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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編

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477/621

477:90-2

本日は二話更新になります。

こちらは一話目です。

【AIOライト 90日目 09:00 (1/6・晴れ) ドウの地・南西の草原】


「やれやれ、昨日の夜にメッセージが来た時にも驚いたが、まさか本当にこんな事になるとは思わなかったぞ。ゾッタ君」

「すみません、無理を言って」

 昨日の夜、俺は番茶さんにメッセージを送った。

 『ウハイの目前にまで来ているが、何か嫌な気配がしている。だから出来る限り多くのプレイヤーを連れて出迎えに来て欲しい』と言うメッセージをだ。

 そして、俺の判断は正しかった。

 こうして実際にPKプレイヤーの集団に襲われる事になったのだから。


「いやー、流石はゾッタだよな」

「そうだな、事前に気づいた事と言い、実際に襲われた事と言い、な」

「それ以上に襲われた後の対応が人間離れしているというか、嫌に様になっていたというか……はっきり言うが、俺たちが居なくても大丈夫だったんじゃないか?」

「いや、ローエンたちの助けは必要だったぞ。流石にあの数のPKを一人で捌くのは無理だ」

「あの数の攻撃を受けてなおHPを残しているくせに何を言っているんだか……」

 マンダリンとクリームブランはにやけ顔、ローエンは呆れた顔をしている。

 が、危なかったのはれっきとした事実である。

 なにせあの時の俺は特性:バーサークに特性:リジェネ付きのレイシュアリザードマンパウダーだけでなく、シアの『力を和らげよ』もトリゴニキ・ピラミーダの『ティラノス』も使っていた。

 おまけに遠距離攻撃が着弾する時にはネクタールを操作して可能な限りダメージを受ける間隔を引き延ばしたり、受けるダメージ自体を軽減したりもしていたのだ。

 それなのにあのダメージと状態異常。

 PKたちが冷静でいたかどうかなど関係なく、ローエンたちの助力が無ければ、あの後は単純な数の暴力によって俺は死に戻りしていたはずなのである。


「いずれにしても師父が無事でいて、私は嬉しいです」

「師父って……」

「シュヴァリエ以外の弟子なんていつの間に取ったんです?マスター」

「いやー、弟子を取った覚えはないんだがな……」

 で、今現在だが、何故か金髪にポニーテール、青い目の女性に腕を頬ずりをされている。

 俺の記憶が正しければ彼女は服飾向上委員会の人間だったはずなのだが……何故こんな最前線に居るのだろうか?

 それも見るからに業物の大斧……いや、ハルバードを背に付け、デザインにまで気を使って作られたスケイルメイルを身に付けて。


「あ、申し遅れました。私、ギルド『服飾向上委員会』のギルドマスター(仮)を務めさせてもらっています。ソフィアと言います。以前にも何度かお会いしたことがありますよね」

「あ、ああ、まあな。覚えている」

「うふふふふ、良かったですわー……」

 と、ここで女性……ソフィアは後ろに立っていた二人のホムンクルスの女性の片方に何度か頭を叩かれると、俺から距離を取り、綺麗なお辞儀をする。

 で……うん、まあ、どす黒い蛇の様な繋がりが見えた。

 ソフィアと彼女のホムンクルスであろう二人の女性の間に。

 PKたちに対する攻撃も彼女が口火を切っていたようだし……うん、敵対はしないでおこう。

 繋がりを見るまでも無くヤバい予感がする。


「オホン。さて、立ち話も何だ。此処だと何時モンスターに襲われるかも分からないし、まずはウハイにまで移動。ゾッタ君の転移ポータルの登録をしてしまおう」

「そうだな、それがいい。行くぞゾッタ」

 さて、こうやって、雑談をしている間に、俺のHPは無事に全回復する。

 なので、番茶さんたちは俺をウハイの中へと案内しようとしてくれる。

 それはとてもありがたい事だ。


「ああ、ちょっと待ってくれますか。二人とも」

 だが、まだこの場でやるべき事がある。


「どうしたのかね?ゾッタ君」

「どうした?ゾッタ」

「いや、本当にちょっとした事なんですけど……」

 俺は二人が足を止めた事を確認すると、右手にリジェネミスリルクリスを三本握った上で勢いよく振り返り始める。


「どうしてお前がここに居る?」

 そしてリジェネミスリルクリスを頭、心臓、腹に向けて魔力込みの全力で投擲。

 同時にそのプレイヤーの足元に密かに伸ばしておいたネクタールから三本の槍を突き出す。

 更に『ドーステの魔眼』を相手の深奥……生命活動には関わっていないが、普通の行動をする上で重要な部位に向けて放つ。


「MPK野郎」

 いずれの攻撃もただのプレイヤーでは避けられず、一つでも当たれば致命打となる一撃であり、そんなの攻撃が向かう先に居るのは極々普通といった評価しか出来ない見た目のプレイヤーだった。

 だがそのプレイヤーは……


「ま、気づくよな。そりゃあ」

 そう言いつつ笑みを浮かべると。


「マスター!?」

「師父!?」

「ゾッタ君!?」

「「「ゾッタ!?」」」

 周囲が騒然とする中で攻撃が届く前にその姿を眩ませる。


「まったく、本当にお前は化け物だよ。キチオノヘルム」

「何とでも言え。PKギルドのギルドマスター」

「「「!?」」」

 そしてプレイヤーは直ぐに姿を現す。

 手近な岩の頂上で傲慢な笑みを浮かべつつ、こちらの事を睥睨する形で。

 そう、今は極々普通の外見をしているが、気配を読めば嫌でも分かる。

 コイツはこれまでにも俺にモンスターをけしかけてきたMPKである、と。

08/12誤字訂正

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