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AIOライト  作者: 栗木下
9章:双肺都市-後編

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476:90-1

【AIOライト 90日目 08:42 (1/6・晴れ) ドウの地・南西の草原】


「そこまでするんですね」

「するさ。俺は俺の勘を信じるに値するものだと知っているからな」

 翌朝、準備を整えた俺たちはヘスペリデスの外に出ると、ウハイがある岩のドームに向けて移動を開始する。


「「「……」」」

 ウハイの周囲には、小さな……と言っても、人が数人隠れるのに十分な大きさを持つ岩の柱が乱立している。

 ゲーム的にはかつての街道の数少ない名残だとか、元々あった岩が残されているだけだとか、色々と存在する理由はあるのだろうが、今の俺にとってはただ死角を増やすだけの面倒極まりないオブジェクトである。


「あそこが入口みたいですね」

「そうだな」

 そうして岩山の麓に存在するウハイの入口となる洞窟が俺たちの視界に入ってきた時だった。


「それな……」

「「「ーーーーー!」」」

 何かしらの方法で俺の繋がりを見る目からも逃れていた何者かたちが、周囲の岩陰から一斉に飛び出してくる。


「『ティラノス』」

「伏せますっ!」

 飛び出してきた影たちの行動は大きく分けて二つ。

 剣や槍、爪などを振りかぶりながら俺たちに向かって飛びかかる動きと、杖や本、銃に弓といった遠距離攻撃が出来るものをこちらに向ける動き。

 そして、影たちの中にはモンスターは一体も居らず、その全てがプレイヤーとホムンクルスだった。


「「「殺せええええぇぇぇ!!」」」

「ぐっ!?」

 そこまで俺が理解し、地面にシアが伏せ、ネクタールを広げる事によってシアを保護した瞬間。

 殺意を表す言葉と同時に、俺に対する強い敵意の繋がりが生じる。

 そして、次の瞬間には俺に殺到する魔法と遠距離攻撃によってオレンジ色の障壁が二回生じて即座に砕け散り、更にもう一瞬後には俺の全身を刺し貫くように刃が突き出される。


「やっ……」

 表示された状態異常はポイズン、パライズ、ブライン、バーン、サイレン、チャーム、パニック、カース、ノイズ、ペイン、バインド……多種多様と言うレベルでは済まない数の状態異常だ。

 HPバーも最大値の30%ほどで、おまけに突き刺されているせいか現在進行形で減り続けている。

 だが、そこまでだ。


「ゆだ……」

「『癒しをもたらせ』『大地の恩寵をその身に』!」

「うおらあああぁぁぁ!!」

「「「!?」」」

 シアの魔法が俺にかかると同時に、全ての状態異常は回復し、俺は即座にその場で横に回転。

 俺に直接攻撃を仕掛けて来ていたプレイヤー二人とホムンクルス四体に対して斧と短剣、それにネクタールの槍を三本ずつ瞬時に叩き込む事でHPバーを削り切り、死に戻りさせる。


「まったく、特性:バーサークを事前に発動しておいた上に、レイシュアリザードマンパウダーのような補助アイテムを使っていてこれとはな。で、お前らは何者だ」

「「「!?」」」

 そして回転が終わると同時に左手の掌の上にヘスペリデスの黒葉を出現させつつ、回転中に確認したこの場に居る全てのPKタグが付いたプレイヤーとホムンクルスに向けて『ドーステの魔眼』を放つ。


「化け……物め……」

「あれだけ攻撃を叩き込んでも死なないとかどうなっていやがる……」

「くそっ……なんて奴だ……」

 PKプレイヤーの数は全部で10人、ホムンクルスについては形状は様々だが20体。

 どうやら近接担当組のプレイヤーが、近接担当のホムンクルスも使役していたらしい。


「PK行為がどういうことを意味するのか、お前たちは分かっているのか?」

「「「!?」」」

 俺は再度『ドーステの魔眼』を放つ。

 そうやって、『ドーステの魔眼』によってPKプレイヤーたちが怯んでいる間にも、俺のHPバーは急速に回復していく。

 で、可能ならばどうして今の時点でウハイまで来れるようなプレイヤーがこんな馬鹿な真似をしているのかを問い詰めたい所だったのだが……厳しそうだな。

 全員怯みはしていても、戦いの意思は折れていないし、口を割る気もなさそうだ。


「ひ、怯むな!ギルマスも言っていただろう!奴は難敵で勝てるかは分からない!だからこそ我らの訓練に最適であ……」

 と、ここで今居るプレイヤーの中では多少地位が高そうなプレイヤーが声を張り上げる。

 なので俺はそのプレイヤーに向けてネクタールが持った状態の槍を投げ……


「る?」

 一本目が突き刺さると同時に頭と心臓を貫くように残り二本の槍をネクタールに突き出させ、軽くかき混ぜながら引く事によってダメージを増大。

 死に戻りさせる。


「ギルマス、か。なるほど、少し読めた」

「「「!?」」」

 そして、素早くネクタールの身体も槍も縮めて、元通りの姿勢を取り、三度『ドーステの魔眼』を放つ。

 迂闊な言動を取れば殺すと言う意思を込めつつ、俺以外に目を向ける余裕など断じてないぞと教えつつ。


「選択肢をくれてやる。退くか、死ぬかだ」

「う……」

「あ……」

「こ……」

 俺はPKプレイヤーたちの目を出来る限り惹き付けるように仰々しく、ヘスペリデスの黒葉を見せびらかしつつ彼らに選択を迫る。


「「「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」」」

「「「あああああぁぁぁぁぁ!!」」」

「「「この野郎があああぁぁ!!」」」

 そしてPKプレイヤーが罵倒をホムンクルスたちが蛮声を上げつつ俺に対する攻撃行動を開始しようとした瞬間。


「残念だ。ヘスペリデス・ディモス」

「「「!?」」」

 俺は左手のヘスペリデスの黒葉を握り潰して、ヘスペリデス・ディモスを発動。

 全てのPKプレイヤーとホムンクルスに対して軽微なダメージを与えつつ、俺に対する集中の度合いをさらに高め、俺以外は視界に入らないようにする。


「死ねええ……え?」

「は?」

「んな?」

 そうして極度に視野が狭まったPKプレイヤーとホムンクルスたちが行動を開始した瞬間。


「あらあら、うふふふふ、師父に手を出そうだなんて愚かの極みね」

「無事かね。ゾッタ君」

「まったく、ここに来てこんなのが現れるとはな」

「あらよっと」

「PKKさせてもらったぞ」

 PKプレイヤーたちの背後に新たな影が一斉に現れ、PKプレイヤーたちを切り捨てた。


「助かりました!番茶さん、ローエン、マンダリン、クリームブラン!」

 その影の正体はメッセージで俺が呼んだ救援、番茶さんたちだった。

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