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本日は二話更新です。
こちらは二話目になります。
【AIOライト 104日目 11:02 (1/6・霧) ドウの地・南東の森】
「何と言いますか、とても安定していましたね」
「そうだな。危ない要素は特にない感じだった」
「ーーー」
戦闘終了後、俺たちは素早く剥ぎ取りを行っていく。
剥ぎ取れたアイテムは……プレンドラフライの翅、プレンモスの苔皮が二枚、プレンクラゲの触手が二本、プレンカメレオンの舌と皮か。
と言うわけで、とりあえずプレンカメレオンの皮の詳細を見てみる。
△△△△△
プレンカメレオンの皮
レア度:3
種別:素材
耐久度:100/100
特性:プレン(特別な効果を持たない)
プレンカメレオンの表皮。
周囲の風景に溶け込むように色彩を変化させる特性を有する。
▽▽▽▽▽
「なるほど、劣化ネクタールだな」
「私たちには要らないですね」
「ーーー……」
どうやら、このプレンカメレオンの皮を能力を持ったままフード付きのマントの形にしてみせれば、周囲の風景に溶け込むマントを作れそうである。
が、俺たちには隠蔽能力だけに限っても、周囲の風景に溶け込むような色合いになるだけでなく、表面の手触りなどまで変化させられ、おまけに特性:ハイドも利用できるネクタールが居る。
なので、この皮を普通に使ったところでネクタールの能力を大幅に劣化させたマントしか出来ないだろう。
「と、敵が来るな。ネクタール」
「ーーー!」
と、此処で早速ネクタールの仕事の様である。
と言うわけで、俺はネクタールの能力を発動して、シアと一緒に近くの木の根本に隠れる。
「イブウゥゥ……」
現れたのは風船を横倒しにしたような姿のモンスター……プレンイーターLv.60。
微妙にレベルが高い気もするが、ワンダリングモンスターである。
「インブブ、イバブブ」
プレンイーターは周囲の臭いを嗅いでいる。
どうやら俺たちの事を探しているらしい。
「イバッ」
と、此処で突然プレンイーターが大きく口を開ける。
だが、俺たちに気づいた様子はなく、向いて居る方向も俺たちの居る方向とは全く別の方向で、そちらにあるのは俺たちが剥ぎ取った後に残っているプレンカメレオンたちの死体だけである。
なので、そのまま見ていると……
「イバガッ!」
「「「!?」」」
次の瞬間、プレンイーターの身体が大きく膨らみ、プレンイーターの前方10メートル程の空間が死体も地面も木々も霧も関係なくえぐり取られ、プレンイーターの口内に消え去った。
「イボッブ」
元のサイズに戻ったプレンイーターが大きなゲップをする。
「イブウウゥゥ……」
満足したらしいプレンイーターが軽快な足取りで去っていく。
そうしてプレンイーターの姿が完全に消え去ったところで……
「はああぁぁ……」
「驚きましたねぇ……」
「ーーーーー……」
俺たちは揃って安堵の息を吐いた。
「とりあえず、移動を再開しよう。また変なのが来ても面倒だ」
「はい、マスター」
俺たちは移動を再開。
周囲を警戒しつつ南東の森の中を歩いていく。
「それにしてもどうしてさっきのプレンイーターは私たちに気づかず、色々と食べたら去ったんでしょうか?」
「んー、そうだなぁ……」
さて、シアの疑問だが、ワンダリングモンスターについてである。
「プレンイーターが食べるだけ食べて満足したのは、イーター種の習性のような物だと思う」
「習性ですか?」
「ああ、ハウンド種の単独行動中にこちらを発見したら仲間を呼び寄せる行動のように、モンスターの中には特定の条件を満たすと決まった行動を取るモンスターが居る。プレンイーターの死体を食べる行動も同じような物だろうな」
「なるほど」
まず、プレンイーターが去った件についてはイーター種特有の行動と言うだけだろう。
つまり、覚えておいて損はないが、今回の件とは無関係である。
「で、気づかなかった件については……もしかしたら、ワンダリングモンスターには補正がかかっているのかもな」
「補正ですか?」
「ああ、さっきプレンドラフライにはネクタールの隠蔽を見破られただろ。で、そのプレンドラフライのレベルは32だった。対するプレンイーターのレベルは60。単純にレベルだけで考えれば、プレンイーターもネクタールの隠蔽を見破れてもおかしくないわけだ」
「でも、そうはならなかった」
ちなみに、この論理で行くならば、以前出会ったプレンアキアプテラもネクタールの隠蔽に気づけて当然な事になる。
だが、そう言う事は無かった。
つまりだ。
「そうだ。だからこう考える事が出来る。プレンイーターのような徘徊するタイプのワンダリングモンスターは感知力に何かしらのマイナス補正がかかっている。ってな」
「なるほど。確かに有りそうではありますね」
ネクタールの隠蔽に気づけないような何かがあると考えるのが妥当である。
「そんな事になっている理由としては……ゲーム的な都合だろうな。ワンダリングモンスターである以上、対策なしの適性レベルでは倒せないは当然として、逃げられない、隠れられないを両立させたらゲームとして問題がある」
「あー、言われてみれば確かにそうですね」
どうしてそんな事になっているのかの理由は簡単だ。
ワンダリングモンスターである以上倒せないのは仕方がない。
だが、逃げられないでは遭遇したら全滅するしかないし、隠れられないのでは移動ルートに被ってしまったら戦闘が避けられなくなる。
この内どちらかだけならばプレイヤーの側で対策も立てられるが……両方揃ってしまっては、生息域に入らない以外の対策が取れなくなってしまうし、そんな物をこんな何の変哲もない場所で出されてもただプレイヤーが困るだけである。
だからこそ、ワンダリングモンスターにはプレイヤー側の工夫次第で逃げたり避けたりできるような仕掛けがあるのではないかと思う。
「まあ、いずれにしても現状ではまだワンダリングモンスターは逃げる隠れるかだ」
「西の荒野のプレンジャイアントLv.50ぐらいならローエンさんたちと協力して、対策を立てれば、そろそろいけそうな気もしますけどね」
「ま、その辺は機会が有ればだな」
そうして俺たちはその後も移動を続け、何度かプレンドラフライたちと戦いつつも何事もなく一日を終了。
ヘスペリデスで休み始めた。




