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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編

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536/621

536:101-1

【AIOライト 101日目 09:02 (2/6・晴れ) 同盟街・ウハイ】


「じゃ、ヘスペリデスを閉じるぞ」

 翌朝。

 俺は準備を整えると、少し遅めにグランギニョルたちと一緒にヘスペリデスの外に出た。


「さて、今日の予定だけど……まあ、プレイヤーそれぞれで同盟の彩砂が手に入る場所が違う以上は別行動ね」

「まあ、そうなるな。だが場所が違うと言っても候補は数か所に限られるからな、目的地が同じプレイヤー同士で組んで行動するのは選択肢に入れてもいいと思うぞ」

「だね。ま、その辺りのすり合わせはパパっとやっちゃおうよ」

 さて、今日の錬金術師(アルケミスト)ギルド・ウハイ支部であるが、どうやら昨日のうちにクリアしたらしいトロヘルたちも含めてかなりのプレイヤーが集まっていた。

 そして彼らの輪の中心には『同盟の彩砂-1の洞』最深部にあった地図のスクショを紙に写した物が置かれており、地図には複数のピンが突き刺さっていた。

 どうやら、目的地が同じになるプレイヤーは一緒に採りに行こうと言う流れであるらしい。


「ふうん……」

「どうした?ゾッタ」

「いや、ちょっとな」

 俺は改めて地図を見る。

 トロヘルたちが用意した地図に刺さっているピンは全部で八個。

 対して俺が昨日スクショしたホールの画像に写っている発光している場所は九ヶ所。

 つまり、一ヶ所、この場では俺しか知らない同盟の彩砂が存在する場所がある事になる。


「あー、もしかして複数ヶ所で光が見えているとかか?幾つ見えているのかは知らないが」

「まあ、そんな所だな」

 妙な話である。

 今、ウハイ支部には40人を超えるプレイヤーが居て、おまけにこれまでに『同盟の彩砂-1の洞』をクリアしたプレイヤーは100人を優に超えるはずである。

 その全員が自分のクリア結果をプレイヤー全体で共有するとは限らないし、そんなのは有り得ないが……それでも俺にしか見えていない場所があると言うのは妙な話である。


「……。行ってみるか」

 だからこそ行ってみるべきなのだろう。

 幸いにして行くために必要なアイテムは揃っているのだから。


「ん?一人で出発するのか?」

「ああ、どうにも同行者が集まりそうにない場所だしな。一人で行く」

「……。一応聞いておくが、それって何処だ?」

「ここだな」

 俺は地図の一点……ウハイの南東、砂漠の中を丸四日ほど歩いて行った場所を指差す。

 そして、それを見たトロヘルたちは……


「砂漠の中にも在るのか……」

「ゾッタ兄らしいと言えばらしいわね……」

「うんまあ、師匠だしねぇ……」

 揃って微妙に頬を引き攣らせていた。

 なお、今更な話であるが、他の同盟の彩砂は還元の白枝に合せるように、ドウの地・南西の草原の各所に存在している。

 距離としては、俺が目指す物を除いた中で一番遠いものだと採りに行くのに往復で三日ほどかかりそうな距離にあるが、近いものなら今日の内に採って錬金術師ギルド・ウハイ支部に帰ってこれるだろう。


「えーと、暑さ対策は大丈夫なんですか?」

「テキオンの青実があるから大丈夫だ。今朝のうちに加工して薬にしてある」

「だいぶ距離がありますし、時間がかなりかかりそうですね。マスター」

「いや、そっちについてもちょっと考えがあるから大丈夫だ」

 俺の言葉に再び他のプレイヤーたちの視線がこちらに向けられる。


「俺のナクーのような高速移動手段でも作ったのか?」

「まあ、そんな所だな」

 その視線は俺たちがウハイ支部の外に出ても続く。

 これを見られるのは……まあ、別に問題はないか。


「シア、ちょっと離れていてくれ」

「あ、はい。分かりました」

 俺はインベントリからカプノスを取り出すと、ヘスペリデスの黒葉ではなくエヴァンゲーリオの花と葉を刻んで丸めた物を用意する。


「エヴァンゲーリオ・ハルモニアー」

 そして一服。

 ヘスペリデスの黒葉よりも刺激が少なく、甘い香りがする藤色の煙が口から吐き出され、脚にまとわりつき、煙の内側で俺の脚を本来の姿に変えていく。


「マスターこれって……」

「ハルモニアーの効果を移動と持続に重点を置いて調整すると共に、負担を軽くした奴だな。戦闘に使うには無理があるが、移動ならこっちの方が都合が良い。ちなみにヘスペリデスの黒葉を使っていないから、一日に複数回使う事も出来るぞ」

「なるほど。何時の間にと言う感じですけど、これなら砂漠の中でも大丈夫そうですね」

 やがて藤色の煙が晴れると同時に、俺の脚は黒曜石のような金属光沢を持つと同時に赤黒い雲が足の裏に張り付いた状態になる。

 その姿を見た他のプレイヤーたちは大半が唖然としているが……まあ、別に気にしなくていいか。


「シア。俺の背中に乗ってくれ」

「分かりました。マスター」

 俺はシアを背中に乗せ、ネクタールがシアの身体を固定。

 万が一にも落ちる事が無いようにする。


「じゃ、出発するぞ」

「はいっ!」

「ーーー!」

 そうして俺は色々と言いたそうにしているトロヘルたちを背後に、地面の上を滑り始め、普段の俺が走るのよりも明らかに速く、けれど負担は無く、同盟の彩砂に向けて移動を開始した。

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