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本日は二話更新になります。
こちらは一話目です。
『かつてこの地で人々は己に無いものを求めて盟約し合い、友誼を結び合っていた』
『数多の同盟を繋ぎ続け、己に無いものを集め続けようとしたが故に彼らは滅びた』
『彼らは知らなかった。同盟とはただ結ぶだけでは意味がなく、相手を思えなければ意味がないと言う事を』
『彼らは気付かなかった。腸から辿り着いては弾け蝕む悪意の空気に』
『彼らは理解できなかった。自分たちの身にどうしてこのような事が起きてしまうのかを』
『そう、彼らは同盟を結び続けて求め続けたが故に嫉妬に至ってしまった』
『そして滅びの後に世界は選んだ。全てと契約したが故に孤独となった想念を地の底にて眠らせる事を。友誼無き者の手が及ばぬ場所にて同盟の力を撒いて散らす事を』
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【AIOライト 100日目 17:27 (半月・晴れ) RS1・『凍結招く水晶の洞窟』】
「はぁー……一時はどうなるかと思ったわね」
「まったくだ」
グランギニョルの言葉に俺たちは揃って頷く。
実際、『凍結招く精霊の王』との戦いはギリギリとしか言いようが無かった。
こうして全員揃って会話できているのが不思議なくらいである。
「で、剥ぎ取りは出来るのよね」
「ああ、出来るみたいだな」
さて、対を為すであろう『還元の白枝』と違って、『同盟の彩砂』では倒したボスからの剥ぎ取りが行えるらしい。
と言うわけで、俺たちは各自剥ぎ取りを行う。
で、他のメンバーが剥ぎ取りを行っている最中にリュドミラと一応周囲を確認してみたのだが、どうやらボスの討伐と同時にダンジョンの状態は固定化され、モンスターも新たに出現する事はなくなるようだった。
妙に優しい仕様なのは……アライアンスが必須であり、準備や各種動作に時間がかかる事を考慮してと見るのが普通か。
まあ、プレイヤーに有利な仕様である以上は、とやかく言う必要はないだろう。
今回の場合だと、残存モンスターもダンジョンが崩壊しかけた影響でもう残っていないようだしな。
なお、即死エリアの消滅については真っ先に確かめてある。
「んー、流石はレア度:3のボス、この人数で剥ぎ取ってもまだいい物が取れるわね」
肝心の剥ぎ取りの内容だが、俺の場合は『凍結招く精霊の王』の心臓と言うアイテムが手に入った。
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『凍結招く精霊の王』の心臓
レア度:3
種別:素材
耐久度:100/100
特性:フリーズ(凍えさせて動きを鈍くする)
『凍結招く精霊の王』の心臓とも呼ばれる希少な紅い宝石。
『凍結招く精霊の王』が持つ強い炎の力と特性の効果が濃縮されており、様々な用途に用いる事が出来る。
なお、その組成はルビーやガーネットのような既存の宝石とは大きく異なる。
▽▽▽▽▽
「宝石ですか……」
「ああ、使い道はもう見えているけどな」
そして、使い道はもう繋がりと言う形で見えている。
加えて、これを使ったアイテムが出来上がる事によって俺たちが大きく強化される事も分かっている。
少し楽しみではあるな、うん。
「そう言えば、孤独な想念とか言うとったけどあれは……」
「たぶん『同盟の彩砂-4の洞』の最深部に居るボスについての情報だと思います。今はまだ気にしなくてもいいと思いますよ」
『凍結招く精霊の王』を倒した事に伴うメッセージの内容については……まあ、いつも通りの内容ではあるな。
同盟と言う名のギルドを結ぶのであれば、心の底から信用できる、信頼でき相手を選びましょう。
ただ同盟を結ぶだけでは意味がありませんよ、と言う話だ。
それを考えるとローエンの『菫青石の踏破者』などは少々拙い事になるが……あれは出来るだけ多くのプレイヤーを助けるために立てられたギルドであって、ローエン自身ももう一つ別のギルドに参加しているぐらいだから、まあ、大丈夫なのだろう。
【固定ダンジョン同盟の彩砂-1の洞をクリアしました】
【イベントエリアに移動するための階段が開放されます。好きなタイミングで移動してください】
「さて、全員レベルアップの処理とかは大丈夫かしら?」
「ああ、大丈夫だ」
なお、『凍結招く精霊の王』との戦闘の少し前にレベルアップしたためだろう。
今回は俺の戦闘レベルが上がる事はないようだった。
リュドミラなどはだいぶ忙しそうにしているが……まあ、レベル差がそれだけあったと言う事だろうな。
「それじゃあ、移動しましょうか」
そうして全員が戦闘終了後にやるべき事をやり終えると、俺たちは予め見つけておいた次の階層に繋がる階段へと向かった。
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【AIOライト 100日目 18:02 (半月・晴れ) 同盟の彩砂-1の洞・最下層】
「さて、完全に日は落ちちゃったけど、どうにか着いたわね」
俺たちが移動した先の部屋は、薄暗い石造りのホールの外周部だった。
一応、発光する水晶が照明として用意されているが、かなり暗い事には変わりないと言う事でネクタールがニフテリザを出し、灯りを確保する。
「でも、これだけ苦労しても手に入るのが同盟の彩砂本体じゃなくて、地図なんだよねー」
「そこはまあ、自分のギルドを立てようと思ったらするしかない苦労だと思うしかないんじゃないですか」
ニフテリザによって照らし出されたホールの中心部の床には、所々に発光する場所があるウハイ周辺の地図が描かれてた。
また、ホールの壁には砂状の物体を携帯錬金炉に注ぎ込み、生成された物質を別の人間に手渡したり、かざしたりすると言った同盟の彩砂の使い方と思われる情報が描かれていた。
「ふふふふふ、これでやっと『服飾向上委員会』のギルマスを譲れますわ」
「本当にありがとうな。ウチが不甲斐ないばかりにこんな手間をかけさせてしもて」
「師父と一緒に戦えたので問題なしですわ」
それから、ソフィアとボンピュクスさんのやり取りからして、この時点から俺たちは自作ギルドのギルドマスターあるいはサブマスターになれる権利を得たらしい。
「さ、それじゃあ全員、自分の同盟の彩砂が何処にあるかは確認したわね。確認できたなら、後は全員揃って錬金術師ギルド・ウハイ支部にまで戻るだけよ」
「自分が言う事じゃないかもしれないですけど、安全圏に辿り着くまでが遠征、ですからね」
そうして俺たちは無事に目的を達成し、ウハイ支部に戻ったのだった。
それにしても俺が望む同盟の彩砂は複数箇所にある……か、さて、どれかを入手すればいいのか、それとも全てを入手しなければいけないのか……いずれにしても、俺のギルドを立てるのにはまだもう少しかかりはしそうだな。
09/24誤字訂正
 




