507:98-2-D1
本日は二話更新です。
こちらは二話目です。
「スコッ!」
「ふんっ!」
「『癒しをもたらせ』」
ナイトビュスコーピオンの右の鋏の一撃と俺の短剣による防御がぶつかり合う。
その衝撃は重く、防御したにも関わらず俺のHPは5%削られている。
だが、この一撃はただの牽制でしかなかった。
「ピオッ!」
「っつ!?」
「『大地の恩寵をその身に』」
ナイトビュスコーピオンの口から紫色の液体に包まれた針のような物体が射出され、俺の身体に突き刺さると同時に僅かなダメージと共に橙色の障壁が現れて割れる。
「ピイィィオン!」
「くっ!?」
「『力を和らげよ』」
続けてナイトビュスコーピオンの尾が振り下ろされ、俺は咄嗟に身を捩る事でこれを回避。
しかし、僅かに掠っていたようで、俺のHPが減ると同時に状態異常:ポイズンと状態異常:パライズが表示される。
「スウゥゥコオオォォ……」
こちらが状態異常:パライズにかかったことを確認したのか、ナイトビュスコーピオンが左手の鋏を大きく振り上げる。
間違いなく本命の一撃である。
「ぬおらぁ!」
「『アブソーブ』!」
「ーーーーー!」
「ビゴッ!?」
が、こちらは回復力特化。
状態異常:パライズは即座に解除され、ナイトビュスコーピオンの顔面に俺の斧とネクタールの槍が、尾の中間辺りにはシアの『アブソーブ』が命中。
状態異常:ルストを与えつつ、ナイトビュスコーピオンにたたらを踏ませ、追撃を防ぐと同時に後退させる。
「スコピオオオォ……」
「やれやれ、想像以上に危ないな……」
「全くですね……」
「ーーーーー……」
幾らかの距離が出来た所で、ナイトビュスコーピオンの様子を見つつ、俺たちは態勢を整える。
幸いにして状態異常:ポイズンも俺のHPを5%ほど削ったところで治っているし、補助魔法もかかっているから、こちらの状態は悪くない。
が、相手のHPはまだ90%以上ある上に、状態異常:ルストしか入っていない。
次はこっちに状態異常:パライズが入っても隙など見せてくれないだろうし……ああうん、総合的に見たら案外ヤバいかもしれないな。
流石はレア度:4だ。
一気に難易度が高くなった。
「他の敵が来ても面倒だ。なるべく早めに片付けるぞ」
「はい、マスター」
俺はシアと一度頷き合うと、ナイトビュスコーピオンに向かって駆け出し始める。
「スコピオオォォ……」
対するナイトビュスコーピオンは尾と鋏を軽く上げて、迎撃の体勢を見せている。
そして俺がナイトビュスコーピオンの間合いに入った瞬間。
「スコ……」
「むんっ!」
「『カース』!」
ナイトビュスコーピオンは鋏を振り下ろそうとし、俺は『ドーステの魔眼』を撃ちこみ、シアは『カース』をかけてナイトビュスコーピオンを状態異常:カースにする。
「ッピオッ!」
「ぐっ!?」
だが流石は格上と言うべきか、ナイトビュスコーピオンは俺の『ドーステの魔眼』を受けてもコンマ1秒と止まらずに攻撃を仕掛けてくる。
そして、俺にダメージを与え、状態異常:カースの効果によって反射ダメージを受けるが、そうして受けたダメージは極々僅かな物だった。
「だが、この距離ならば!『ティラノス』!」
「ズゴッ!?」
しかし、コンマ一秒の影響で俺はナイトビュスコーピオンの予想よりも少しだけ内側に居た。
だから俺は一瞬だけトリゴニキ・ピラミーダの『ティラノス』を発動させつつ、魔力を注ぎ込んだ斧をナイトビュスコーピオンの顔面に叩きつける。
「ズゴ……ピギョッ!?」
「ーーーーー!」
更に口から毒針を放とうとしたナイトビュスコーピオンの口内に向けてネクタールが槍を突き出して追撃。
ダメージと共に状態異常:イルネスを与える。
「スコピ……ッツ!?」
「『アルケミッククリエイト』、草木よ!蔓となりて彼の者を束縛せよ!アイビーバインド!」
続けてシアの『アルケミッククリエイト』が発動。
反撃を行おうとしたナイトビュスコーピオンの鋏と尾に蔓を絡み付かせ、ほんの僅かな間ではあるが、その動きを停止させる。
「すぅ……ふんっ!」
「ピギョウッ!?」
そして、その僅かな時間を使って俺とネクタールは全力の一撃を再びナイトビュスコーピオンの顔面に向かって叩き込み、たたらを踏ませ、後退させる。
「ス……スコピオ……」
「なんつー堅さだ……」
だが、ここまでやってもなおナイトビュスコーピオンのHPは最大値の60%程残っていた。
正直に言って呆れたくなるような堅さである。
状態異常の方はポイズンも入り、状態異常:ルスト、状態異常:イルネスとの相乗効果も発揮していると思うのだが……それでもナイトビュスコーピオンのHPバーの減りは遅い。
状態異常:ペインが入る気配もない。
ああうん、本当に強いな。
そして厄介な事にだ。
「マスター、援軍が来てしまったようです」
「みたいだな。しかも未知のが来てる」
「「……」」
生垣の向こう、ナイトビュスコーピオンの背後から二体の人影が現れている。
彼らは麦藁帽子を被っていて、衣装は全体的に質素だ。
名称はナイトビュファーマー、レベルは35と37。
そして武器は……
「「ーーーーー」」
「まあ、庭園と言う環境に合わせてなんだろうな……」
「いずれにしてもこれは拙いですね」
ナイトビュスコーピオンの両手に付いているものよりもさらに一回り大きい、人の上半身ほどの大きさがある巨大な金属製のハサミ。
「「ーーーーー!」」
「スコピオオォォ!!」
「来るぞっ!」
「はい、マスター!」
「ーーーーー!」
そしてナイトビュスコーピオンとナイトビュファーマーたちは同時に俺たちに向かって駆け出してきた。
09/03誤字訂正




