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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編

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514/621

514:99-3

本日は二話更新です。

こちらは二話目になります。

【AIOライト 99日目 12:45 (4/6・晴れ) 同盟街・ウハイ-ヘスペリデス】


 昼食後も勿論ヘスペリデス内の探索を続ける。

 が、その前に一つ。

 ラードーンの言っていたヘスペリデスの白果の蜜漬けだが、確かに厨房に置いてあり、何度か使われた形跡もあった。

 まあ、シアが使う分には問題ないだろう。

 純粋に美味しい料理を作ろうと思っているシアの魔力の影響をヘスペリデスの白果が受けた所で、料理が美味しくなる以外の効果など生じないのだから。


「さて、畑だが……」

 さて、探索に戻ろう。

 まずはヘスペリデスの入り口でもある東屋と本館の間にある畑である。


「改めて見てみると随分と種類が増えているな」

「豊かな食生活の為ならなんとやらーです」

「まあ、それはそうだろうな」

 当初、この畑には小麦以外の植物は植えられていなかったはずである。

 だがラードーンの言う豊かな食生活と言うのを実現する為だろう。

 今の畑には実に様々な植物が植えられており、その何れもが収穫期を迎えていて、俺たちが見ている間にもミニラドンたちが忙しなく植物の間を走り回っている。


「……」

 さて、畑の割合だが、一応、主食に用いている小麦が一番多く植えられているようだ。

 おおよそ、全体の3割から4割ほどがそうだろう。

 で、残りは……本当に多くの種類がある。

 見た限りでも、トマト、ナス、南瓜、大豆、ジャガイモ、レタスにキャベツ、ニンジン、白菜、大根、イチゴ等々、おおよそ現実世界の一般的なスーパーに売られているであろう野菜は一通り育てられている感じがあった。

 だが、この畑で最もおかしいのは……うん、 ビニールハウスのような特別な施設は何も無いのに、先に言った通り、どの野菜も今正に収穫期を迎えていると言う点だろう。

 俺の知識が間違っていなければ、トマトと大豆の収穫時期は重ならないはずである。


「ちなみにー、ご主人様が使い切れなかった分はー、だいたいは腐らせずに私たちで食べるかー、GMが何処かに持って行ってますよー」

「肥料とかにはしていないのか?」

「しちゃうとー……無限ループ?状況悪化?とにかくそんな感じです?」

「ああなるほど……」

 食べきれなかったのを肥料にしていないと聞いて俺は一瞬訝しむ。

 が、ラードーンの言葉にどうして収穫時期の異なる植物までもが同時に採れるのかと言う点も含めて、納得がいく。

 どうやらこの畑の植物は『AIOライト』の仕様によって生育が早まった上に、ヘスペリデスの生成したエネルギーの一部が流れ込んでいるらしい。

 だからこそ少しでもエネルギーを浪費させるためにGMが持って行って、何処かで処分しているのだろう。

 こんな状況で余った食べ物を肥料にして撒いたりしたら……最悪、ヘスペリデスの中が植物で溢れかえりかねない。

 そんな光景は想像するのも嫌である。


「そう言えば植える植物の種類って誰が決めているんだ?」

「アンブロシア様とGMが基本でー、グランギニョルさんやーシュヴァリエさんがー居た時はーお二人の望む物もちょっと作ってましたー」

「ふうん……」

 なお、畑で育てる植物の種類の選定については、一応俺に最上位の権限が与えられているようだった。

 尤も、シアが求める植物が育てられている時点で俺がとやかく言うことなどないのだが。


「てか、甜菜(てんさい)まであるのか……」

「えへへー、最近育てはじめましたー」

 ちなみに甜菜とは砂糖の原料になる植物である。

 これはラードーンの奴、自分のおやつ用に菓子を作るつもりだな。

 まあ、仕事をしているなら咎めはしないが。


「こっちは……ラードーン、これを植えるように言ったのは?」

「GMだったかとー」

 で、そうして畑の中を見て回っていると、俺は東屋よりさらに南側、ヘスペリデスの外れにこっそりと水田が作られているのを見つける。

 その水田の稲穂はまだ青々としていて、水も張られているが、ラードーン曰く夕方になれば水が抜け、稲も収穫できるようになるとの事だった。

 まあ、水田があること自体は別に構わない。

 お米だって時には食べたくなるし、用途も色々とあるからだ。

 問題は……


「ふうん……」

 その稲を見ても、俺は一切の繋がりを感じ取る事が出来なかったと言う点だろう。


「ご主人様ー?どうかしましたかー?」

「いや、ちょっとな」

 何故繋がりが見えないのか。

 恐らくはGMが何かしらのプロテクトをこの米に掛けているからだろう。

 ではなぜそんなプロテクトを掛けるのか。

 恐らくだが、単純な食用作物として育てるだけではなく、別の何かしらの用途があるからなのだろう。

 その用途が知れないと言うのは少々恐ろしいが……


「ま、このまま育てておいてくれ」

「分かりましたー」

 こればかりはGMがこちらの事を監視はしても害することはないと言うのを信じるしかない。

 まあ、単純に今までの食事に出てきた米に特に異常が見当たらなかったと言うのもあるが。


「さて残るは森の中の方にもう一度行くだけだが……そう言えば木材とかはどうしているんだ?」

「一部は私たちの道具にー、後は使いやすくしてから倉庫ですねー」

「なるほど」

 その後、木材の伐採を行っている場所にも行ったが、そこは特に何も見る事は無かった。

 強いて言うのであれば錬金術もシステムも使わずに休憩場所と木材加工場所を兼ねた一軒のログハウスがミニラドンたちによって建てられていた事が驚きではあるが……まあ、見なかったことにしよう。

 俺の目が届かないと思える休息場所の一つくらいはあった方がミニラドンたちの為でもあるしな。

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