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【AIOライト 100日目 15:34 (半月・晴れ) RS1・『凍結招く水晶の洞窟』】
「アグラァ!」
「ふんっ!」
やはりと言うべきか、『凍結招く水晶の洞窟』に居る雑魚モンスター4種類で一番厄介だったのはフリーズアングラーだった。
その性質上、複数体でまとまって行動せず、発見さえできればこちらから仕掛けられるモンスターだが、それでもなお厄介だった。
と言うのも、アングラー種共通の行動として提灯部分を光らせて状態異常:ブラインを自分以外の全員に向けて付与しようとするのだが、フリーズアングラーの場合だと状態異常:ブラインに加えて状態異常:フリーズまで付与してくるのである。
そして状態異常:フリーズがかかれば、敵の攻撃には自動的に不意討ちの補正が乗り、アングラー種であれば能力によって補正は更に高まる。
そう、フリーズアングラーは特性と能力が良い形で組み合わさったモンスターだった。
「アングラァ!」
「ぐっ……」
「『癒しをもたらせ』!」
「よし解けた!ゾッタ兄の支援を再開するわよ!!」
「はいっ!」
そして今、俺たちはフリーズアングラーLv.34と戦闘をしていて、状態異常:フリーズが全員に直撃。
回復力が際立って高い俺がどうにかフリーズアングラーが攻撃に移る前に状態異常:フリーズから脱し、フリーズアングラーの攻撃を惹き付ける事に成功したからいいものの、そうでなければ死に戻りが出ていてもおかしくない状況だった。
「『エンボリオ』!」
俺はロラ助がフリースアングラーからのヘイトを奪ってくれている間にトリゴニキ・ピラミーダの『エンボリオ』を発動。
HPとMPを消費することで特性:ワクチンの効果を回復させる。
「っつ!?増援が来るのじゃ!数は3!推定ゲンガーなのじゃ!!」
「また来たのね!」
「今度は誰の姿!?」
リュドミラが声を上げると同時に、曲がり角の向こうから黒一色の人物が三人現れる。
姿は……シュヴァリエが三人だけか、ならばよし。
さっきはロラ助にブリサとヴィエントの三人で来られて、俺やシアの特性:ワクチンを剥がされて、そこにフリーズアングラーの凍結光とでも言うべき攻撃が直撃したせいで酷い事になったからな。
だが、シュヴァリエの模倣ならば素早いだけで対応は出来るはずだ。
「僕の偽物なら僕とグランギニョルで対応するよ!」
「そうね!そうしましょうか!ソテニア!」
シュヴァリエが自分の姿を模倣したフリーズゲンガーたちに向かって突っ込み、グランギニョルがそれに追従する。
ボンピュクスさんの支援も入っているから、あちらは大丈夫だろう。
「ロラ助!」
「はい!ゾッタさん!」
「アグッ……!?」
俺も戦線に復帰する。
ロラ助に集中しているフリーズアングラーの横っ腹に斧と槍の同時攻撃を仕掛けてヘイトを奪うと共に、ダメージと状態異常:ポイズンを与える。
「アグラアアアァァ!」
俺を素早く視界に収めたフリーズアングラーが再び提灯による目つぶしを行おうとする。
「させぬのじゃ!」
「させません!『ブート』!」
「させませんわ!」
「せいやっ!」
「!?」
だが、そのタイミングを狙って放たれた他のメンバーの攻撃によってフリーズアングラーの体勢は大きく崩れ、隙だらけの姿を晒す。
「ふんぬっ!」
「ーーーーー!」
「アンゴ……!?」
そして俺とネクタールの攻撃でもって遂に膨大なHPバーも底を突き、倒れる。
「よし、これで後は……」
「こっちも終わったわ」
しかし戦闘はまだ終わっていない。
そう思った俺たちはシュヴァリエたちに加勢しようとしたが……うん、既に終わってた。
素早さを生かせないように周囲を囲まれた上で四方八方からタコ殴りにされていて、三体のフリーズゲンガーのHPバーは丁度ゼロになった。
敵ながらちょっと哀れである。
「リュドミラ」
「新たな敵の気配はなし。戦闘終了なのじゃ」
