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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編

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530:100-14-S13

【AIOライト 100日目 17:05 (半月・晴れ) RS1・『凍結招く水晶の洞窟』】


「後一時間で日暮れやな……」

 『凍結招く水晶の洞窟』の探索は続く。

 既に倒したモンスターの数は30を余裕で超え、戦闘の回数そのものも10回を超えている。

 だが、封鎖された次の階層への階段は見つかっても、ボスは未だに見つからず、日暮れの時間も迫っていた。


「ちょっとこのままだと拙いかもしれないわね」

「崩落の危険性がある……ですか?ギニョール」

「ええそうよ。一応、床や壁に攻撃を当てないようにして、ダンジョンに魔力を蓄えさせないように注意は払っているけど、それでもフリーズゲンガーたちやちょっとした余波で蓄積そのものはだいぶ進んでいるはずだから」

 しかし迫っているのは日暮れだけではない。

 グランギニョルの言うとおり、水晶の壁や床に魔力が蓄積され、弾け飛ぶ時が迫っている。

 それも部分的なものでは無くダンジョン全体が一斉に弾け飛び、俺たち全員を問答無用で死に戻りさせるような爆発が。


「師匠が見た感じだと残されている時間はどれくらい?」

「そうだな……何もしなくても後一時間あるかどうかと言う所だと思う」

 そしてこれは推論でもなんでもなく、ただの事実であり、俺の目には既にその未来への繋がりが見え始めている。

 勿論、無事に脱出できる未来への繋がりも見えているが……GMとの契約もある以上、細かくは見えないな。

 それにしても何もしなくても一時間保たないとなると……。


「ゾッタさん、もしかしなくても今回のボスって魔力の放出を……」

「積極的にしていると思う。俺たちが行動しているだけにしては蓄積が早過ぎるからな」

 ロラ助の言うとおり、ボスは何かしらの形で常時魔力を放っていると思っていいだろう。


「ちっ、面倒ね。こっちはゾッタ兄を筆頭に魔力を使った攻撃を控えないといけないのに、あっちは無制限に……いえ、むしろ積極的に撃っても構わないだなんて」

「と言いますか、此処まで来るともはや水晶のと言う構造そのものが師父の戦闘能力を削ぐための構造なんじゃないかと思えてきましたわね。私たちはともかく、このマップは師父への影響が著しく大きいですから」

「まあ、ゾッタ君は色々とやっているから、GMから目の(かたき)にされていても不思議ではないとウチは思うけどな」

「ヘスペリデスの時とかはGMが直接顔を出したそうですし、この前のメンテナンスの時もマスターの所に声だけ届けてくるくらいには付き合いがありますもんね。マスター」

「え?師匠?メンテナンス中にGMと話したってどういう事?」

「まあ、色々とあってな。その辺はダンジョン脱出後にでもしておこうか」

 俺は水晶の中の魔力の繋がりに向けて目を凝らす。

 やはりと言うべきか、水晶の中には俺たちが放った魔力だけではなく、モンスターたちが放った魔力も含まれている。

 モンスターの魔力は一部例外を除いてどれも非常に似通っているので、この繋がりから敵が何処にいるのかを探るのはほぼ無理なのだが……ダンジョンの崩落が近づいている今ならば、繋がりの太さから探る事も出来るだろう。


「見つけた」

 そして俺がボスを繋がりから見つけた瞬間。


「っつ!?こっちに向かってモンスターが一体……これはボスなのじゃ!」

 ボスも俺が見つけた事からこちらの存在を感じ取り、一気に接近し始める。


「全員構えなさい!」

 リュドミラが叫び、グランギニョルが発破をかけ、俺たちは即座に全力戦闘の態勢を取る。

 既に繋がりを介さなくても感じ取れるほどの魔力が空間に放たれている。

 此処まで来れば誰も間違える事はないだろう、ボスだ。


「サアアァァラアアァァ……」

「これがボス……」

「なるほど。魔力は確かに放出しているね……」

「す、凄まじいのじゃ……」

「でもマスター、これって……」

 俺たちの目の前に現れたのは、普通の人間より一回り大きい人型の存在。

 だが人間ではない。

 その髪は赤く燃え盛り、肌は橙色、足は地面から離れ、周囲には魔力と同時に熱波が放たれている。


「種族としてはエレメンタル種なんやろうけど……」

「ここ、『凍結招く水晶の洞窟』なんですけどね……」

「出て来てしまった以上は仕方がないですわ」

「まあ、この辺はランダム故にと言う奴だろうな」

 名前は『凍結招く精霊の王』Lv.35。

 ただし、その属性は見ての通り火属性。

 凍結招くと言う明らかに氷や水の特性に対して、火属性の精霊が選ばれたのは自動生成が持つランダム性故に。

 だが、それはこちらが有利になるようなランダムではない。


「マンダアァ!」

「ネクタール!」

「『守護を与えん』!」

「ーーーーー!」

 『凍結招く精霊の王』が右手から真っ赤な炎を複数放つ。

 俺は即座に全員の前に出ると、シアの支援を受けつつネクタールで防御をする。

 そしてHPバーが減少するのと同時に感じたのは熱いと寒いと言う相反する感覚と、焼けるような不快感。

 橙色の障壁が砕け散った後に、続けて被弾した俺のステータスに一瞬表示された状態異常は状態異常:バーンと状態異常:フリーズ。

 これだけでもう理解できる。

 『凍結招く精霊の王』は自身の持つ火属性攻撃も、状態異常:フリーズが乗った攻撃も自由に扱えると言う事が。


「全員散開!急いで倒すわよ!」

「「「了解!」」」

 そして急がなければならない。

 今の『凍結招く精霊の王』の攻撃一回で、グランギニョルたちの目でも分かるような大きなヒビが水晶の壁に刻まれたのだから。

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