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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編

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483:91-2-S1

【AIOライト 91日目 09:00 (新月・雨) RS1・???】


「さて、全員突入したな」

 扉を抜けた先に待っていたのは?

 岩で出来た壁に、岩で出来た本棚、それに岩で出来た机が置かれている大部屋である。

 こちらの数が数なので、だいぶ手狭だが。


「ふむ、岩の図書館か。割合当たりではあるな」

「コンソールはあるか?」

「あるぞ。特性は……特性:ハードだ」

「つまり、『硬質な岩の図書館』って事か。転倒したりしないように注意だな」

 事前に掲示板で得ていた情報通り、『還元の白枝』と同じく最初の部屋は安全圏。

 そしてコンソールの操作によって幾らかの情報が得られる、か。

 ただ、『同盟の彩砂』では戦闘も探索も無しに次の階層に進む事は出来ない。

 と言うのもだ。


「討伐モンスター数は……40。いつも通りだ」

「じゃ、この部屋を出た先次第だな。そこが広いならそこを狩場に、そうでないならPT単位で行動だな」

「種類はどうなっている?」

「ハードオーク、ハードコクーン、ハードシープ、ハードホムンクルス、特に注意するべきモンスターは居ないな」

 『同盟の彩砂』で次の階層に移動するためには、モンスターの討伐が必須だからである。


「討伐の目標数は次階層で特性とモンスターの種類を完全開示する事を考えれば50と少し。なに、アライアンスで狩るならそこまで時間がかかるものじゃない」

 なお、階層移動の為にはモンスター40体の討伐が必要だが、それだけだと次の階層に移動できるだけで、次の階層の特性やモンスターの種類は不明となる。

 なので『同盟の彩砂』を攻略する際の基本はその階層に存在するモンスターを片っ端から討伐して、押し進む事になる。

 うん、ローエンたちが非常に手馴れているおかげで、俺はゆっくりと情報の整理と確認が出来るな。


「よし、それでは移動を開始するぞ」

 そうして俺たちは最初の部屋を後にした。



----------



【AIOライト 91日目 09:22 (新月・雨) RS1・『硬質な岩の図書館』】


「ハードオークの追加が2だ!」

「ハードコクーンは無視していい!近づかなければ羽化の態勢には入らない!」

 最近になって気付いた事だが、図書館マップは草原のがくっついたりしない限りは中央に多数の本棚が置かれた大きな部屋があって、その周囲に小さい部屋が幾つもあるパターンが基本形になっているらしい。

 そして、そんな俺の認識通りに『硬質な岩の図書館』もなっていた。

 で、当たり前と言えば当たり前なのだが、部屋が広ければ広い程に多数のモンスターが生息しており、こちらの人数が多ければそれだけ隠れて進む事は難しくなる。

 と言うわけで、部屋に入った直後に戦端は開かれ、現在進行形でモンスターの集団と戦闘中である。


「シア、適当に支援魔法を前線に」

「分かってます。『癒しをもたらせ』」

 現在、メインで戦っているのはローエン率いる第1PTで、時折第2PTの面子も前に出てはモンスターと戦っている。

 第3PTは周囲を警戒して、本棚の向こう側から回り込み、こちらの側面に向かって飛びこもうとしたのを見つけては迎撃、何の問題も無く狩っている。

 で、俺とソフィアだが……ソフィアは一匹だけで突出したモンスターを見つけては自身のホムンクルスたちと一緒に手早く処理しているな。

 シアについても、各PTの中核を成しているプレイヤーとホムンクルスに『癒しをもたらせ』をかける事で回復力を上昇させ、全体の効率を上げると同時に消耗を抑えている。


「さて、こういう状況だと下手にヘイトを集めるわけにもいかないしな……」

「ーーーーー」

 そんな中で俺だが……地味に動く事が難しい立場になっている。

 まず、ネクタールの能力でヘイトを集めるのは絶対に無い。

 そんな事をすればローエンたちが作った戦線に大きな乱れを生むことになる。


「前に出るのも……無いな。乱すだけだ」

 同様の理由で前線に出るのもない。

 そもそも遊撃が周囲の警戒を忘れて最前線に出ると言う行為自体に問題があるだろう。


「投擲に『ドーステの魔眼』も……このままだと射線が通らないか」

 前線の戦闘はかなり密度が高いものになっている。

 味方同士の隙間は相応にあり、動きは比較的落ち着いている。

 だから遠距離攻撃を通そうと思えば通せるが……自分の後ろから何の合図も無く遠距離攻撃が飛んできて肝を冷やさないプレイヤーなどそうそう居ないだろう。


「ふうむ……」

 遊撃の役目はソフィアたちが十分程に果たしてくれている。

 ならばいっそのこと待機戦力としてこのまま傍観していても良い気はするが……流石に助けてもらっている身分でありながら何もしないというのはどうかと思う。


「こうするか。ネクタール」

「ー?---!」

 俺はネクタールを足の裏に巻き付かせると、自身の跳躍に合わせる形でネクタールに地面に向けて槍を突き出すように命じる。

 そうすることで普通のプレイヤーの身長以上の高さに俺の足が来るほどの跳躍を行う。


「さて……」

 そうして、戦場全体を俯瞰できるような高さから俺は状況を認識。

 ローエンたちとの戦闘によってHPが減るも上手く後方に下がる事でトドメを免れたモンスターを三体、氷の魔法を詠唱し今にも放とうとしているハードホムンクルスを一体確認。

 となればもうやる事は一つしかない。


「よっ」

 俺は弱っているモンスターにリジェネミスリルクリスを投擲。

 ハードホムンクルスに『ドーステの魔眼』を放つ。


「ブヒッ!?」

「「メギャ!?」」

「ーーー!?」

 効果は劇的と言っていいだろう。

 ダメージを受けていたモンスターたちは倒れ、ハードホムンクルスは魔法を暴発、自身と周囲に居た他のモンスターが弾け飛んだ氷の魔法にあたって少なくないダメージを負ったのだから。


「相変わらずだな……だがチャンスだ!このまま押し込め!」

「「「おうっ!」」」

 そうして生じた致命的な隙を逃すようなローエンたちではなく、その後の流れは一気にこちらへと傾き、積極的に襲ってくるモンスターは全て討伐された。

 で、放置されていたハードコクーンたちも羽化させる事なく討伐に成功。

 『同盟の彩砂』の第一階層はこうして呆気なく探索終了となったのだった。

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