしておいたと言う線はあるか」

 取っ掛かりが出来た事で、俺の頭も回るようになる。

 考えてみれば、まあ、下二桁だけにしておいた方が都合は良いのかもしれないな。


「……。700日目って何時ですか?」

「おおよそ2年後だな。少なくともとっくに賢者の石は出来ていると思う」

「随分と先の話ですねー」

「ああいう砂漠を作るGMなら考えていてもおかしくはないけどな」

 なお、700日経ってもなお賢者の石が出来ていないと言うのなら、その場合の『AIOライト』と現実世界はかなり末期的な状況に陥っていると考えていいだろう。

 世界の興亡と存続を願うはずのGMが世界を見捨てる程度には。


「マスター?」

「いや、何でもない」

 まあ、そうなってしまった時には700日目よりももっと早くに俺が動いているか。

 終わりの眷属として神格を得た存在が生じている以上、何かが終わる事は既に確定している未来なわけだしな。


「しかし、敵がバラエティに富んでいるな」

「言われてみればそうですねぇ……」

 いい加減話を『AIOライト』の中に戻すか。

 今、俺たちは南東の森の中を北上している。

 今までにプレイヤーは誰も辿り着いていない地なので、地図の類は一切無く、完全に手探りでの探索となっているが、西の荒野と南西の草原の範囲を考えれば、今日中には森を抜けられると思われる。


「昨日戦ったプレンモスやプレンカメレオンだけじゃなくて、プレンマッシュにプレンフィッシュ、プレンスクイール、プレンバード、プレンリザード、プレンアントに……」

「うーん、こういう所でも熱帯雨林なのかもな……」

「現実でもそうなんですか?」

「実際の所はよく分からないが、熱帯雨林と言うとだいたい虫や獣、植物の楽園と言うイメージはあるな」

「なるほど」

 出現するモンスターは……昨日遭遇した4種類以外にも色々と居る。

 と言うか、ぶっちゃけると把握しきれない程に多様であり、具体的な数を上げれば20種以上は間違いなく生息しているだろう。

 そして、一集団の個体数については種類ごとに多くても3体ほどに収まっているが、いざどれかと戦闘となれば、まず間違いなく他のモンスターとリンクし、少なくとも2種類、多ければ6種類ほどのモンスターを同時に相手取る事になるに違いない。

 そうなれば……PTであっても苦戦は免れないだろうな。

 良相性同士の組み合わせで来るとは限らないが、敵の種類が増えればそれだけ攻撃の種類も増えて、対処をするのが難しくなるのだから。


「こうなるとやっぱり基本は戦わない、だな」

「そうですね。それが良いと思います」

「ーーー……!」

 素材集めと言う意味では重宝するマップではあるのかもしれない。

 が、今の俺たちの目的は素材集めではない。

 と言うわけで、俺たちは僅かではあるが歩速を速めるのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ああ、ひょっとしてこの世界はクロキリの世界と同じで神無き世界なのかな?
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