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本日は二話更新になります。
こちらは二話目です。
【AIOライト 94日目 07:56 (半月・晴れ) 同盟街・ウハイ】
「さて、着いたな」
「やっぱり人は少ないですし……もう行っちゃいましたね」
「ま、予想通りだな」
やはりと言うべきか錬金術師ギルド・ウハイ支部には殆どプレイヤーが居なかった。
そして数少ないプレイヤーについても、予め組む相手や目的が決まっていたのだろう。
直ぐにウハイ支部の外に出ていく。
まあ、今日この時点でウハイ支部に居るという事は、『菫青石の踏破者』に元々所属しているか、所属する気がないプレイヤーであり、彼らの目的は『同盟の彩砂』のダンジョンへと挑むか、同盟の彩砂そのものの入手が目的。
ソロで来た俺のようなプレイヤーを入れる隙間などあるはずがない。
「それでマスター。私たちはどうしましょうか?」
「とりあえず今日の所はウハイ内部の探索だな。どういうアイテムが手に入るかの確認をしたい」
「分かりました」
そんなわけで、俺たちも当初の予定通りウハイの探索を始めることにした。
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【AIOライト 94日目 09:12 (半月・晴れ) 同盟街・ウハイ】
「ふんっ!」
「アリィ……」
ウハイ探索開始から一時間。
探索は概ね順調に進んでいた。
「周囲に敵影なし。お疲れ様です、マスター」
「おうっ」
まあ、当然と言えば当然の流れだろう。
こちらはプレイヤー一人にホムンクルス二人だけではあるが、全員がレア度:4かレア度:PMの装備を身に付けている最前線組。
対するはLv.30前後の特性:プレンのモンスター。
相手の性質や数にさえ注意すれば、負ける要素など何処にもないのだから。
「装備の方は大丈夫ですか?」
「今回は吐かせなかったから大丈夫だ」
そう、相手の性質に注意すれば、だ。
今戦ったプレンアントだが、Lv.29まではただ群れで行動し、連携行動をとり、時折別の群れを呼び寄せる他は少々防御力が高いだけのモンスターだった。
だが、どうやらLv.30からは酸のようなものを使うようで、口から吐かれたそれがかかると状態異常:ルストの発症あるいは装備品の耐久度への直接的なダメージがある。
そのため、一戦目の時には戦闘終了後直ぐにヘスペリデスに移動して、装備の耐久度回復をする事になった。
「それにしてもプレンアントって意外と強いんですね」
「そうだな。案外油断は出来ない。この分だと……プレンゴーレムはともかく、プレングローバグにも妙な能力が生えているかもな」
「油断は全くできない、と言う事ですね」
「そうなるな」
ウハイにて基本的に遭遇するモンスターは後二種類、プレンゴーレムとプレングローバグだ。
後者については基本的にはノンアクティブなので、近くで戦闘をしなければ無害だが、プレンゴーレムの攻撃力と防御力には注意するべきかもしれない。
「と、採取ポイントが有るな」
さて、今日の探索でやるべき事は戦闘だけではない。
と言うわけで、俺は手近な採取ポイントで採取を行う。
すると、普通の水晶が手に入ったので、詳細を開いてみる。
△△△△△
普通の水晶
レア度:3
種別:素材
耐久度:100/100
特性:プレン(特別な効果を持たない)
無色透明な石英、クオーツと呼ばれる事もある。
その色合いによって名前が変化する鉱物であり、魔力に対して高い感応性と受容性を有するとされる。
宝石として用いるのが一般的であるが、それ以外の用途も存在する。
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「水晶……そう言えば、ギニョールが言ってました。水晶に魔力を流し込むと、魔力を蓄えておけるそうです」
「へー」
手のひら大の大きさの水晶は、持っている俺の掌が見える程度には透明度が高いものだった。
で、シア……と言うかギニョールによれば水晶には魔力を蓄える性質があるらしい。
「じゃ、ちょっと試してみるか」
「あ、マスター……」
と言うわけで俺はほんの僅かに……そう、本当に僅かな量、俺の魔力を最大限に分割した量を試しに流し込んでみた。
そう、本当に僅かな量の筈だった。
「ぶわっ!?」
「きゃあっ!?」
「ーーーーー!?」
それなのに次の瞬間には俺の手の中で水晶は弾け飛び、赤黒く染まった欠片をバラ撒き、最後には粉になってそのまま消え去ってしまった。
「えーと?」
俺は思わずシアの方を向く。
「その、これもギニョールが言っていました。水晶に魔力を込め過ぎると爆発するから注意が必要だと」
「……。俺、ほんの僅かにしか流していないつもりだったんだけど」
「……。とりあえずマスターが今後水晶に魔力を込めるのは禁止、という事でいいんじゃないですか?」
「そうだな」
「そうしましょう」
非常に気まずい空気が流れる。
だがまさかとしか言いようが無かった。
俺は俺が扱える最小の量の魔力しか流していない。
それなのに弾け飛ぶというのは……流石に予想外だった。
「はぁ。ま、俺の魔力を込めた何かが欲しいなら、自家製ミスリルでいいか」
「そうですね。マスターならその方が都合がいいと思います」
手に入らない物は仕方がない。
そう判断すると、俺たちはウハイの探索を再開した。




