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本日は二話更新になります。
こちらは二話目です。
【AIOライト 100日目 20:15 (半月・晴れ) 同盟街・ウハイ-ヘスペリデス】
「「「御馳走様でした」」」
「お粗末様でした」
「片付けますねー」
錬金術師ギルド・ウハイ支部に戻ってきた俺たちはヘスペリデスに移動。
遅めの夕食を摂った。
で、明日からはまた各自それぞれに行動をすることになるわけであるし、俺としては今日の分のヘスペリデスの黒葉を消費したら、早めに寝てしまいたいわけだが……どうやらそうもいかないらしい。
グランギニョルがこちらに対して真剣な目を向けている。
「で、ゾッタ兄。『凍結招く精霊の王』との戦いから今までそんな暇が無かったから聞けていなかったけど、メンテナンス中にGMと話したってどういうことなの?」
「うん、それは僕も気になった」
「せやな、GMと言えばウチ等にとっては敵の親玉みたいなものや。それとリアルでも付き合いがあるってのはちょっと見過ごせないで」
そして、それを切っ掛けとして、他の面々からもそれぞれの感情が込められた視線が俺へと向けられる。
うんまあ、俺もグランギニョルたちの立場だったら気になるところだしな。
こういう反応は当然と言ってもいいだろう。
「そう言われても、お前らが想像しているような関係性じゃないぞ」
ただ、残念ながらグランギニョルたちの想像はほぼ外れだ。
と言うわけで、俺は先日のメンテナンス中にあった事……テレビ局やら、脅しやら、ハニトラやらがあり、一々GMコールをしていたらやっていられなかった事を話す。
で、それを話したところ。
「『ドーステの魔眼』が現実で使える件については横に置いておくとして、なんでゾッタ兄の所にはそんな嫌な意味でバラエティに富んだ相手が来ているのよ……私の所には家族と友人くらいしか来なかったわよ」
「いやー、でも師匠だよ?師匠の性格と能力を知らなかったら、どうにかして繋がりを持ちたいと思う人間が出て来てもおかしくはないんじゃない?」
「それでも自分たちの所にはそう言うのが来ず、ゾッタさんの所にだけ来た辺りに作為的な物は感じますけどね」
「実際、作為的なんやろ。ウチは一応服飾向上委員会のトップやけど、この間のメンテナンスの間にそう言うのが訪ねてきた事は無かったで」
とまあ、こんな感じに色々と話が進んだ。
なお、岸道議員についてはシュヴァリエがいるという事もあるので、敢えて伏せてある。
「勿論作為的ですよ。俺専属っぽい政府の役人がそうしたみたいです。仮に他に来ているとしたら……まあ、番茶さんみたいに対応が出来る人のところぐらいでしょうね」
「そうですね。私もそう思います」
さて、この説明で一応は納得はして貰えたのだろう。
グランギニョル、シュヴァリエ、ロラ助、ボンピュクスさんの四人の表情はすっきりしたものとなっている。
ソフィアとリュドミラについては……
「ふふっ、ふふふふふ、師父に色仕掛け?ふふふふふ、お馬鹿な事を考える方が現実にはいらっしゃるようですわね……ふふふふふ」
「ほー、ほうほう、ゾッタ様に色仕掛けとな。己の身を捧げるのは結構じゃが、信心を伴わず実益ばかりを求める供物など正に腐敗の象徴なのじゃがなぁ……」
うん、放置しておこう。
背後の黒いオーラ含めて怖いから、放置しておこう。
アレは関わってはいけない何かなので放置しておこう。
「ま、そんな訳でな。俺とGMの関係性は何処まで行ってもGMとプレイヤーのそれ止まりなわけだ」
と言うわけで、この件は切り上げてしまうとしよう。
「そうそう、精々がこうやって夕飯をつまみに来るぐらいなのニャー」
「ついでに言うなら、ちょくちょくと嫌がらせしにも来るけどな」
「「「!?」」」
GM本人が来てしまったので無理だったが。
「な、なんでGMがここに居るんや!?」
「今来たのニャー」
「夕飯をつまみにって……」
「他人が作る飯は美味しいものだから仕方がないのニャ」
「ええー、仕事とかいいの……」
「心配しなくてもある程度はプログラムで済ませられるのニャ」
まあ、流石はGMと言うべきか、のらりくらりと俺以外の面々からの物理的なものも含めた追求をやり過ごしつつ、シアが作った料理を食べ、自分で持ってきた酒を飲んでいるな。
『で、実際のところ何の用だ?幾らなんでもこのタイミングで姿を現したって事は、何か有るんだろ?』
「ちょっと交渉してもええか?」
「いいのニャー」
さて、何時までもふざけているわけにはいかない。
と言うわけで俺は魔力を利用したテレパシーモドキでGMと話をする。
「鬼ごっこの開幕です!」
『簡単に言うなら候補者の様子を見るのと、軌道修正をしに来ました。此処には現状で私が候補と睨んでいる存在が何人も居ますから』
『候補者……ねぇ。賢者の石の話だな』
「机、片付けておきますねー」
『ええそうです。まあ、この様子を見る限りではどの候補者もまだ当分先ですけどね』
『だろうな。お前が求めているものが早々出来上がると思えない』
「開演よ!我が団員たちよ!」
『貴方が作る気は?』
『無い。今更作っても意味が無いしな』
「ふふふふふ!逃がしませんわ!!」
『まあ、そうですよね。貴方に作られても私だって困ります』
『順序が逆だしな』
「紫電一閃!!」
GMの目的を俺は既に理解している。
GMも俺が自身の目的を理解している事は分かっているだろう。
だから俺はGMと他の面々のやり取りを止めずに表面上は静観する。
「はぁはぁ、ああもう、ちょこまかと……」
「ぜ、全然追いつけない……」
「ぐぬぬなのじゃー……」
「ニャハハハハ、ゲーム中でGMに敵うと思う方がおかしいのニャー。ではさらばニャー」
そうして何時の間にやら始まっていた俺以外の全員が参加する鬼ごっこはGMの圧倒的勝利で終わり、GMは去っていった。
なお、GMの名誉の為に一つ付け足しておくならば、先程の鬼ごっこの最中、GMはGMとしての権利を一切行使していなかった。
つまり、グランギニョルたちがGMを捕まえられなかったのは、単純な実力不足である。
ま、そう心の中で言っている俺もGMが本気で逃げ出したら捕まえることなど絶対に出来やしないのだが。
「とりあえず全員大浴場の方で疲れを癒して来るといい。GMもそれを見越しての鬼ごっこだっただろうしな」
「「「はーい……」」」
そうして、この場はGMの一人勝ちでもって収まったのだった。