リュドミラの言葉に俺を含めた全員が少しだけ緊張の糸を緩める。
此処までの探索でリュドミラの魔法の精度が極めて高い事は分かっているからこその反応である。
「結構キツかったね……」
「アングラー1にグローバグ2、ハウンド2にゲンガーが6ですか。フリーズアングラーがタフだったせいでどんどん仲間を呼ばれちゃいましたね」
「だな。それと全員が状態異常:フリーズに掛けられた時は流石にヤバいと思った」
「そうね、アレには肝が冷えたわ」
俺たちは素早く剥ぎ取りを行っていく。
が、特にめぼしいアイテムは手に入らない。
フリーズアングラーの肝は夕食にすればいいとしても、フリーズグローバグの甲殻やフリーズハウンドの毛皮などは今更感が強いし、フリーズゲンガーから取れるのは相変わらずフリーズゲンガーの残滓と言うアイテムばかりだ。
△△△△△
フリーズゲンガーの残滓
レア度:3
種別:素材
耐久度:100/100
特性:フリーズ(凍えさせて動きを鈍くする)
フリーズゲンガーの肉体の一部。
非常に脆く、手でも粉状になるまで簡単に磨り潰せてしまう。
他の生物の姿を模倣する力が秘められているとされるが、詳細は不明。
▽▽▽▽▽
「それにしてもフリーズゲンガーが姿を取るのはゾッタ兄の事が多いわよね」
「そうですね。今までに5回ほど遭遇してますけど、5回中3回はマスターの姿でした。」
【ゾッタの戦闘レベルが36に上昇した。戦闘ステータスの中から上げたい項目を一つ選んでください】
と、ここで戦闘レベルがレベルアップする。
どうやらなんだかんだでここまでの戦闘で結構な量の経験値が稼げていたらしい。
で、上げるステータスだが、今回は生命力にしておく。
回復力も多少切りが良いところまで上がったし、そろそろまた上げておかないと、回復が始まる前に相手の攻撃に耐えられない場合があるだろうからな。
△△△△△
ゾッタ レベル36/38
戦闘ステータス
肉体-生命力21・攻撃力10・防御力10・持久力9・瞬発力10・体幹力10
精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7・回復力40+20+10・感知力10・精神力11
錬金ステータス
属性-火属性10・水属性10・風属性10・地属性10・光属性7・闇属性10
分類-武器類20・防具類15・装飾品15・助道具20・撃道具15・素材類18
▽▽▽▽▽
「ゲンガー種の模倣の基準が恐らくはプレイヤーのレベル辺りなんだろ。ちなみに今の俺は合計で74ある」
「レベルで判断ってのは……まあ、確かに有りそうな話ではあるわね。ちなみに私は68よ」
「僕は67だね」
「自分は66です」
「私は68ですね」
「ウチ、59なんやけど……」
「妾など55なのじゃ」
さて、フリーズゲンガーの模倣についてだが、こうしてそれぞれのレベルを並べてみると……やはりレベルが高い方が確率が高くなりそうだな。
まあ、ホムンクルス含めてレア度:PMの模倣に制限がある以上、俺を模倣されるよりもロラ助やリュドミラの模倣をされた方が厄介なので、こちらとしてはありがたい仕様なのだが。
「しかしこうなると……次辺り、私の偽物が来るかしらね」
「グランギニョルの偽物かぁ……まあ、アブサディットたちが居ないなら魔法が……」
「む、敵なのじゃ。数は4、ハウンドにゲンガーっぽいのじゃ」
「「「……」」」
「フラグだったわね」
と、ここで先程までの戦闘の音に釣られる範囲にギリギリ居たのか、フリーズハウンドに連れてこられる形で、グランギニョル姿のフリーズゲンガーが三体現れる。
「出来るだけ魔法を使わせずに仕留めるぞ!爆破されたら堪ったものじゃないからな!」
「「「了解!」」」
そして俺たちは即座にグランギニョルの姿をしたフリーズゲンガーたちに襲い掛かり、数度当たらなかった魔法によって床を爆破されつつも、素早く倒しはした。
09/21誤字訂正




