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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編

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520/621

520:100-4-S3

【AIOライト 100日目 10:22 (半月・晴れ) RS1・『?凍土の塔』】


「「「……」」」

 自主的な縛りプレイをしつつ探索を始めた俺たちだが、その足取りや周囲への注意は明らかに第一階層の時よりも慎重な物になっている。

 とりあえず複数階構造になっているのは確認したので、ここが塔マップなのは確定したが、分かっているのはそれだけだ。

 だから警戒は緩めない。

 ボンピュクスさん視点で危険なモンスターの出現は無く、危険な特性はないと分かっていても、俺たちの視点では何が出てくるのかも、どんな特性が加わっているのかも分からないのだから。


「……」

「「コボコボ……」」

「敵のようね」

「だな」

 と、ここで前方から凍りついた全身鎧を見に纏い、背中に大きな剣を背負った『??』Lv.30と、それに付き従う犬の顔を持った小柄な亜人である『?コボルト』が杖持ちのLv.27と弓持ちのLv.28という形で現れる。

 全身鎧の方はナイト種だと思うのだが……名前が明らかにならない辺り、違うのかもしれないな。

 そして、地味に未識別モンスターの名前に鉤括弧が加わるようになっている。

 こっちはメンテナンスでの調整の結果だな。


「行けるか?ロラ助」

「あの数なら大丈夫です。ゾッタさん」

 勝った順に挑むと言う条件でやったじゃんけんで何故か一発で独り勝ちを収めたロラ助が腰の刀を抜きつつ、俺たちの前に出る。

 そして、ロラ助の背後ではロラ助のホムンクルスであるヴィエントとブリサがロラ助に対する支援を開始し始める。


「では……行きます!」

 そうしてロラ助が全身鎧に切りかかっていく形で戦闘は始まった。

 

「せいやっ!」

「コボッ!」

「コボコボッ!」

「……」

「「ーーーーー」」

 さて、ロラ助の戦い方は?

 一言で評してしまうならば美しい、と言うのが妥当だろう。

 敵の攻撃は刀で受け流す、あるいは踏み込みで威力を減衰させる、もしくは地面の上を滑るようなすり足で避ける。

 後衛であるコボルトの支援攻撃が安易には撃てないように全身鎧との位置関係も適切に調節している。

 その上でヴィエントとブリサの動きを邪魔しないように立ち回りつつ、敵のヘイトも稼いで自分に攻撃を集めている。

 そうしてタンクとして理想的な動きをする一方で、ロラ助の攻撃は最小限の動作で的確に相手の集団の弱点を突いていき、後衛であるコボルトのHPを削る一方で、全身鎧には状態異常:バーンと攻撃力低下を乗せて突破できないようにしている。


「流石ロラ助ね」

「だね」

「ロラ助さん凄いですね」

「ふふふ、素晴らしい動きですわ」

 派手さはない。

 どこまでも静かで、柔らかで、無駄がない。

 故にまとめるのであれば美しい。

 ステータスや装備を頼みにしていては決して辿り着けない動きをロラ助は見せている。


「こ、こんなに強かったのじゃな……見た目は冴えない感じじゃのに……」

「ほんまやね……攻撃そのものは受けているけど、回復が間に合っているから碌にダメージになっていないし、それどころか反撃の起点にもしとる……」

 そんな少なくとも俺には絶対に出来ないような動きを見せつつ、ロラ助は確実に相手のHPを削っていく。


「コ、コボー!」

「コボルッ!」

「……」

「おっと」

 だが、ロラ助自身がタンク寄りで、二体のホムンクルスも支援が専門の為だろう。

 後衛のコボルトの残りHPが僅かになったところで、全身鎧が盾になるようにロラ助の前に立ち塞がり、トドメを刺せないように動いてくる。

 さて、普段ならばここで後衛が少しだけ動いて射角を取り、遠距離攻撃でコボルトにトドメを刺すところだが……どうする?


「では、『ブート』『ブート』」

「ゴボッ!?」

「コボッ!?」

「!?」

「杖なんて持っていたのか」

 全身鎧の横手に回り込んだロラ助の左手に、一瞬だけ手よりも少し長い程度の小さな杖が現れる。

 そして、その一瞬の間に二発の魔法球が放たれ、二体の『?コボルト』の胴を正確に撃ち抜き、残りわずかだったHPバーを削り取る。

 どうやら、ロラ助はトドメを刺す用にインベントリに杖を仕込んでいたらしい。

 実に用意周到な事である。


「ーーーーー!」

「受けませんよ」

 巨大鎧が剣を振り下ろす。

 だが、その頃には既にロラ助は両手で刀を握っており、ほんの少しの動きで巨大鎧の攻撃を受け流す。

 『ブート』を放つ事で生じた隙など無かったと言わんばかりの流れるような動作だった。

 そして、ロラ助の攻撃は巨大鎧の攻撃を受け流す事で生じた隙を起点に改めて始まる。


「では、少しばかり楽をさせてもらいましょうか」

「ーーー!?」

「「ーーーーー!」」

 巨大鎧の身体に札が貼られ、稲妻のようなエフェクト共に巨大鎧に状態異常:パライズが生じる。

 そこから攻撃の合間にヴィエントとブリサの支援を挟みつつ、最高効率であろうペースで攻撃。

 それまでの削り合いが嘘であるかのようなペースで巨大鎧のHPバーを削っていく。


「これでお終いです」

「ーーー……」

 そうして状態異常:パライズが治るのとほぼ同時に巨大鎧のHPバーは底を突き、中身が空である事をさらけ出しつつその場に倒れた。

 なるほど、名前が出なかったのは、ナイト種ではなくリビングメイル種だったからか。


「ふぅ、自分でも何とかなりましたよ。皆さん」

「「……」」

「いいものを見させてもらったわ。ロラ助」

「うーん、やっぱり僕もまだまだ修練が必要だね」

「凄かったです。本当に」

 剥ぎ取りを終えたロラ助が俺たちの元に戻ってくる。

 なお、今回の縛りプレイでは、狩ったモンスターは狩った当人だけが剥ぎ取るように予め取り決めてある。

 何となくだが、その方が先々良い方に繋がる感じがしたからだ。


「何と言うか、動画にして残しておきたいぐらいの戦いだったな」

「あのGMの事ですから、たぶん上げていると思いますわ。師父」

「いやー、自分の動画なんて上げてもしょうがないと思うんですけど……」

 それにしても本当に良い戦いだった。

 それこそ、ソロプレイで進めているプレイヤーの教本に載せるべきじゃないかと思える程度には。

 と言うかソロプレイ関係なしに多くのプレイヤーに見てもらいたい姿だった。


「「はっ!?」」

「じゃ、二人も帰って来たことだし、先に進みましょうか」

「だな」

 なお、リュドミラとボンピュクスさんの二人については、途中からロラ助の動きに魅入られていたようで、今になってようやく帰ってきたようだった。

 まあ、見惚れるのも当然の動きだったので、納得以外の何ものでもないか。

 そして俺たちは探索を再開した。

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