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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編

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487/621

487:91-6

本日は二話更新になります。

こちらは二話目です。

【AIOライト 91日目 14:47 (新月・雨) 始まりの街・ヒタイ】


「はぁ、また見事に死に戻りになったな」

 気が付けばそこは毎度おなじみ錬金術師(アルケミスト)ギルド『巌の開拓者(ノーム)』ヒタイ本部の死に戻りスペースだった。

 まあ、所謂ドラゴンブレス……それもボス個体の物を受けて、本来ならばアライアンスが壊滅していたのを俺一人の犠牲で済ませることが出来たのだから、仕事はしたと言っていいだろう。

 今回のダンジョン探索に失敗したら二度と『同盟の彩砂』が手に入らないというわけでもないしな。


「とりあえずは……っと」

 俺は死に戻りスペースの脇に移動すると、シアとネクタールを召喚する。


「マスター、死に戻りしちゃいましたね……」

「ーーーーー……」

「まあ、今回は相手が相手だったからな。仕方がないさ」

 現れたシアは悔しそうな様子を見せている。

 ネクタールはドラゴンブレスを直接受けた影響なのか、とてもダルそうだ。


「あー、ネクタールは暫く休んでいた方が良さそうだな」

「ーーー……」

 うん、ネクタールについてはこのまま出し続けているよりも一度ゆっくりと休ませた方が良いだろう。

 と言うわけで、俺はネクタールの召喚を解いて、休ませることにする。


「それでマスター。これからどうしましょうか?」

「そうだなぁ……休憩も兼ねてとりあえず一時間くらいは待ってみよう。誰も来ないのが理想ではあるが、もしかしたらあのメンバーの内の誰かが死に戻りしてきて、向こうの戦闘結果がどうなったかぐらいは聞けるかもしれない」

 この後については、死に戻りの影響も確認しないといけないので、とりあえずはこの場で待ちである。


「分かりました。それじゃあ適当にお茶でも……」

「あー、その辺の道具はまとめてヘスペリデスか。ネクタールが居ないと無理だな」

「久しぶりに無料の飲み物ですかね」

「そうなるな」

 なお、ヘスペリデスの入り口はネクタールと同化しているため、ネクタールを休ませている今はヘスペリデスに移動することも出来ないようになっている。

 ま、こればかりは仕方がないな。



----------



【AIOライト 91日目 15:57 (新月・雨) 始まりの街・ヒタイ】


「むぎいいいぃぃぃ!」

 そうして待つ事一時間と少し。

 誰も死に戻りせずに済んだかと俺たちが思い始めた頃。

 聞き覚えのある声の持ち主が死に戻りスペースに現れる。


「あ、ソフィアさんですね」

「みたいだな」

 死に戻りしてきたのはソフィアだった。

 で、帰って来るなり、非常に悔しそうにすると共に、地団駄を踏んでいる。


「おーい、ソフィア。大丈夫か?」

「はっ!?師父!?す、すみません、お見苦しいところを……」

「あーうん、精神的には問題なさそうだが、何があったんだ?」

 とりあえずあのままにしておくのはどうかと思うので、俺はソフィアに声をかけると、シアが居る喫茶スペースの方へと誘導する。


「何があったか、ですか。そうですね。師父が死に戻りした直後から色々とありました」

 喫茶スペースに着いたソフィアはネリーを召喚して抱きしめると、その状態のまま俺が死に戻りした後の状況について語ってくれる。

 なお、ソフィアの体勢についてはネリーの表情が微妙に虚ろな物であり、抵抗の様子が見られない事からしてだいたいいつもの事であるようだし、ネリーには悪いが気にしないでおく。


「まず師父が死に戻りした直後。ローエンさんの指揮の下、『秘匿する竜の王』との戦闘が始まりました」

「戦列が乱れたりはしなかったのか?」

「師父とシア様が命がけで助けてくれたという事は分かっていましたし、乱れ始めるよりも早くローエンさんの指揮が飛びましたから。あそこまで的確に出せるとなると、特殊知覚が何かしらの形で関わっているかもしれませんね」

「ふうん……まあ、その可能性はあるか」

 ローエンが特殊知覚ねぇ……可能性はゼロではないな。

 どういう物なのか見当もつかないし、逆に何も持っていない可能性もありそうだが。


「その後の戦闘については……そうですね。やはり厳しいものでした。師父が欠けた時点でプレイヤー19名、ホムンクルス38体があのアライアンスに居たわけですが、戦線が安定したと言えるレベルになるまでにプレイヤーが2人、ホムンクルスが6体落ちましたから」

「激戦だな」

「特性:ハイドの影響で若干ステータスが落ちていると言っても、ドラゴンはドラゴン、しかもボス個体ですもの。爪も牙もブレスも、ただの身じろぎですら脅威でしたわ」

「なるほどな」

「おまけにあの図体を持った蜥蜴の分際で時々姿を隠して、奇襲を仕掛けてきますの。目の前で『秘匿する竜の王』の姿が風景に溶け込んでいく姿を見たときは、はっきりふざけるなと思いましたわ」

 『秘匿する竜の王』との戦闘はどうやら相当厳しいものであったようだ。

 ネリーの身体の陰に隠れているが、ソフィアの表情は凄い事になっているし、ネリーを抱きしめる力も心なしか強くなっている気がする。

 まあ、ネリーは純前衛なだけあって、今のソフィアの抱きしめにも問題なく対応できるようだが。


「それでもまあ、面子が面子ですので、犠牲を出しつつも、少しずつ削る事は出来ていましたの」

「ふむ、それで最後は?」

「最後は分かりません。と言うより今もまだ戦闘中だと思いますわ。私が死に戻りした時点で『秘匿する竜の王』の残りHPが5%を切ったところで、残りのメンバーは私を除くとプレイヤーが11名、ホムンクルスが15体と言う所だったと思いますから」

「そうか、となれば後は番茶さんの報告待ち。と言う事になりそうだな」

 『秘匿する竜の王』の残りHPはソフィアが死に戻りした時点で5%……か。

 普通のボスやモンスターなら押し切れると断言できる量だが、ドラゴン種のボス個体となるとそう容易くは無いかもしれないな……。


「そうなりますわ。仇を取り切れず申し訳ありません。師父」

「いや、別に頭を下げたりは……」

「しますわ。他でもない私が納得できませんから」

「そ、そうか……」

 ソフィアがこちらに対して深々と頭を下げているのは……受け入れるしかなさそうだな、うん。


「え、えーと、それじゃあこの件についてはこれぐらいにしておくとしよう。シア」

「あ、はい」

「折角こっちに帰って来たんだ。オークション会場に行って、お金を受け取って来よう」

「分かりました」

「私はもうしばらくここで待っていますわ」

「そうか、それじゃあまたな」

「はい、今度は最後まで一緒に戦いましょう。師父」

 そうして俺は半分逃げ出すような感じで『巌の開拓者』ヒタイ本部を後にすると、オークション会場に向かうのだった。

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