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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編

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528:100-12-S11

「「ク、クゥゥゥン……」」

「二体も居たのか」

「あれだけ派手な爆音だったのに二体しか居ない、と言う方が正しいと思うわよ」

 俺が爆破した扉の外にはHPバーが激減したフリーズハウンドが二体居た。

 が、水晶の爆発によって吹き飛ばされた上にソフィアとシュヴァリエの追撃によってトドメを刺したので、何も問題はない。

 グランギニョルに言わせれば最初の試しの爆発があったにも関わらずこれしか居ないのはおかしいらしいが……まあ、今回は出現するモンスター4種類中2種類が積極的にこちらを襲うタイプではなく、残りの1種類は行動内容が不明だからな。

 これで妥当だと俺は思う。


「まあいいわ。探索を始めましょう」

 俺たちはフリーズハウンドからの剥ぎ取りを終えるとボスを探して洞窟内部の探索を始める。

 探索の形態としては俺とシュヴァリエが前に出て警戒し、ロラ助が後方警戒、リュドミラが広域探知、他メンバーが側面を警戒する形である。


「と、今度はフリーズグローバグだな」

「潰すわよ。戦闘中に来られたら堪ったものじゃないわ」

「分かりました。ではシュヴァリエ『癒しをもたらせ』」

「うん、ありがと!」

 と、ここでフリーズグローバグが5体、群れを成して現れる。

 なので俺たちも即座に対応開始、シアの魔法で回復量を高めたシュヴァリエが先行して突っ込む。


「せいやっ!」

「ーーー!?」

「「「ーーーーー!!」」」

 シュヴァリエの攻撃に反応して、全てのフリーズグローバグがアクティブ化すると同時に光を強める。

 そして光が強まると同時に状態異常:フリーズがシュヴァリエに表示され、多少ではあるがその素早さが落ちる。


「感有り!敵が4体接近してきているのじゃ!」

「了解!とっとと片付ける!」

「一気に攻めきるよ!」

 だが、周囲に他のモンスターが居ないグローバグ種は脆弱なステータスのモンスターでしかない。

 と言うわけで、シュヴァリエがフリーズグローバグの注意を惹きつけている所に横から俺が乱入、更にネクタールと俺の身体に同乗する事で一緒に突っ込んだヴィオとバルの攻撃によって、一気にフリーズグローバグのHPを削り取っていく。


「来たのじゃ!」

「来たか!」

 そうしてフリーズグローバグたちを仕留めると同時に、曲がり角の向こうからリュドミラの感知した4体のモンスターが現れる。

 先行してきたのはフリーズハウンド、猟犬と言う特性を考えれば、至極当然の反応だろう。

 そしてフリーズハウンドに付いてくる形で現れたのは……


「っつ!?そういう事!?」

「どう来るかと思っていたら……!」

「とんでもないのが来たのじゃ……」

「GM……それは駄目ですって……」

「あらあらあら……」

「これはアカンて……」

「マ、マスター!?」

 右手に斧を、左手に短剣を持ち、額から角を生やした、全身が影そのものであるように真っ黒なヒトガタ。

 と言うかぶっちゃけると、俺から特性:バーサークのオーラを無くし、ネクタールを剥いだ姿の俺がそこには居た。


「なるほど、ドッペルゲンガーのゲンガーだったか」

「「「……」」」

「グルルル……」

 名前はフリーズゲンガー、レベルはLv.29、Lv.30、Lv.31の三体。

 武器を構える姿は全員同じようで、短剣を盾代わりに半身に構えている。


「まったく……」

「「「ーーーーー」」」

 フリーズゲンガーたちが俺に向かって全く同じ動きで突っ込んでくる。

 その身には僅かではあるが、特性:バーサークの発動を示す赤いオーラが漂っている。

 対する俺は……


「くっ!とにかく迎撃よ!ゾッタ兄が……っ!?」

「俺の姿をしている程度で動揺するな」

「「「ーーーーー!?」」」

 とりあえず特性:バーサークを全開にした上で、魔力を全方位に向けて放出。

 周囲の水晶に小規模の爆発を起こさせて俺とネクタール以外の全員の意識に空白を生み出す。

 そうして隙が生じた所で……


「『楽園(ピソ)の裏側(ヘスペリデス)』」

「ーーーーー!」

「「「!?」」」

 『楽園の裏側』を展開しつつネクタールと協力してラッシュ。

 全てのフリーズゲンガーに本物がどういう物であるかを刻みつけるように斧を振り下ろし、短剣で切りつけ、槍で串刺しにし、『ドーステの魔眼』で身じろぎひとつ碌に許さず、圧倒的な回復力で敵の状態異常:ポイズンは無力化し、逆にこちらの状態異常:ポイズンは途切れなく相手を蝕み、高い回復力による再生を上回るペースで削り続ける事で仕留めていく。


「まあ、考えてみればネクタールが居ない時点でマスターの姿をしていてもそこまで脅威じゃないですよね」

「うんまあ、そうなんだけどさ。それでも動揺はしちゃうじゃない?師匠だし」

「頭で分かっているのと動揺しないのはまた別よ……シア」

 で、俺がフリーズゲンガーたちを仕留める頃には、シアがシュヴァリエとグランギニョルの二人と協力してフリーズハウンドを仕留めていた。

 シアたちに傷らしい傷はない。


「いずれにしてもこれで懸念事項が一つ晴れたな。フリーズゲンガーがどういうモンスターか分かった」

 そして今回の戦いでよく分かった。

 フリーズゲンガー……と言うよりゲンガー種はプレイヤーの姿、装備、ステータスを模倣して現れる。

 装備品が有する特性や追加効果もある程度は模倣される。

 インベントリのアイテムについては一部を除いてたぶん模倣されない。

 それと、レア度:PMは恐らく再現されず、『ドーステの魔眼』のような個人的な能力も模倣は出来ない。

 後はプレイヤーの個人的な思考や技術を模倣出来るかだが……最初の全く同一の構えからしてまずできないと思っていいだろう。


「ま、はっきり言って俺を模倣している分には大して怖くないな。怖いのはシュヴァリエやロラ助を模倣されたパターンだろ。装備とステータス的に」

「そうですね。私もそう思います」

「かもしれないわね」

「だねー」

 と言うわけで、解析を終わらせたところで俺たちは剥ぎ取りを行い、その場を後にした。

 剥ぎ取れたのは……フリーズハウンドの牙を除けば、フリーズゲンガーの残滓とか言うよく分からないアイテムだけだった。

09/20誤字訂正

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