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本日は二話更新です。
こちらは一話目になります。
【AIOライト 98日目 08:15 (5/6・雨) 同盟街・ウハイ】
「今日はどうしましょうか」
「そうだなぁ……」
翌日。
一昨日と同じように『同盟の彩砂』に挑むプレイヤーたちを見送った俺たちは、今日はどうするかを考える。
なお、テキオン関係については、昨日の内に掲示板に上げてあるので、特に何かを考える必要はない。
「可能ならボックスの強化をしたい所ではあるな」
俺はインベントリの中のリジェネウッドボックスを見る。
作ったのはもうだいぶ前で、レア度も3だ。
だが今の俺たちならばレア度:4の容器を扱える上に、4個まで持てるようになっている。
今後の戦闘や探索を考えるならば、いい加減に強化はするべきだろう。
「んー、木材以外でも箱って作れるんですよね?」
「作れるな。ただ、強度と保存性、取り回しなどの諸々を合わせて考えると、汎用で使う容器は木材で作るのが一番いいらしい」
なお、今更な話ではあるが、固体のアイテムを入れる種別:容器のアイテムを作るにあたっては汎用性を重視するならば木材、気密性を重視するなら金属、その他特殊な用途で用いるならばそれに見合った素材で作るのが良いとされている。
ただ、今俺たちが居る場所でレア度:4の木材を入手しようと思うのであれば……
「木材……マスター、ヘスペリデスの中で採れる木材くらいしかこの辺りには無い気がするんですけど。しかもヘスペリデスのだと、レア度:3止まりですよね」
「だな。ダンジョンの外で回収しようと思ったらそうなる」
「つまり、自動生成ダンジョンに潜ると?」
「ま、そう言う事だな」
自動生成ダンジョンで入手する以外の方法は無かった。
「ま、出口が無ければ最悪死に戻りで脱出する事も考えて挑めばいいさ」
「それもちょっとどうかと思いますけどねー……」
そう言うわけで、俺たちは準備を整えると、ウハイ内部に発生している自動生成ダンジョンを調べ始めるのだった。
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【AIOライト 98日目 10:32 (5/6・雨) 同盟街・ウハイ】
「さて、此処が良いか」
同盟街・ウハイは岩のドームの中に作られた街であり、雨の影響が生じるのは日光を取り入れるための穴がある一部に限られている。
なので、一応天気は雨であるが、俺たちはウハイの中を雨に濡れることなく探索し続けた。
で、そうして探索している内に一つの自動生成ダンジョンを発見した。
【ゾッタは『暗闇見る森の庭園』を発見した】
「このインフォも随分と久しぶりですね」
「まあな」
暗闇見る……特性:ナイトビュ、つまりは暗視能力を得られる特性である。
森は木材目当てなので当然。
庭園は……今回のメンテナンスで追加されたマップだな。
掲示板情報によれば、普通のマップよりは広いが、農場程広くはない、墓場マップと同じ程度の広さを持つマップであり、その名前の通り何処かの屋敷の庭のような雰囲気を持つマップ、だったか。
まあ、この辺については特に問題はない。
【『暗闇見る森の庭園』 レア度:4 階層:7 残り時間119:59:59】
「それでマスター。分かっているとは思いますが」
「分かってる。一度入ったら脱出口が見つかるまでは脱出できない、だろ」
問題はドウの地の自動生成ダンジョンは西の荒野とケイカに発生する物を除き、侵入した場所に脱出するための階段が存在しない事。
第一階層の何処かに必ず登り階段はあるので、それさえ見つければ脱出できるが、逆に言えばそれを見つけなければ脱出は出来ない。
ドウの地での自動生成ダンジョン攻略が割と倦厭されがちな理由の一つだな。
「後の問題は……最初から罠が存在するのも問題と言えば問題か」
「ああ、そう言えばそうでしたね」
今回挑む『暗闇見る森の庭園』はレア度:4、検証班の調査によって、レア度と階層の合計が5になると罠が出現するから、『暗闇見る森の庭園』では最初から罠が発生している事になる。
それなりに気を付けておく必要はあるだろう。
「ま、駄目だったらその時はその時だ」
「そうですね。やれる限りのことをやりましょう」
挑む以上はきちんと脱出して手に入れたアイテムを全て持ち帰るつもりで挑む。
だが今回はグランギニョルたちが来るまでの時間つぶしも兼ねているのだ。
時間通りに戻る事の方が重要度は高いだろう。
俺はそんな事を考えつつ、自分たちの状態を確かめると、『暗闇見る森の庭園』に突入した。
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【AIOライト 98日目 10:35 (5/6・雨) 『暗闇見る森の庭園』】
「さて……」
『暗闇見る森の庭園』第一階層。
そこは概ねダンジョンの名称から想像出来る通りの空間だった。
雨こそ降っているが、剪定された木々と生垣が規則正しく配置され、噴水からは勢いよく水が噴き出し、レンガを敷いて造られた通路の両脇には様々な色の花が咲き乱れている。
ここが自動生成ダンジョンの中でなければ、休憩用であろう東屋も用意されているし、ゆっくりと散歩でも楽しみたい雰囲気の空間だった。
そう、自動生成ダンジョンでなければ。
「スコピオオォォ……」
「開幕からか」
「まあ、最初の場所と脱出口が一致しないならこういう事もありますよね」
突入した俺たちの前には振り上げた尾を含めれば体高が2メートルを超え、尾の部分を含めなくてもこちらの膝上程度の高さがある巨大なサソリが居た。
名称はナイトビュスコーピオンLv.38。
暗視能力を得たスコーピオン種であり、昼間である今は実質的に特性:プレンと化しているモンスターである。
だが、その身に漲る気迫は……
「スコピオオォォ!」
「来るぞっ!」
「はいっ!」
「ーーーーー!」
囲いの山脈で出会ったプレンスコーピオンなどとは比較にならないものだった。
09/03誤字訂正




